解説 : NZの小学校

Ok Kia ora

これからNZの小学校に通うお子さんを持つ親ごさんや親子留学をお考えの方に、この編ではニュージーランドの教育事情として小学校を解説しています。‌
内容は小学校の一般な概要と、donation ( 寄付金 )  、それから日本の小学校との違いについてです。

ニュージーランドの教育方針については、下記の記事をクリックしてお読み下さい。

 

   1. NZ小学校の概要

  • ニュージーランドの小学校( primary school ) には6年制と8年制の学校があります。
    6年制の場合は小学校を卒業した後、Intermediate と呼ばれる二年制の中学校に通うことになります。
  • 小学校には5歳の誕生日を迎えたらいつでも入学できます。個別入学となるため入学式はありません。6歳の誕生日までには入学しなければなりません。
  • 新年度は2月の頭から始まり、12月中旬に終わります。
    四学期で構成され、学期と学期の間に2週間の休みがあります。

  • 給食は無く、個人で自宅から持ってきたものを食べます。モーニングティーの時間とランチ時間の2回があります。
  • 生徒の志願数が多い学校ではゾーン制を敷き、入学を学校周辺の決められた区域に住む生徒のみに制限している所もあります。
  • 各学校の情報は文部省発行の ERO レポートで確認することができます。
    https://www.ero.govt.nz/

      2. donation  ( 寄付金 ) 

小学校1年生 ( Year1 ) 〜 Year 11 までは義務教育ですが、完全に無償ではありません。
各学校は理事会の下で独立採算性で、
政府からの補助金で補なえない部分は寄付金として生徒の家庭から徴収されます。

政府からの各学校への補助金は一律ではなく、学校のある地域の経済状況に寄り額が異なります。
その地域の経済状況は、住人の世帯収入、学歴、家族構成などの条件を基に算出した decile ( ディサイル )と呼ばれる10段階で指標され、このdecile ( ディサイル )の数値が高ければ高いほど、その地域の経済状況が高い、decile ( ディサイル )の数値が低ければ低いほど、その地域の経済状況は低いということになります。

decile ( ディサイル )が高い学校は地域は政府からの補助金が少なく、その代わり寄付金など父兄の負担が大きくなります。学校によりますが、年間1人当たり200~300ドルです。
逆にdecile ( ディサイル ) が低い学校は政府からの補助金が多くその分家庭の負担も少なくなります。

昨年2019年に、労働党が子供一人一人に平等な教育を与える為、生徒一人につき150ドル特別に予算を設けました。よって今年2020年は寄付金徴収が行われない、もしくは減額になっている学校がほとんどです。来年2021年はどうなるかはわかりません。

尚、 decile ( ディサイル )の数値は学校の教育水準を表すものではありません。

また、教師は学校および理事会に雇用されており、日本のように学校間を人事異動することはありません

   3. 日本の小学校と違う点

私の子供の体験談を交えて、日本との違いを挙げています。

 new entrant class  ( 新入生クラス )

学校によっては、ある区切り ( cut off と呼ばれます)の時期の前に入学した子供は1年生として、区切り後に後に入学する子供は、new entrant class ( 新入生組 )に入り、翌年2月の新年度から1年生とする学校もあります。

例えば、私の娘が通う小学校は1学期末の4月中旬を区切りとしています。
5月生まれの娘は、この new entrant class( 新入生組 )からのスタートとなりました。当時娘はあまり英語が得意でなく、またかなり幼稚でしたので、半年間ゆっくりと遊ぶ感覚で英語で学校生活の基本を身に着けることができ助かりました。

 習熟度制

reading, writing, mathematicsの三教科の習熟度が全国レベルの水準に合わせて3段階で評価されます。
その内 reading とmathematicsは1年生から習熟制が敷かれ、
生徒の学力に応じた内容とスピードで学びます。( 画質が悪くて申し訳ないですが、下の写真は 生徒の名前が reading と mathematics のグループ分です)
娘のように、あまり英語が得意でないお子さんでも大丈夫です。
本人の能力に応じたグループで学びながら段々と上達していきますのでご安心を。
また、学力が高い生徒には、extensionと呼ばれる学年よりさらに上の課題に取り組む機会が与えられます。

 学習障害者に対する対応

dyslexia ( 失読症)や graphesia ( 自身が書く文字を認識できない)などの学習障害がある生徒は、特別にトレーニングを受けた教師もしくは teacher’s aid と呼ばれるサポートスタッフから指導を受けます。
最初の3~4年ほどの指導で、ほとんどの生徒が普通の生徒と同じように読み書きできるようになると言われています。
娘の学校で優秀な成績を収めて表彰された生徒は graphesia 症状がある為、鉛筆でなくパソコン上で書いていました。

  ホリスティックな学習方法

他の西欧諸国と同様、プロジェクト・ベースの学習方法を用い、トピックを深く掘り下げて取り組んで学術的に関連できるようなカリキュラムが敷かれています。また、高学年になるとコンピューターを使って自分で情報を検索していきます。
繰り返し暗記型の教育方法ではありません

例えば、古代文明がテーマの時は、reading の時間に関連した本を読み、writing の時間に自分の感想などを書き、ミイラの真似して包帯を巻く練習をしたり、当時の動植物や昆虫を研究したり壁画を真似して絵を書くなど、多角的に丸々一学期を費やして研究しました。期の最後で仮装大会で締めることも珍しくありません。

    教室

一クラスの生徒の人数は20~30人です。
1日の始まりや終わりは、教室の前の方の床に座って先生の話を聞きます。

また、この床の時間に、生徒が交代で前に立って各自のニュースなどを発表します。

   文房具

文房具は新年度の前に渡されたリストにあるものを買い揃えて先生に渡します。基本的に教科書を使用せずプリントをノートに貼り付けていくため、ノートやペン、ノリなどについては細かく指定されます。

低学年の生徒は自分で管理するのが難しいので先生がまとめて管理します。共有して使うことになり、自分が買ったものを使うとは限りません。

 バリアフリー

自閉症やダウンシンドローム症などの症状を持つ子供も健常児と一緒に学びます。ほとんどのケースに専任のスタッフが付きます。 

  4. まとめ

見慣れない土地で子供を小学校に通わせることは多少勇気が必要ですが、ニュージーランドでは上述の通り、子供に合わせた柔らかい対応がなされているので、ご安心下さい。
ニュージーランドは多民族国家である為、柔和な社会であることが学校にも反映しています。

また、中には選択肢が広くて学校選びに頭を悩まされている方もいらっしゃるかもしれませんが、一言でいうと小学校での教育はどこもさほど変わりはありません。

また、繰り返しになりますが、decile の数字は教育水準を指し示すものでもありません。

個人論になってしまいますが、娘が通う小学校は decile 4と低い方で政府からの援助が多い分、施設が整っており、また先生やサポートスタッフの数も多く手厚い指導を受け、学校の外の動植物園などへもよく出かけています。障害児への対応も進んでおり、娘はクラスの障害児と共に学び健全な社会性を身に着けていい経験をしていると思っています。

最後に、ニュージーランドでは小学校は  nurtured つまり、養育される 場所であるとよく言われます。
私自身も正しくその通りだ思います。
子供たちには、小学校でゆっくり時間をかけてこの先長い人生の大事な基礎を築いていって欲しいですよね。

Ngā mihi
wonderer

 

ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。