生存数 僅か200 羽 NZ のオウム Kākāpō ( カカポ )

Kakapo Sirocco © NZ Department of Conservation

Kia  ora

のっけから質問です。
Kākāpō ( カカポ ) についてどれ位知っていますか?

NZのオウムで数が少なくて、可愛いらしい姿をしていると答える方は、かなり鳥に詳しいかNZ通だと言えるかもしれませんね。

今回はそのカカポについて取り上げています。あの有名なシロッコも紹介してますので、是非最後までお読み下さい。

 特徴

まずカカポの特徴から説明します。
愛くるしい姿と数が少ない稀なオウムとしてよく知られていますが、カカポには他にも面白い特徴があります。

  • ニュージーランド固有種である。
  • 夜行性。
  • 世界で唯一飛ぶことの出来ないオウムであり、地面の上で生活する。
  • Kākāpō はマオリ語で、Kākā は オウム を pōは 夜を表し、夜行性のオウムを指す
  • 顔がフクロウに似ていることから、イギリスや日本ではフクロウオウムの名で呼ばれることがある。
  • 雄は雌より大きく、2-4㎏の重さとなりオウムの中で最も大きい。
  • 恐らく鳥の中で最も長生きし、寿命は90年と言われる
  • 草食
  • 唯一オウムの中でレック(雄が雌に求愛行動をする)また一夫多妻制。
  • 2020年11月現在、209羽の生存が確認されている
Kakapo Trevor feeding on ripe poroporo fruit © NZ Department of Conservation

Kakapo ” Trevor ” feeding on ripe poroporo fruit © NZ Department of Conservation

 絶滅危惧になった理由

その昔ニュージーランドには何百万羽ものカカポが生息していました。そのカカポが現在200羽余りと絶滅の瀕死まで陥った一番の要因は、人間によるものです。

ニュージーランドに初めて人類(マオリ族)が足を踏み入れたのは今からおよそ1000年前。
それまでニュージーランドはコウモリと沖を回遊するセミクジラ以外には哺乳類は生息せず、文字通り鳥の王国でした。

この為カカポや一部の鳥は天敵から身を守る必要がなく、羽が退化し飛ばなくなったのですが、同時にカカポは警戒心が薄く、それ故簡単に捕らえられました。

マオリはカカポの肉を食用に、羽はkorowai の(マオリ族の外套着) の羽飾りとして使いました。稀にペットとして飼う事もあったようです。
また、マオリと一緒に住み着いた犬やネズミもカカポの数の減少に輪をかけました。

加えて19世期に入り西洋から入植者が増えると共にカカポは生息地を無くし、またネコやイタチの導入により、カカポの数は激減。僅かながら残ったものは珍鳥の見本として剥製にされて海外の博物館やコレクターに送られました。

このような人的要因が一番影響していますが、カカポの繁殖率が低いことも理由の一つです。
雌が妊娠するにはタンパク質が高い特定の木の実や果物の摂取が必須で、繁殖は2~5年に一度とかなり遅いサイクルで起こります。この為数が増えにくい傾向にあります。

 カカポ・リカバリー・プログラム

過去100年の間、ニュージーランドではカカポを救済する為に国を挙げて色々な策が取られています。

1894年
フィヨルドランド地方のリゾルーション島から天敵を取り除き、数百羽のカカポを移住する。
が、6年後にはイタチが舞い戻り、カカポは全滅となる。

1900年以降
カカポの生存が確認されず忘れ去られた存在になる。

1949 – 1973年
新しく発足されたNZ野生動物保護団体がフィヨルドランド地方を60回以上探索し、6羽のカカポを捕獲。しかし6羽とも雄で内一羽はすぐに死亡。

1974 -1977年
さらに18羽がフィヨルドランド地方で発見される。が、またしてもすべて雄。

1977年
スチュアート島で繁殖期のオスのカカポに特有の低音の響くような鳴き声が記録され、調査が始まる。結果200羽のカカポの存在が確認される。その二年後にはメスのカカポの生存が確認されるが、野生ネコが出現しまたもや数が激減する。

1980–95
コッドフィッシュ島、マウド島 ( マールボローサウンズ)、リトル・バリアー島(オークランド)の三つの島を徹底的に駆除し、生き残っているカカポを移動。12羽の雛が誕生するが三羽のみ生き残る。
カカポの総数は51羽まで下がる。


1996年
新たにカカポ・リカバリー・プランが練られ、科学者や動物学者、専門家からなるカカポチームが結成される。

~2000年 5羽のメスが誕生。総数62羽となる

~2003年 総数86羽

〜2020年 総数209羽が確認されている。

kakapo volunteer weighing kakapo chick © NZ Department of Conservation

上述通り、1996年にカカポ・リカバリー・プランが設けられて以来、少しづつ数が増え、現在200羽あまりまで回復してきました。

成功している理由は、沢山のボランティアの協力のおかげで天敵駆除が徹底されている他に、科学者らによる日進月歩の技術が投入されている事もあります。
例えば、すべてのカカポにトランスミッタ-を付けて生存を確認したり、行動パターンを把握する他、人工繁殖や人工孵化など色な手立てが取られています。
人口孵化された雛を母鳥が違和感無く育てる為に、人口孵化中に母鳥が抱く替え玉の卵を、中から雛の声がしたり、また本物そっくりにしようと現在3Dプリンターで製作中です。
また、GSPを導入してより確実に追跡できる方法も検討中だそうです。

 シロッコ : カカポ アンバサダー

200羽余りのカカポの中に、国からspokesperson ならず spokesbirdと公認されカカポアンバサダーとして活躍しているシロッコ ( Sirocco ) がいます。

普段はフィヨルドランド地方のとある島に仲間とともに住んでいますが、時々カカポアピール活動の一環として、各地の動物園を訪れ、今や国民的アイドルと言っていい存在です。

そのシロッコ は、1997年月23日に生まれたすぐに呼吸系の病気を患った為、雄として初めて人間の手で育てられました。

その後回復し森に返されましたが、その時にはシロッコは同類のカカポではなく、人間にしか興味を示さなくなっていました。

そこで、保護団体 D.O.C ( Department of Conservation : 自然保護局)は、シロッコをカカポ・アンバサダーに抜擢し、未だかつて本物のカカポを見たことがない人々にお披露目することにしました。その甲斐あって2005年に初めて一般公開されると、すぐさま国民の人気を集めました。シロッコ自身も人間との交流を楽しんだそうです。

そんなシロッコを世界中に有名にしたのは、
イギリスの動物学者と俳優の スティーブン・フライ ( Stephen Fry )がBBCのドキュメンタリー番組を撮影中に取った行動でした。何とシロッコはその動物学者の首に乗って交尾しようとしたのです。その模様はビデオに納められ、これまで1700万回も再生されています。まだと言う方は、この機会に是非ご覧下さい。特に動画の最後の方に出てくるシロッコのクローズアップされた顔の表情が何とも言えません。

面白いことに、シロッコは人間の後をついて海に飛び込み何気ない顔で泳いで浜まで戻り、カカポが泳げることを証明したこともあります。

2016年にトランスミッターが切れしばらく消息が分からなくなりましたが、二年後に再度元気にしている姿が発見されました。
フェイスブックやツイッターを見る限りでは、2019年11月にヘルスチェックを受けたようです。
また、いつか私たちの前に現れて欲しいものですね。


最後に、カカポと同じようにニュージーランド固有種のオウム、Kea ( ケア) についても知りたい方はこちらをどうぞ。

それから、以前シロッコの絵を見事に描かれている日本人アーティストの紹介をしたことがあります。興味がある方は合わせてご覧ください。

Ngā mihi
wonderer


ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。