日本でコスメ化しているNZの固有植物『ハラケケ』は実はユリ科!その特徴とマオリ族との深い繋がり

Kia ora

ニュージーランドにいると、必ず目にする植物の一つに『ハラケケ』があります。
『ハラケケ』は緑色の刀のような独特の葉をたずさえ、住宅地、海辺、山地ととにかくどこにでも育ちます。

そして、『ハラケケ』にとまるこれまたNZの名物の鳥 Tūī ( ツーイ ) とともにニュージーランドの風情のシンボルとして、写真やアートによく使われます。

実はこの『ハラケケ』はニュージーランドの固有種で、先住民族マオリ族と昔から深い結びつきがあります。
この編ではそのハラケケの詳しい特徴と、それからマオリ族との関係を詳しく紹介します。

  • 学名:Phormium tenax
  • 和名:マオラン ( 真麻蘭 )、ニューサイラン ( 新西蘭 )
  • ハラケケはニュージーランドの原住民マオリ人が付けた名前である
  • ヨーロピアン入植者が、ハラケケの繊維が亜麻に似ているので英語で亜麻を意味するflax と呼んだが、本当はハラケケはユリ科の植物である
  •  ニュージーランドの固有種でニュージーランドに生息するもっとも長い歴史を持つ植物
  • common flax (harakeke) と mountain flax (wharariki)の二種類がある。
    Common flaxは、高さ3メートル、花の茎は4メートルまで成長し、種が入ったさやは茎からまっすぐ縦に伸びている。湿地帯を含めた色々なところに分布する。
     mountain flax は小さく最長で1.6メートル、さやは垂れ下がっている。
    高山にも海風に晒された海岸線にも生息。
  • 動物の食糧原やすみかでもある
    ツ-イ、ベルバード、 サドルバックなどの鳥や、コウモリ、ヤモリなどがハラケケの花の蜜を吸う。Flax snail と呼ばれるNZのFar Northにのみ生息する希少なカエルは、ハラケケの葉の下に住む。
  • マオリ族はハラケケからあらゆる日常生活用品を作った。
  • 19世紀に入植したヨーロピアンも、ハラケケの耐久性が強いことから船具のロープとしてなど重宝した。19世紀後半に毛織物や冷凍のマトン肉に取って代わるまで、ニュージーランドの最大の輸出品であった。

ニュージーランドの先住民族マオリにとってハラケケは日常生活に欠かせない繊維材料でした。
各部族はそれぞれの集落でハラケケ農場を営み、耐久性や柔軟性、それから色合い、繊維の特徴などが異なる色々な品種のハラケケを育てていました。

マオリ観では、ハラケケ自体は whānau (家族)を象徴します。

真ん中の新芽 rito は子供、そして その rito(子供)を守るように囲んでいる葉は awhi rito (両親)、さらにその外側は tūpuna (祖父と祖先) を象徴します。

この為収穫する際は、必ず外側の古い葉を刈ることになっています。

マオリ族にとってハラケケの使い用途は様々。とにかく生活用品全般に用いられていました。

  • 乾燥させた葉は、piupou / korowai (衣類)、whāriki (敷物)、tukutuku (壁の飾り)、kete(籠)、ロープ、鳥のわな、鞭、魚の釣り糸やネットなど生活必需品に。
  • 乾燥させた花の茎を縛って、ウキや筏(いかだ)に。
  • ふんだんな蜜は食べ物や飲み物の甘味料として。
  • 樹液はやけどや切り傷、そして歯痛に。葉は折れた骨を支える包帯として。根から出る汁は傷を殺菌するするために塗られるなど、薬品として。
  • 消費するだけでなく、船のロープとして使用するヨーロピアン探索者の取引材料として。

また、同じ葉でも部分や加工の仕方により、異なる目的の衣類が作られていました。

kākaku (マント)を作る時には、mukaと呼ばれる葉の内側にある繊維を取り出して加工し, その下地として織られました。また、葉全体を割いて藁(わら)の状態にしたものは、pākē(防水性のあるケープ)や飾りつけとして用いられました。

このようにハラケケを使って織ることはマオリ語でRaranga と言います。マオリの生活を営む上でRaranga は欠かせないもので、Raranga でその部族に貢献する女性は部族の中で高い地位を占めていたほどでした。

〇 ハラケケとマオリ族の現在

現在もあらゆるところにハラケケは生息していますが、織る材料として特別に栽培されていた特定の種類のハラケケは、20世紀に入ってマオリ文化が廃れたのに伴い激減しました。が、幸運にも幾人かの人々がその種類のハラケケを栽培していたため全滅は免れています。
ここ20年の間に Raranga ( ハラケケで織る )が復活しており、現在ハラケケの需要が高くなっています。

〇 収穫の決まり

ハラケケの葉を収穫するには一定の決まり事があります。
自宅の裏庭にあるハラケケで何か作ってみようという方は、次のような点にご留意ください。

  • 収穫前にkarakia (祈り)を捧げて感謝の気持ちを表す
  • 真ん中や下部を避けて縦方向に切る。そして両方の葉を取ってバランスよくする。こうすることで雨が降っても真ん中の部分を腐らせることを防ぐ。
  • 夜間や雨が降っているときは収穫しない
  • 食べ物を持ち込まない
  • 妊娠しているもしくは生理中の女性は神聖な状態であるため、収穫も織ることもできない

ハラケケが実は亜麻科でなく、ユリ科の植物だと知って驚いた人は多いのではないでしょうか。最
近では日本や韓国でハラケケを材料とする保湿クリームなどの化粧品も出ているようです。人気があるのかどうかはわかりませんが。。。

ニュージーランドの代名詞とも言える植物として今回ハラケケを紹介しましたが、この時期はクリスマスツリーと呼ばれるポーフツカワが今を盛りと言わんばかりに、赤い花を咲かせています。
植物に興味がある方や、ニュージーランドの夏に訪れる予定の方は是非このポーフツカワの記事もご覧ください。

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ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。