Kia ora
ニュージーランドでは夏の訪れとともに、Pōhutukawa(ポーフツカワ)の真っ赤な花が開花し始めました。
Pōhutukawa(ポーフツカワ)は、マオリ語で rākau Kirihimete (クリスマス・ツリー)と呼ばれ、夏の代名詞の一つ。
そのポーフツカワについて、特徴や、先住民マオリ族との関係、見どころなど盛り沢山の内容でお届けします。
目次
Pōhutukawa(ポフツカワ)ってどんな木
学名/分類
科名:フトモモ科メトロシデロス属
学名:Metrosidero sexcelsa(メトロシダラス・エクセルサ)
英名:New Zealand Christmas tree
和名:ケムニンフトモモ
分類:常緑高木
特徴
- NZの固有種
- 開花は11月中旬から1月末まで
- 1つの枝先に沢山の赤いブラシのような赤い花が咲く
- マオリ語で「細かい水しぶきで濡れた」という意味。赤い花の先端に雄しべがついて水で濡れているように見える
- 赤だけでなく、黄色の花をつけるものもある
- 寿命は1000年、複数の幹と大きな枝が広がってドーム状の形を形成しながら25メートルの高さまで成長する
- 北島のみ自生。ヨーロッパからの入植者より南島にも植林された
- 冷たい風や乾燥に強く、海岸線にも見うけられる。
先住民マオリ族とPōhutukawa
今でこそマオリ語でrākau Kirihimete (クリスマスの木)と呼ばれていますが、ポーフツカワは昔から rākau rangatira ( 木の王様 )として先住民のマオリ族の間で崇められていました。
その理由として、木の大きさもさることながら、古くから伝わる神話に登場し、今でも霊界へ通じていると信じられていることが挙げられます。
また、様々な用途で薬としても使われていました。
深紅の花は戦士の鮮血である
マオリ族の間には古くから語り継がれている神話が沢山あります。
その中の一つに、ポーフツカワの花の色について次のような逸話が残っています。
Tawhaki(タファキ)という若い戦士が父親の死の報復の為に天国を探し求める。だがその試みは失敗に終わり、無惨にも地上に落ちてしまう。そのTawhakiの地上に流れた真っ赤な血が、ポーフツカワの深紅の花になった
黄泉の国の入り口のガード
ニュージーランドの北島の最北端に位置する Cape Reinga (ケイプ・レインガ)はマオリ語でTe Rerenga Wairua(テ・レレンガ ・ワイルア ;霊が飛び降りる場所の意) と呼ばれます。
そしてそのケイプ・レインガ崖っぷちに立っている1本の樹齢800年になるポーフツカワは、死者の魂が黄泉の国に入る玄関口のガードをしていると言われています。
rongoā 薬として
マオリ族は、昔から色々な植物をrongoā 薬草として使用しており、ポーフツカワもその例外ではありません。ポーフツカワの樹皮にはエラグ酸と呼ばれる酸化と炎症を抑える物質が含まれおり、怪我やかすり傷によく使われていました。
また樹皮の内側を煮沸して下痢止めに、噛んでカンジダ症の緩和剤として、水に浸してうがい薬や傷口の止血剤としてなど幅広い用途に使われていました。
また花の蜜は、砂糖の代わりに料理に使われたり、葦(あし)で作ったストローで吸って喉の痛みを和らげました。
有名なポーフツカワの木
ヨーロッパからの入植者たちが南島に移植する前は、ポーフツカワは元々北島だけで自生していました 。それ故に樹齢を重ねた立派なポーフツカワの多くは北島で見られます。
Te Waha o Rerekohu pōhutukawa(テ・ワハ・レレコフ・ポフツカワ)
最も最大のポーフツカワは北島の東海岸、ギズボーン地方のTe Araroa(テ・アラロア)という町にある樹齢600年の木です。なんと高さ20メートル、そして38メートル近くにも渡って広がっています。このポーフツカワはTe Waha o Rerekohu pōhutukawa(テ・ワハ・レレコフ・ポフツカワ)の名前がついています。
オークランドの Te Hā
ギズボーンまで遠出しなくても立派な木がオークランドでも見られます。ローズ・ガーデンの名で親しまれている 市内のパーネルのDove Myer Robinson Park には樹齢140年、6メートルの大きさに広がるTe Hā’という名前がついたポフツカワの木があります。ローズ・ガーデンという名前がついている通り、夏の間はポーフツカワだけでなく色とりどりの薔薇が楽しめますので、オークランドを訪れている方にはお薦めスポットです。
勝手に切り倒せない!
残念ながらニュージーランドの樹木や植物はヨーロッパ人がオーストラリアから導入したポッサム(フクロギツネ)にかじられて生態系が損なわれつつあります。特にポーフツカワはポッサムの好物で、その数は年々減少しています。そのため、ポーフツカワと別のrātā (ラタ)は、DOC(Department of Conservation: 自然保護省)とProject Crimsonと呼ばれるチャリティー機関が一緒になって、ポッサムを撃退、ポフツカワの保護活動が行われています。
このためオークランドなどの都市部では、たとえ私有地にあっても勝手にポフツカワを斬り倒すことが禁じられている所もあります。もし、ニュージーランドにお住まいの方で所有地に生えているポフツカワを切り倒したい場合は、必ず市役所に相談しましょう。
あとがき
マオリ族が新年を祝う*マタリキ星団の9つの星の一つがポーフツカワと呼ばれ、他界した人々の霊を弔う意味があります。
ケープレンガの黄泉の国へ霊を見送る話もそうですが、ポーフツカワはマオリ族にとってとてもスピリチュアルな木なのでしょうね。
また、ポーフツカワに抗酸化物質が含まれていると書きましたが、この抗酸化物質は保湿効果があり乾燥肌に効果があるとともに皮膚の状態を整えアンチ・エイジングの作用があるそうで、現在はコスメ製品としても売られています。
ニュージランドの蜂蜜と言えばマーヌカハニーが有名ですが、最近このポーフツカワの蜂蜜も出回っています。塩気の効いたバターのようなクリーミーな味わいで知られ、特に子供に人気があると言われています。
コスメ製品やはちみつの他にも、ポフツカワの絵柄のマグネット、絵葉書、ノートブックなどなど沢山の小物が出揃っていますので、お土産ものさんを覗いてみて下さいね。
*マオリ新年マタリキについての詳細はこちらをご覧ください。
*マーヌカの木についての詳細はこちらを。
(参考)
https://en.wikipedia.org/wiki/Metrosideros_excelsa
https://www.nzgeo.com/stories/pohutukawa-flame-of-the-north/
https://www.doc.govt.nz/nature/native-plants/pohutukawa/
https://www.nrait.co.nz/our-owners/te-whanake/pohutukawa-aotearoas-rakau-kirihime
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