ニュージーランドの2024年度のBUDGET(国家予算) の第二弾です。
国民党の二コラ・ウィルス財務大臣により発表されたBUDGET(国家予算)には、最大の関心事項である14年ぶりの減税の他にも、劇的な変化が見られます。
この編ではBUDGET(国家予算)全体を見て、結局誰が最も得しているのか、また損しているのか、そして広がる波紋について詳しく説明していきます。
2024年度BUDGET/国家予算
WINNER – プラス予算
- 減税 ‐ 37億ドル
190万の家庭が平均週に30ドル、子供がいる家庭は39ドル、最低時給取得者は週に$12.50ドル減税
詳細はこちらを。 - in-work tax credit
子供がいる家庭の所得税控除 25ドル増額 - 幼児保育費用の補助
中間、低所得者対象 最高週75ドル、すでに4月から実施 - 年金受給額増額 -週4.5ドル
- 賃貸家主の税金控除 -7億ドル
- 医療 -16億ドル
- 教育-17億ドル
- マオリ機関 –
マオリ語小学校施設 1,200万ドル
Te Matatini(テ・マタティ二:マオリのカパハカ全国大会) 4,900万ドル - 警察 – 4億2500万ドル
500人の警官のリクルートと最前線の活動のトレーニング - 交通機関 – 26億ドル
- 北島の災害道路復旧工事費 94億ドル
- 自然災害対策費-58億ドル
LOOSER – マイナス予算
- マオリ機関
医療福祉 – 3500万ドル
住宅予 – 4,000万ドル - 地球環境問題対策
エネルギー・プログラム – 3,800万ドル
自然エネルギー開発資金 – 1億7,800万 - 13種類の癌治療薬費 – 7,000万ドル
- 大学の授業料免除の対象を初年度から最終学年に移行-2億ドル
- 海外からの学生の学生ローンの返済利子3.9%から 4.9%に引き上げ
- NZフィルム・コミッション、NZ交響楽団の予算減 – 560万ドル
- ウェリントン化学シティプロジェクト – 4億6,200万ドル
- インターネットギャンブル業者の課税率の引き上げ – 4,700万ドル
フィルム・コミッション(Film Commission、略称:FC)とは、地域活性化を目的として、映像作品のロケーション撮影が円滑に行われるための支援を行う公的団体である (出典:ウキペディア )

特記事項
- 減税の37億ドルを補うために、5,000人近くがリストラされている。また、国家の借金がさらに120億ドル増え、来年2025年の予測ではGDPの40%を上回り、43.5%にまで上昇
- 一握りの家庭が減税と幼児保育手当てを合わせて週に最高125ドルを得るが、ほとんどの国民が得る金額は少額である。
- 医療や教育機関の予算は現在のコスト・プレッシャーを凌ぎ、現在のサービスを維持するだけで精一杯
- マオリ主導型のプロジェクトはマタティ二以外断絶。ワイタンギ条約やマオリ文化振興資金が他に回されている
- 環境問題への取り組み断絶
- 公約していた癌治療薬の補助が果たされてない
国民の反応
2歳児のシングル・マザー
政府はもっと援助してくれると思っていたが失望している。週に90ドル得るだけでは、子供の保育費と生活費を払うだけで精一杯。週に150ドルであれば生活難から逃れるが。。。
オークランドの学校の校長
学校経営の助成金が増額されたが、インフレーション率がそれを超えているので現実はマイナスであり、補助教員の時間数を減らすことになる。
オークランド大学の1年生
覚悟はできていたが、初年度にかかる費用に驚愕している。どうやって1万ドルに近いお金を作るのか。精神的にタフでならないといけない。
野党の反応
今年2024年のBUDGET/国家予算は、去年組閣した国民党を筆頭とする連立政権の初めて組んだものです。背景については、BUDGET/国家予のメインの策減税についての特集の中で説明していますので、そちらをご覧ください。
ここでは、野党である労働党やグリーン党、マオリ党の反応を紹介します。
労働党
労働党党首で元首相のChris Hipkins (クリス・ヒプキンズ)
減税の公約は守れたにしても、地球温暖化現象への責任から逃れている。医療機関や教育機関の助成金額はコストプレッシャーをはるかに下回る。低所得層や子供の貧困化に対策がなく、公共交通機関の補助金をカットすることで、ますます子供の貧困化が進み、ニュージーランドは後退するだろう。
同党のBarbara Edmonds(バーバラ・エドモンズ)財務担当
減税の他に賃貸家主に対し税金控除でさらに29億ドルを割きながら、公約であった13種の癌治療薬の無料化が守れなかった。人の生死よりも一部の人の利益が優先されている。
グリーン党
人類の将来に関わっているというのに、石炭や石油の採掘など地球温暖化、環境問題に関わる対策をすべて断ち、その資金を他に充てている。また、貧困対策が無い。63,000人の子供の未来が潰されたも同然。
マオリ党
「特権階級のための国家予算」であり、各マオリ機関が閉鎖されている。
今後マオリ族は独立して国会を持ち政治を司ることもあり得る。
あとがき
減税の特集の中でも書いたように、賃貸家主を優遇しながら貧困層には何も対策が打たれていないことには憤りを感じるところですが、マオリ機関の閉鎖、それから環境問題に一切取り組まないとは言語道断。内閣の道徳観は一体どうなっているのでしょうか。
去年新内閣が発足したとき発表した「ワイタンギ条約の見直し」で野党や専門家から「国家を分断する恐れがある」と指摘されましたが、既にその傾向が表れ始めました。
実際に、マオリ族だけでなく環境問題有識者の間で全国各地で色々なプロテストが起こっています。
そして、このBUDGET/国家予算の発表のあと、国民党の党首で現首相の Christopher Luxon ( クリストファー・ラクソン)の支持率が下がる一方です。
これからまだまだひと悶着続きそうです。
Ngā mihi
wonderer