今年もニュージーランドではBUDGETと呼ばれる国家予算が発表されました。
今回の最大の関心事項は、ずばり所得税の減税です。
減税は去年の総選挙中の国民党の公約事項。しかも14年ぶりの減税とあって国民から大きな期待が寄せられていました。
果たして一体だれが、そしていくら減税になるのでしょうか?
ニュージーランドで働いている人、のちのち損することのないように是非ご参考下さい。
2024年度の所得税減税
減税のあらまし
一言で減税と言っても、税率は変更されておらず現行と同じ税率です。
その代わり税率の対象となる所得額の階層が変更されています。
まずは政府が発表した下の表を見てみましょう。
課税対象所得額階層 | 税率 | |
現行 | 変更後 | |
~ $13,999 | ~ $15,599 | 10.5% |
$14,000 ~$47,999 | $15,600 ~ $53,499 | 17.5% |
$48,000 ~$69,999 | $53,500 ~ $78,099 | 30.0% |
$70,000 ~$17,999 | $78,100 ~$17,999 | 33.0% |
$180,000~ | $180,000 ~ | 39.0% |
おわかりのように、皆が皆減税の恩恵に授かる訳ではありません。
階層が変更された部分に当てはまる所得者のみが、減税対象となります。
減税対象となる収入額
上の表をもっとわかりやすいように、実際に減税の恩恵を受ける所得階層のみを抽出して別の表にしてみました。
課税対象所得額 | 現税率 | 新税率 |
$14,000 ~ $15,599 | 17.5% | 10.5% |
$48,000 ~ $53,499 | 30.0% | 17.5% |
$70,000~ $78,099 | 33.0% | 30.0% |
繰り返しになりますが、上記の表に記載の所得収入者のみが減税対象となります。
その例として*最低時給(2024年度現在 $23.15)で週40時間フルタイム雇用者の年収のケースを見てみましょう。
年収は$23.15 × 週40時間 × 52週=$48,152ですので、ちょうど上の表の$48,000 ~ $53,500 の枠に当てはまります。
従って税率が30%から17.5%と、12.5%の減税となります。
時給でみる現税率
今度は年収ではなく時給でみてみましょう。
(週40時間フルタイム雇用、税込み)
時給 | 現税率 | 新税率 |
*$23.15~$ 25.72 | 30.0 % | 17.5 % |
$33.65 ~ $ 37.55 | 33.0 | 30.0% |
減税額については下記の政府のサイトで調べることができます。
https://budget.govt.nz/taxcalculator/index.htm
*上記表の$23.15は2024年度の政府で決められた最低賃金の額です。
最低賃金についてはこちらをご覧ください。
留意点
ニュージーランドの課税方式は「単純累進課税」です。一定の額を超えた場合、所得額全体に対して高い税率が適用されます。このため僅かな所得差でも収入額全体に高い税金が課せられます。
具体的に$53,499の年収の税率は17.5%ですが、$53,500では収入全体に30%の課税され、手取額に大きな差異が出ます。
ですので、昇給した、それからパートタイムで働いていて時間数を増やした場合なども、年間所得額がいくらになるのか留意する必要があります。
因みに日本は「超過累進課税」が採用されており、課税の対象額が一定額を超えた場合、超えた金額に対してのみ高い税率が適用されます。
減税の背景
14年ぶりとなる減税は、去年組閣した国民党を筆頭とする連立政権の初めてのBUDGET(バジェット:国家予算)として発表されました。
発表した国民党の二コラ・ウィルス財務大臣は、減税について次のように語っています。
去年の選挙キャンペーン中に、週に20ドル手取りの増額で赤字にならなくてすむと語った人や、一生懸命働いて人生を築こうとしている一般のニュージーランド人のため
国民の生の声
では実際のニュージーランド国民の反応はどうなのか、生の声を聞いてみましょう。
子供3人を持つ5人家族の男性
週40ドル減税額ではパンとトイレットペーパーを余分に買うことができる位。ほとんどは毎年上昇する固定資産税の支払いに充てられるだろう。政府は常に大企業を優遇しているが、自身のように個人事業主についても考慮して欲しい。ビジネスを拡大するにしても、人件費やスキルアップするトレーニングコストが高く不可能である。
政府職員リストラで退職した女性
週に25ドル減税では家計の足しとは言えないが、少額であることは予想していたので驚いていない。個人的には、少しだけ多く買い物ができるよりは、公共機関がしっかりしており国民に奉仕している体制が望ましい
一般評価
この減税により最低時給取得者は週に$12.50減税、平均収入の家庭では週に$51減税となります。市場の物品やサービス料金、それから公共交通機関、家賃、固定資産税の上昇に応じた額であると言えるのか疑問視されています。
そして上記二コラ・ウィルス財務大臣のコメントのように、減税の対象層はミドルクラスと呼ばれる中流層です。BUDGET/国家予算全体として貧困層への手立てがなく貧困化が益々進むと懸念されています。
また忘れてならないのが、この減税に25.7億ドルが投入されていますが、この費用を作るために5,000人近くの公務員や公共機関の職員のリストラされていることです。
BUDGET/国家予算全体では減税とともにECE(就学前児童の教育)手当が出ているため、子供を預けて両親共働きの環境が整えられています。逆を言えば、一般家庭において子供が小さくても両親が共働きでないと生計が成り立たないことが裏付けられています。
あとがき
去年の総選挙時に国民が公約としてあれだけ呪文のように唱えていた減税。ですが実際にBUDGET/国家予算の蓋を開けると、減税だけでなくリストラや他のからくりがあることがよくわかります。
その2024年度BUDGET/国家予算全体については、こちらをご覧ください。
ところで、以前「なぜ多くのニュージーランド人がオーストラリアに移民するのか」について特集を組んだことがあります。そのブロブで紹介した中に、「オーストラリアでは夫の収入だけで充分に生計が成り立つので、専業主婦として二人の子供の面倒を見ている。豪に移民して良かった」という声がありました。
今回の024年度BUDGET/国家予算は見れば、悲しいですがその声は本当にそうだと納得せざるを得ません。
Ngā mihi
wonderer