ニュージーランドでは、若い時にタスマン海の向こうのオーストラリアに移り住んでひと稼ぎした後にNZに戻って家庭を築くというのが一つのパターンとなっています
日本では、田舎から上京して東京や大阪などの大都市に住んで働くようなものです。
ですが、ここ数年そのオーストラリアに移住する数が急激に増加し、ニュージーランド人の損失が懸念されるようになりました。実際に何が起こっているのか、その要因なども含めて詳しく解説していきます。
データで見るNZ人の移民
今年3月までの1年間のネット・マイグレーション・ロスが過去最高の52,500人を記録しました。
これはニュージーランド市民/国籍保有者が海外へ転居する数が転入した人の数より52,500人上回ったことを指します。簡単にいうと、ニュージーランド人が国内から大幅に減っていることになります。
もう少し細かく見てみましょう。
- コロナ禍以前のNZ人の流出ロスは年に平均33,000人
- 前年度2022-23年にかけては 41,000人
- 過去の最高記録は2012-13年で44,000人
(7%の失業率、クライストチャーチ地震、オーストラリア(豪)の探鉱ブームが要因) - 流入者1人に対し、3人は流出している割合
- 半数は豪へ移住
- 毎月2000人以上のニュージーランド市民が豪に移住
- 2023年9月までの1年でニュージーランドから豪へ転出した市民数は、その逆の豪からニュージーランドへの転入数より23,800人多い
ネット・マイグレーション・ロスの要因
ニュージーランド(NZ)側
ではなぜ多くのニュージーランド人がオーストラリアに渡っているのかその要因をまとめてみました。
まずは、ニュージーランド側にある要因です。
- 経済危機
未だにコロナ禍の影響を引きずり、物価や金利が高い。 - 失業率上昇
失業率が上昇し今年度末までに失業率5%が予測。さらに4,000人を上回る政府や公共機関職員のリストラ、主要なメディア会社やファッション・ブランド閉鎖などが連日連夜報道されており、一層危機感が煽られている。当然求人率は低下しているが、海外からの移民数は空前のブームで激増。 - 政府の不干渉
技術のあるNZ人が豪など他国に流出し、ブレイン・ドレイン(頭脳流出)が懸念される中、ラクソンNZ首相は、「それだけ両国の関係が友好であることが表れている。首相の役目は、NZ人が家庭を育みそして頑張って働けばそれに報いる国を作る」と政府から歯止めがない。
オーストラリア(豪)側
次はニュージーランド人がオーストラリアに引き付けられる主な要因を挙げます
- 経済面でコロナ禍不況から立ち直りが早い
- 生活コストはNZ同様に高いが、給料が良い、また人口が多いため仕事の供給が高い
- 豪では隣の国のNZ人は、技術、非技術職種においてとても雇いやすく優先されやすい
- NZ人のヘッドハンティングが激化。特に二千人の警察官が不足しているクイーンズランド州の警察は ”気温も給料も高い” キャッチフレーズにNZの警察官をターゲットとしている
- 去年移民法が簡素化され、ニュージーランド人は4年で市民権を申請できる。
オーストラリアへ移住した人の声
では実際にオーストラリアに移ったニュージーランド人の声を聞いてみましょう。
ケース1)24才の商業弁護士の女性「オークランで生活費を払うのが精一杯で貯蓄出来ないためパートナーとメルボルンへ移住。マイホーム購入という長期ゴールを達成するには収入を2倍にする必要があることは頭で分かっていても、決断するまで色々なリスクを想定し怖じ気づいたこともあった。が、現在はメルボルンの商法界でキャリアを積み貯金しながら、メルボルンという大都市の生活を満喫していて幸せである。」
ケース2)主婦「両親や兄弟と離れたのでとても難しい決断だったが、現在は最高の時を過ごしている。経済的により良い機会と新しい人生を望んで移住したが、その通りの生活をしている。夫の収入が良いので自身は働かず娘と豪で生まれた息子の育児に専念できる。NZでは共働きでないとやっていけないだろう。」
ケース3)在歴3年26歳の男性「豪は生活費が安い、給料が良い、気候が良い、ビーチもあってNZの生活に比べて10倍良い。多くのNZ人が豪に移住するのは当然である。NZはとにかく物価が高くて良い生活を送るどころか生き残ることさえ難しいから」
ケース4)在歴1年の女性「豪で平穏に暮らしている。故郷はNZであるからいつかはNZに戻るつもりである。が今は豪で家族と新しい未来を築くことに専念している」
ケース5)「豪では生鮮食品を毎日食べることができる」
あとがき
上のオーストラリアへ移住者の声で、「生鮮食品が毎日食べられる」との声に笑ってらっしゃる人もいるかもしれませんが、実際に高い家賃を払い、学生ローンを返還しながらマイホーム購入のための頭金を貯めると、生鮮食品代を削ってでもしないとやっていけないのがニュージーランドの実情です。
もうすぐ今年2024年のBUDGET(国家予算)が発表される予定で、先行して色々なニュースが飛び交っています。
少しでも人々の生活が楽になるようになればいいのですが、果たしてどんな施策が打たれるのでしょうか。。。
Ngā mihi
wonderer