Kia ora
このところニュージーランドでは、首都ウェリントンで起こっているワクチンとワクチン・パス反対派によるプロテストの話題が世間の注目を浴びている中、先週専門家が発表した調査結果で、ニュージーランドは世界で2番目にdemocracy ( デモクラシー:民主主義)が進んでいる国としてランクされていることもご存じですか?
そこでこの編では、ニュージーランドが2位に輝いたという世界の民主主義調査について紹介します。
In what was overall a gloomy year for democracy, NZ became more democratic and trailed only Norway in the Economist Intelligence Unit Democracy Index. https://t.co/iyKCLTnvc1
— Stuff (@NZStuff) February 10, 2022
目次
デモクラシー/民主主義とは ?
デモクラシー/民主主義はオックスフォード辞書で次のように定義付けされています。ご参考ください。
みんしゅしゅぎ【民主主義】人民が主権を持ち、自らの手で、自らのために政治を行う立場。人民が自らの自由と平等を保障する行き方。出展: Oxford Languages and Google
エコノミスト・インテリジェンス・ユニット (EIU) とは
世界の民主主義度指数を調査し発表している機関は、Economist Intelligence Unit (EIU) といい、日本でもそのままエコノミスト・インテリジェンス・ユニットと呼ばれています。
このエコノミスト・インテリジェンス・ユニットはイギリスを本拠地とし、日本など世界各国に支社があります。業務内容については次のように紹介されています。
エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)は、エコノミスト・グループの調査部門を担当して、国際企業のトップマネージメントを対象にビジネスに影響を及ぼす世界各国の政治経済やその予測、カントリーリスク、地域ビジネス概要、その時々のビジネス諸問題に関する調査レポートなどを出版しています。
http://www.rayden.jp/contents/eiu/1000/post_1.html
NZ、日本そして世界各国の民主主義の度合
さて、ようやくここから本題に入ります。
先に紹介したエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)は、毎年世界各国の民主主義の度合いを調査しています。
先週発表された2021年の世界の民主主義度の調査結果の中で、ニュージーランドはみごと世界で2番目にランクインしています。前年度の2020年は4位でした。
民主主義指数の測り方
このEIU のレポートは、各国の民主主義の度合いを「選挙過程と多元性」「政府機能」「政治参加」「政治文化」「人権擁護」の5つの分野で調査し、それぞれ分野で10を上限とするスコアで表しています。
ニュージーランドの評価の平均値は9.37でした。この9.37の評価は前年度の2020年と同じですが、他の国の評価が下がったために2位に浮上しています。
他の国の民主主義度
他の国の民主主義度はどうでしょうか。
1位ノルウェー、3位フィンランド、4位スウェーデン、5位アイスランド、6位デンマークと、2位のニュージーランドを除くと、北欧の国が占めています。7は位アイルランドで、隣のオーストラリアは9位、カナダ12位、韓国16位、日本17位、イギリス18位となっています。
これらの上位の国は full democracy ( 完全民主主義 ) の国として区分されています。
悲しいことに完全民主主義の恩恵を受けている人口は世界の6.4%にしか過ぎません。前年度は6.8 % でしたが、スペインとチリが完全民主主義から欠陥民主主義のランクに下がったのに合わせて、人口も減少しています。
気になるアメリカ合衆国の民主主義指数は26位で、完全民主主義ではなく欠陥民主主義(flawed democracy)に区分されます。欠陥民主主義とは、統治機能に問題があり市民の政治参加意識も弱いとされています。
対象となる165カ国の内、最下位はアフガニスタン、最下位から2位はミャンマー、3位北朝鮮、4位コンゴ、5位はシリアが挙げられています。これらの国は独裁体制主義と呼ばれます。この独裁体制主義の区分には中国とロシアが含まれます。
下の世界地図は2020年の民主主義度合を示しています。
濃い緑は完全民主主義、薄い緑色は欠陥民主主義、赤色の国は独裁体制主義を表しています。
こうしてみると、完全民主主義の国の数が少なく、逆に驚くほどの数の国が独裁体制主義であることがわかります。
2021年の民主主義の動向
前年度の2020年に続いて2021年もパンデミックは、世界規模で民主主義と独立性に大きな影響をもたらしました。
民主主義の分類に入る国の人口が50%を割ったのは、2010年の世界経済危機以来のことです。
パンデミック対策としてロックダウンの施行や、旅行の制限、ワクチン・パスの導入により、民主主義、独裁体制に分類される双方の国々で、個人の自由に制限が生じている他、特に西欧圏において、国を治めるにあたってテクノクラシー(技術家政治)・アプローチを用いる傾向が一層深まっていると専門家は指摘しています。
同時に、多くの国で国民の間で亀裂が生じていることも否めません。
用心深い政策や専門家の意向に従い、政府によるロックダウンやワクチン接種、ワクチン・パスポートの義務付けを支持する人がいる一方で、政府が個人の自由の権限に干渉しているとして断固反対の立場を取る人もいます。ニュージーランドもその一例と言えるでしょう。
中国の脅威
またこのエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の結果に、専門家は中国の挑戦的な政策モデルがどのくらい他の国の民主主義に影響を及ぼしているかという点にも注目しています。
中国の挑戦的な政治の背景には、過去30年間の中国の経済の信じ難いほど経済成長を成し遂げたことが密接に関わっていると、専門家らは指摘しています。
中国の指導者らは、元々彼らの政治形態は西欧諸国の自由民主主義に基づいたモデルよりも優れているとして、常に西側と比較しながら政策を公布していますが、パンデミック以降はさらにこの傾向に拍車がかかっているそうです。コミュニズム体勢が益々強化しているということでしょうか。
(参考https://www.stuff.co.nz/world/127741812/new-zealand-rated-worlds-second-most-democratic-country-by-economist-intelligence-unit)
あとがき
世界で民主主義の区分に入る人口は半分以下、また独裁体制主義の国が多いという事実にとても驚いたというのが、率直な感想です。
幸い私が住んでいるニュージーランドははるかに民主主義が発達した国と言えますが、それでも欠陥民主主義に入るアメリカ合衆国の危険な思想を受け陰謀説を信じる人もいるのが事実です。
かと言って、単純にパンデミックが陰謀説のすべての要因であるとは言えません。どんな社会にもオカルト的な思想は存在し、パンデミックはただ単にそういう社会構造を浮き彫りにしているかと思います。
だからこそ、こんにちの社会ではそういうマイナーな思想にも対応できる柔軟な民主主義が強く求められているのではないでしょうか。
最後に、ニュージーランドは世界で10番目に幸せな国としてもランクインしています。
是非こちらの記事も併せてご覧ください。
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