使い捨てプラスチック廃止: NZとEUの取り組み

 

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ニュージーランド政府は今月初め、使い捨てプラスチック製品の廃止計画を発表しました。

EU( 欧州連合 )では2019年からすでに使い捨てプラスチック廃止の動きが始まっており、ニュージーランドもEU諸国に続くものと期待が高まっています。

この編では、そのニュージーランドのプラスチック廃止に対する取り組みのほか、手本となるEU( 欧州連合 ) の改革について詳しく解説します。

  プラスチック汚染現状

まずはじめに、現在のプラスチック汚染状況について簡単に説明します。

ある科学調査機関の調査結果によると、地球上のプラスチックゴミの量は83億トンにも昇るそうです。

1950年代に始まったプラスチックの製造は年を追う毎に急速に加速し、2年前の時点で製造数は83億トンを越えたと言われています。その内6億3千万トンは廃棄物、つまりゴミとして処分されていますが、リサイクルされたのはわずか 9% のみで、焼却処分は12%、残り79%は埋め立て地もしくは地球上のどこかに投棄されています。

ヨーロッパ近海では海洋ゴミの70%を使い捨てプラスチックが占めると言われています。

2019年に地中海に位置するイタリア領の島、サルデーニャ島沖に打ち上げられたシロナガス鯨の胃の中から22kgもの量のプラスチックが発見された件は、皆さんのご記憶に新しいかと思います。

このまま海洋プラスチック汚染が進めば、2050年には魚の数よりも海流を漂流するプラスチックの数が越えるとまでも言われています。

  ニュージーランドの取り組み

このような地球規模のプラスチック汚染に対しニュージーランド政府が今年7月に発表した計画とは、2022年後半から2025年の7月末に三段階に別けて使い捨てプラスチック製品を徐々に廃止するというものです。

プラスチック廃棄量を削減しながらリサイクリング・システムを改善するとともに、再利用可能もしくは代替え製品が推進されることになります。

廃止対象の製品は、ストロー、綿棒、包装、カトラリー、プレート、容器、果物に貼るシールなどリサイクルが難しいPVC(ポリ塩化ビニル)や、ポリエステル素材の飲食品のパッケージや分解不可能のプラスチック製品です。

© Janet McKnight via Flickr

使い捨てプラスチック製品の廃止の目標が4年後の2025年に設定されている理由として、環境大臣のデイビッド・パーカー氏は、プラスティックに替わる製品開発にかかる時間を挙げています。
それまでは、一般消費者やビジネス主に対し、現在市場に出回っているリサイクル可能のプラスチックや紙製の容器の使用が推進されます。

政府は今年11月に代替え製品の製作、使用、そして廃棄を練るプロジェクトを開始し、来年2022年中には具体的な計画を発表をする予定です。
このプロジェクトには研究所、ビジネスグループ、コミュニティ、マオリ機関などの参加が見込まています。
政府、事業主、科学者、一般消費者を含んだこのプロジェクトには5億ドルの予算が計上されています。

尚、現時点では、使い捨てカップ、ウエットティッシュ、冷凍・低温保存製品や家具などの輸送時に使うポリエステルは対象外で、ウェット・ティッシュについてはグリーン党から批判が出ています。

一方で、パーカー氏は、NZ人の一日当たりの個人プラスチックの消費量は159gと世界でも率が高い国だが、2019年に店舗のビニール袋廃止に成功したことから、更なるプラスチック消費量の減少も出来るはずと楽観的に捉えています。

( 出典 : https://www.stuff.co.nz/national/125574062/new-zealand-to-ban-a-raft-of-singleuse-plastics-by-2025 ) 

  ヨーロッパ の取り組み

EU (European Union : 欧州連合 ) では、長年に渡りヨーロッパの海岸に堆積する使い捨てプラスチック廃除に向けて大改革がすでに始まっており、この7月からパッケージとしてのプラスチックの製造販売が禁止されています。
2019年に発令された使い捨てプラスチック指南が実行に移されたものです。

今回の法令により、プラスチック製の綿棒、カトラリー、皿、ストロー、飲食品の容器に加えて、分解可能な (  oxo-degradable ) ビニール袋も、マイクロプラスチック粒子として地球上海中に残留するという理由で廃止されています。

レストランやカフェでは、代わりに竹やセルロース、別の分解可能なカップやストローが使用されます。

また、EU 加盟国の中には、更に踏み込んで独自に取り組んでいる国もあります。
その顕著な例がフランスで、2020 年サーキュラーエコノミー法案(循環型経済:廃棄されていた製品や原材料などを新たな資源として、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組み 、および廃棄物封じ込み ) を発令し、ほとんどの野菜や果物の包装、ティーバッグ、キャンディやキッズメニューで提供されるプラスティック製のおもちゃを廃止しています。
また、イタリアやベルギーのように、プラスチック税を上乗せして消費者のプラスチック製品購入を削ぐ国もあります。

 ● ペットボトルは対象外? 

地球上で一日当たりの消費量が13億とも言われるペットボトルは対象外で、今後も継続して製造販売されます。
代わりに、リサイクル率の向上が掲げられています。

石油を原料とするポリエチレンテレフタレートと呼ばれる樹脂で作られているペットボトルは、新しいボトルや包装繊維などに再使用できる少ない製品の一つです。
が、実際にはヨーロッパにおけるリサイクル回収率は65%のみ、残り35%は分解されるまで数百年も地球上に堆積されています。

この為、今回の法令で2029年末までにEU全体でペットボトルのリサイクル率を90%まで改善することを目標としています。また、2025年迄に、ペットボトルの製造に最低25%のリサイクル材を使用するとしています。

更に、ペットボトルの製造販売会社は廃棄物清掃費用を支払うほか、製品のパッケージにプラスチック汚染と正しい処分の方法について説明する義務が課せられています。

 ● プラスチック代替え素材

今回の動きには、加工天然高分子や、化石燃料、化学原料を成分とするプラスティック製品が対象で、天然高分子素材は含まれていません。

化学加工されてない天然高分子素材の製品は地球に優しい製品として見なされています。
その一例として、ビスコースの元である再生セルロースが再び注目を浴びています。

再生セルロースは地球上で最も豊富なバイオポリマー(生物高分子)で、頑丈で透明な上に完全に分解可能、また不浸透性です。油原料を主成分とするプラスチックに代わるまではフィルムやシートの原料として用いられ、食品の包装に長く使われていました。

再生セルロースの他に、分解可能で生産コストが低くまた育成が早い竹も、カトラリーなどの素材として用いられています。

© Marco Verch Professional Photographer via Flickr

更に、フランスやベルギーのように、 ” greenwashing”と呼ばれる 環境保護に取り組んでいると世間に偽ることを防ぐため、 “biodegradable”( 分解可能 )のシールを製品に貼る事すら禁じる国もあります。

 ● タバコのフィルター

1年間の投げ捨て数が5兆にも上り、地球で最も多いゴミであるタバコのフィルターは、アセチル・セルロースが成分であるため、分解に長い時間を要します。

© Bernfried Schnell via Pixabay

プラスチック製のフィルターは今回の廃止項目には含まれおらず、全面廃止になるには、2027年の対象リスト改定時を待たないといけません。
代わりに、製造業者はタバコとパッケージに環境問題を説明することが義務付けられています。

一方で、一時的な解決案として民間団体が地球環境に優しいフィルターを開発中です。
水溶性の自然繊維素材のフィルターが登場するのも時間の問題かと思われます。

 ●  パンデミック・プラスチック

現在のパンデミック中に日常的に使われているプラスチック製のマスクや手袋、またそれらのパッケージも陸と海洋中の廃棄物として、エコシステムに害を及ぼしています。

この使い捨てプラスチック廃止令では医療用品も対象外となっているため、代替え製品を求める声が高まっています。

   あとがき

このようにニュージーランドは、ヨーロッパ諸国に比べるとプラスチック廃止に向ける取り組みが遅く具体的な策はこれから構想されている状態で、実現にむけてはまだまだ時間がかかりそうです。

ですが一旦廃止となれば、ニュージーランドのことですから、全国民の間で素早く遂行されるのではないかと思います。

ちなみに日本では、今年に入り「プラスチック資源循環促進法案」が閣議決定されています。
この法案はプラスチック使用製品の設計から廃棄物処理に至るライフサイクル全般における循環を促進するのが狙いです。
プラスチックそのものの廃止までにはほど遠い道のりではないでしょうか。

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1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。