5月22日に発表されたニュージーランドのBUDGET ( 国家予算 ) 。
今年で2回目となる連立内閣による国家予算組みでは、既存の政府プログラムや制度の大幅な削減や変更が行われています。
その中で目玉である、kwi saver (キウイ・セーバー)の変更点と、その背景にある政府の意図について詳しく解説していきます。
ニュージーランドに永住している方は、どうぞ最後までご覧下さい。
1. はじめに
Kia ora
今年の予算組では、政府は年間平均13億ドルの純新規運営費を投入します。これは67億ドルの新規運営費と53億ドルの節約額で構成されています。
その53億ドルの節約はどこから来ているのでしょうか?
一つは高校教師など女性が多い職種の賃金を男性主体の職種への引き上げ請求の取り下げです。そして今回の発表で、 kwi saver(キウイ・セーバー)も国家予算の節約の対象であることが明らかになりました。
政府は国民のためと言っていますが、実際のところはどうなのでしょうか?

2. キウイ・セーバーとは?
そもそもキウィ・セーバーはどういう仕組み?と思っている人のために、ここでキウィ・セーバーについて簡単に説明します。
∴ アウトライン
キウィ・セーバーを簡単に説明すると、老後の資金準備として個人が自由に積み立てを行う制度です。
もう少し具体的に言うと、所得の一部を長期間にわたり積立をしながら貯蓄を増やしていきますが、面白いのは政府や勤務先が積み立て金の一部を負担していることです。
また、銀行預金と異なり、積立金はプロバイダーという民間業者が株、不動産、債券等に投資し運用します。
65歳時に政府から支給される年金とは別で、国民の貯蓄率を上げ、退職後の生活や家を買うための購入補助を目的に、2007年労働党政権によって設立されました。
キウイセーバーへの加入は任意で、65歳未満でNZに在住する市民や永住権保持者は誰でも加入できます。つまり65歳以下であれば、日本人永住者も加入できるということです。
∴ メリット
- 本人の給与の3%(任意で4%、6%、8%選択可)が天引きで積み立てられるだけでなく、会社も給与の3%を追加で積み立てます。
- 年間積立額が$1,043以上で加入期間が1年以上であれば、毎年$521を上限に政府も積み立てます。
- 原則的に65歳になるまで引き出せませんが、初めて家を購入する際の資金として使うことも’できます。(「ホームスタート」制度)
と、繰り返しになりますが、本人とそして会社と政府が積み立てて老後に備える制度ということになります。

3. 2025年国家予算組みでの変更点
その2007年から運用されていたキウィ・セーバーのしくみが2025年のBUDGET ( 国家予算)で改正されました。
変更点を簡単にまとめると、
- 政府の積立額が現在の1ドルにつき50セントから25セントに半減。
これにより年間の最高額521ドルが260.72ドルに削減
また、年収18万ドル以上の人は、7月から政府積立金が一切なくなる - 個人の最低積立額は段階的に変更され、来年から給与の3.5%、そして2028年4月には4%となる
希望すれば3%のままにしておくことも可能 - 16歳と17歳の若者は7月から政府積立の支給を受けられるようになり(現在は対象外)、雇用主は積立額と同額を拠出することが来年から義務付けられる。
- 政府はこれらの変更を個人向けにカスタマイズすることに力を入れており、ニュージーランド国民の生涯にわたる貯蓄への影響を示す計算ツールを導入する予定。
つまり、ある程度の時間労働する人は政府からの積み立てが無くなり、その代わり自己負担額が増えるという訳です。

4. 変更の背景
どうして政府からの積み立てが無くなり、自己負担額が増やされているのでしょうか?
勿論それは、国家財政の節約を見込んでいるからです。
政府は4年間で24億6000万ドルの節約を見込んでいます。
この2025年BUDGET ( 国家予算)を発表したニコラ・ウィリス財務大臣は、
「これらの変更により、新しい4%のデフォルト率で拠出するキウイ・セーバーの貯蓄額は、現在の3%のデフォルト率で拠出する場合よりも速く増加します。これにより、65歳時点での受け取り額が増加し、キウイ・セーバーを利用して初めて住宅を購入する際に、より多くの頭金を受け取ることができます」「キウイ・セーバー貯蓄の増加は、ニュージーランドで投資可能な資金プールの拡大にもつながります。 現在キウイ・セーバーの会員は300万人を超え、運用資産総額は1,118億ドルに上ります。加入者一人当たりの平均残高は3万ドルを超えています。」
と述べています。

5. あとがき
ウィリス財務大臣が言うように、キウィ・セーバー加入者が65歳の時により多くの額を受け取るには、各個人が3%よりも4%づつ積み立てたほうが良いのは当たり前です。
ですが、受け取るまでの期間、加入者は現状より1%多く支払う現実には全く触れられていません。ましてや政府の積立が継続されれば、受け取り額がもっと増えることも。
という訳で、ウィリス財務大臣の上記のコメントはただ単に国家予算を節約するための目くらませに過ぎないことは明らかです。
政府は予算を節約するために、議論することもなく尋常じゃない速さで賃金平等法の改正案を可決したことも忘れてはなりません。
尚、他の2025年BUDGET (国家予算)の項目について別の編で特集を組んで紹介しています。
↓ をクリックしてご覧ください。
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