ニュージーランドのジャシンダ・アダーン元首相の特集の第四弾として、2023年の辞任の真相、そして政界引退後の海外を中心とした活動を紹介します。
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1. はじめに
Kia ora
ジャシンダ・アダーン元首相は、その類い希れない政治手腕から一時期は政治界のprodigy (寵児)として、また在任中に出産した首相として世界中の注目を集めました。
ですが、コロナ・ワクチンの義務付けに対する反ワクチン派の反社会的な運動や、経済下落が引き金となり、2期目を満了することなく2023年1月に辞任と同時に政界から一切身を引いています。
日本でも、若くて美しい首相と人気があったアダーン元首相ですから、「どうして辞めたの?今どうしているの?」と疑問に思っている人は多いことでしょう。
そんな皆さんの疑問にお応えすべく、ジャシンダ・アダーン元首相の首相辞任の真相と政界引退後の活動を紹介します。
2. 首相辞任の真相
アダ―ン元首相が辞任を発表したのは2023年1月のことでした。
その前の年には、もう一期首相を勤めたいと言っていたのですが、
2023年の総選挙戦に向けて、労働党は新しいチャレンジに立ち向かうには新風が必要である。また、自身に役を続けるものが何も残っていなく、今後は家族と一緒に時間を過ごしたい。
と、記者会見の席で辞任を表明しています。
他の女性のロールモデルになるべく、愛娘をお風呂に入れるなど家族のために時間を割き仕事と家庭の両立を保とうとしていたことは有名ですが、それでも四六時中政治のことを考えていたといいます。
政治評論家は、
「アダーンは世界的によく知られた政治家であるが、国内では彼女と労働党の評判は落ちるところまで落ちてしまった。アダーンが次の選挙で勝つ可能性はあるが保障されていない。
さらに、若い女性であるということで余計な圧力がかかった。
元々首相に対する圧力は凄まじいものがあるが、それに輪をかけたようにソーシャルメディアで四六時中悪意に満ちたコメントが投稿がされ国民の間に憎悪観が生まれた。それまでの首相に対してはなかったことだ。
このことが直接辞任の引き金にはならなかったものの、アダーンというブランドに曇りが出来たことでは労働党を率いることは不可能として辞任」
と分析しています。
一方で世界中のリーダーからは、アダーンの辞任について、「政治家とはどういうものかという概念を変えた人にふさわしく、エゴにすがることなく引き際をわきまえ潔い」と称賛の声が上がりました。
3. その後の活動
政界から完全に引退したジャシンダ・アダーン元首相ですが、実は国際的に色々な活動を行っています。
ここでは数ある中から数例を挙げて紹介します。
⦿ アースショット評議会メンバーに就任
首相任務中のサスティナブルと環境問題解決に向けた活動が認められられて、2023年4月に、アースショット賞 ( Earthshot Prize)の評議会メンバーに任命されています。
アダーンは、アースショット賞主催者であるイギリス王室ウィリアム王子に賞の設立を提案した一人でした。
アダーンの評議会メンバーの任命にあたってウィリアム王子は、「彼女の奨励や助言はアースショット賞の成功に不可欠である」と述べています。
*アースショット賞(The Earthshot Prize)は、環境保護への貢献に対して、毎年5人の受賞者に英国王立財団から授与される賞。ケンブリッジ公爵ウィリアム王子、デイヴィッド・アッテンボローによって2020年に発足。2021年に最初に授与され、2030年まで毎年実行される予定である。各受賞者は環境活動を継続するために100万ポンドの賞金を受け取る。受賞者は、「自然の回復と保護」「空気の浄化」「海洋の回復」「無駄のない生活」「気候変動」の5つのそれぞれの分野で、ウィリアム王子とアッテンボローを含むアースショット賞評議会によって選ばれる。(出典:ウィキベテア)

⦿ クライストチャーチ・コール特使任命
同じく2023年、当時の首相であった労働党のクリス・ヒプキンズ ( Chris Hipkins ) から、*クライストチャーチ・コール ( Christchurch Call)の特使にも任命されています。
クライストチャーチ・コール ( Christchurch Call)は、2019年の5月に起こったクライストチャーチのモスク襲撃事件を受けて、アダーンの提起でアダーンとフランスのマクロン大統領が共同で議長を勤めるもので、インターネット上での過激派による活動を世界的に阻止する目的で、現在40以上の国が参加しています。
任命式のスピーチで、*Climate Change Response (Zero Carbon) Amendment Act 2019に向けて、ニュージーランドの閣僚や各政党が政党の縛りなく参加することを要請しました。
*2019年気候変動対応(ゼロカーボン)改正法 ( Climate Change Response (Zero Carbon) Amendment Act 2019 ) は、ニュージーランドの気候変動への対応に関する法律で、2050年までに温室効果ガスをゼロにすることを最終目標として、そのための「ステップストーン」となる措置を定めています。
⦿ ハーバード大学の特別研究員に
2023年ハーバード・ケネディ・スクール(Harvard Kennedy School:ハーバード大学の公共政策大学院)の特別研究員として招かれ、政治家や非営利団体、企業などのトップの人々の実践的なスキルを研究し、トレーニングを行いました。
また、同じハーバード大学で過激主義者によるインターネット上で犯罪を防ぐ研究機関の仕事にも携わっています。
翌年2024年には、大学のCenter for American Progressで次世代のリーダーを養成するプログラムの客員講師にも任命されています。
⦿ 叙勲
こうした環境問題やリーダーシップへの世界的な取り組み活動に対して、ジャシンダ・アダ―ン元首相は、イギリスのチャールズ国王の2023年度の King’s Birthday and Coronation Honours (ニュージーランドのおける国王の誕生と戴冠を記念する叙勲 )で、 Dame Grand Companion of the New Zealand Order of Merit (GNZM) というもっとも高い勲章を授かりました。
アダ―ン元首相は受賞後のインタビューで、
「とても光栄に感じるとともに謙虚な気持ちで受け止めており、これまで5年の間自身を支えてきた家族と元同僚が認められとも思っている。今後は他人への小さな思いやりを広めることに勤める」
と述べています。
受勲について詳細はこちらの特集をご覧ください。
⦿ 国連の「The Peoples Awards」受賞
叙勲の1週間後、今度はニューヨーク市にある国連財団による「We The Peoples Global Leadership Awards」の受賞者に選ばれました。
この世界のリーダーシップ賞は、毎年世界の舞台で大きな影響を与えた7人の個人または機関に贈られています。
リーダーシップ賞の内、アダーン元首相が受賞したのは、Champion for Global Change award(地球変革の模範賞)で、先駆的で共感的なリーダーシップ、女性の権利の擁護、気候変動との闘い、団結と平和の促進へのコミットメントが認められた結果でした。
賞の授与は国連財団のElizabeth Cousens(エリザベス・クーゼンス)会長兼CEOによって行われました。
尚、他の6人の受賞者には、TIME誌、詩人で活動家のアマンダ・ゴーマンらが含まれています。
The divisive former New Zealand PM will be presented with a global leadership award by the United Nations Foundation just weeks after her damehood.
— Rebel News Australia (@RebelNews_AU) November 22, 2024
MORE: https://t.co/AJFMEei7mA pic.twitter.com/cIahb2UaRc
4. 結婚
首相辞任後も華麗なるキャリアを積んでいるアダ―ン元首相ですが、実は2024年の1月に結婚しています。
お相手は10年来のパートナーでテレビのプレゼンタークラーク・ゲイフォード( Clark Gayford ) 氏です。二人には首相在任中に娘が生まれています。
2022年に結婚式を挙げる予定でしたが、自身が設けたコロナ禍の規制により延期され、ようやく2024年1月にホークス・ベイにある Craggy Range Wineryというビンヤードで挙式する運びとなりました。
友人がデザインしたアイボリーホワイト色のウェディングドレスを着たアダーン元首相は、70人近くの招待客の前で5分間の祝辞を述べています。
当時5歳の愛娘ニーブ(Neve)は、アダ―ン元首相の母親のウェディングドレスから作ったドレスを着たそうです。
また、食事の中ではあわびと鯛入りのパンがとても人気があったと言います。
結婚相手のクラーク・ゲイフォード氏のプロフィールや、二人のなり染めなどはこちらで紹介しています。興味のある方は↓をクリックしてご覧下さい。
5. あとがき
アダーン元首相は、首相時代よりももっとグローバルに社会に貢献していることが分かっていただけたかと思います。
今世の中は、特にアメリカ合衆国は自己の欲に駆られた動きが多い中で、アダーン元首相の思想がアメリカの学識者を初めとした社会で認められていることは喜ばしいですよね。
実はアダーン元首相は今年に入っても、本を出版したりオークスフォード大学で名誉学位を授与されるなどの活躍ぶりで、このブログを書いている最中にはイエール大学の卒業生の祝賀会のスピーカーに選ばれたとのニュースも飛び込んできました。
すべてはこの編で納めることができなかったので、今年2025年のアダーン元首相の動きについてはまた別に特集を組んで紹介する予定です。
ご期待のほどを!
Ngā mihi
wonderer