世界で一番幸せな国はやっぱりフィンランド。世界ランキング過去最低55位の日本が学べること

毎年3月20日に発表される『世界幸福度報告書』。今年2025年、第一位に輝いたのは予想通りに(?) フィンランドでした。なんと8年連続で首位です。

一方、ニュージーランドの順位は11位、日本に至っては55位という結果でした。

どうしたらフィンランド人のように幸せ感を高めることができるのか、フィンランドの人々の生活における秘訣を紹介します。

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フィンランドと言えば、美しい家具やムーミン、オーロラなどが有名で、日本人にはとても人気がありますよね。

フィンランドとニュージーランドのそれぞれの国の人口が550万人と似ているのでよく比較されますが、ニュージーランドにいる者としては、フィンランドは冬が寒くて暗い上にロシアに隣接しているのに世界一幸せな国であるとは、不思議に思えます。

フィンランドは教育熱心な国で福利厚生が整っていることは周知のことですが、他には一体どんな理由があるのでしょうか。
そこから、私たちも何か学べることがあったらいいですよね。

フィンランドについて語る前に、フィンランドが8年連続1位に輝いている「世界幸福度報告書」について簡単に紹介します。

「世界幸福度報告書」は、世界140カ国以上を対象に国民の幸福度をランキング化したものです。イギリスのオックスフォード大学がアメリカの調査会社と協力し、各国の社会的支援や健康寿命、汚職度、寛大さなどの要素が考慮されて採点されています。同報告書は国連が定めた3月20日の国際幸福デーに合わせて毎年発表されています。

「世界幸福度報告書」についてもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

「世界幸福度報告書」でフィンランドが8年連続で1位に輝いている理由として、他者や組織の信頼」、「将来への楽観主義」、「友人や家族からのサポート」が高いことが挙げられます。

そしてその背景には

  • 充実した社会福祉制度や自然との深いつながり(サウナ文化も含む)
  • 汚職が少ない
  • 教育や医療の水準が高い
  • ワークライフバランスの重視
  • 暗くて寒い冬で知られているが、実は夏の日が長い

と、言われています。

@AndyAron(c) via Flickr

いよいよ本題に入ります。

フィンランドの人々が世界でもっとも幸せ者である理由や背景はわかりました。では、どのようにしてその幸せ感を培っているのでしょうか。

他国からスカンジナビアの国々に移住した人々は「世界幸福度報告書」の結果は、フィンランドの人々の幸せ度というよりも満足度の高さが表れていると言います。それも、瞬間的な喜びでなく人生に対する一定で深い満足感である。そして、裕福さや経済的な成功ではなく、他人や社会の中の信頼関係に基づいた心理面が大きく影響していると。

そのフィンランド人の幸せ感に大きく影響している精神、心理面について分かりやすい記事が Forbes に掲載されていたので、要約して紹介します。

その記事では、誰もが人生に対しもう少し幸せで、そして満足感を得ることができるようにと、フィンランド人や他のスカンジナビアの人に学ぶ人生の5つの教訓が挙げられています。

「フィンランド魂」を表す言葉として「Sisu(シス)」がよく使われます。このシスは、勇敢で忍耐強い姿勢と態度といった、フィンランド人の精神力や内面的な力を表します。そして、このフィンランド魂シスにのっとり、常に狙いを定めたり、物質欲に駆られるのではなく、本当に大事なものに焦点が当てられています。有名なフィンランドの家具がそうであるように、人々の生活も実用的でシンプルです。そうしたシンプルさの中で本物の喜びが生まれるというわけです。

北欧には古くから守られてきた、自然を自由に利用・享受できる権利 “everyman’s rights”(自然享受権)が存在し、土地の所有、非所有に関わらず、誰もが自由に森や湖にアクセスできる、つまり自然をみんなで共有して楽しむことができます。
このため、屋外で過ごすことはフィンランド人の精神に深く根付いており、冬のまっさ中でもスキーやアイススケートに興じたり、オーロラを見たり、サウナの後に凍り付いた湖に飛び込んだりと、寒い冬をただやり過ごすのではなく、冬ならではの時間を十分に楽しんでいます。

休息は、仕事が成功したことへの報酬としてではなく人生の一部だと捉えられています。
また、フィンランドで使い慣れた言葉「沈黙は金なり、おしゃべりは銀なり」通り、会話をせずに沈黙を楽しむ習慣があります。国民の大多数が週に最低一回は入るというサウナ文化がその例で、サウナではもっぱら熱と冷気にあたりながらリラックスしたり考えを巡らせるだけの、ダウンタイムとして優先されています。

世界で最高レベルとして賞賛される教育制度。その背景には、容赦ないテストや延々と続く授業の代わりに、質と創造性、クリティカルシンキング( 現状の課題・問題が何か、その事象を「批判的」に捉えて、本質的な課題は何か、それに対する仮説・回答は何かということを網羅的に、かつ深く考え抜く思考法)に重点が置かれています。
そして共同学習方式をとりながら、生徒一人ひとりのスペースで進めることができ、その結果として、国民全体の中で知識を蓄える為の生涯学習や自己啓発が重んじられています。
生涯学習や自己啓発は、幸せに満ちた、そしてバランスの取れた社会の鍵となる要素と言われています。

世界で最も腐敗の少ない国であり、社会や他人への信頼度が他に類がないほど高い国です。このような他を信頼することは即興では生まれません。特に昨今の個人主義や他者との競争を風潮する社会では猶更です。信頼関係は時間をかけて構築されるものであり、コミュニティー活動に参加し、隣人を助けたり、ただ単に他人を取り合えず信じることなど、小さなことから育まれます。
すぐに世界を変えることはできないでしょうが、自身の観点を広げることで波及効果が生まれ、よりよい社会を構築することに貢献することができるでしょう。

(出展ttps://www.forbes.com/sites/davidnikel/2025/03/20/5-life-lessons-from-finland-once-again-the-worlds-happiest-country)

フィンランドの本題から離れますが、2025年の「世界幸福度報告書」のランキングトップ20カ国と、その特徴などを紹介します。

❖ ランキングトップ20

1位 フィンランド
2位 デンマーク
3位 アイスランド
4位 スウェーデン
5位 オランダ
6位 コスタリカ
7位 ノルウェー
8位 イスラエル
9位 ルクセンブルク
10位 メキシコ
11位 オーストラリア
12位 ニュージーランド
13位 スイス
14位 ベルギー
15位 アイルランド
16位 リトアニア
17位 オーストリア
18位 カナダ
19位 スロベニア
20位 チェコ

❖ 特徴

アメリカ合衆国は過去最低の24位と、10年前の11位から大きく転落しています。特に若者の満足度の低下が顕著で、家族や友人からのサポート不足、人生の選択の自由度の低さ、生活水準への悲観的な見方に加え、一人で食事をする人が増えていることが要因とされています。
逆にコスタリカが6位、メキシコが10位と、中米の2カ国が初めてトップ10に入っています。また、リトアニア(16位)、スロベニア(19位)、チェコ(20位)といった中東欧諸国が引き続き順位を上げています。

© Ferdous Hasan

❖ 日本

ニュージーランドは2016年から2020年までは8位、以降は少しづつ順位が下がり今年は12位、そして日本はというと、過去最低の55位でした。
日本では、単身世帯の増加と高齢化が原因で一人での食事が増加していることが挙げられます。世界的に若年成人の17%が家族や友人を含め親しみを感じる人がいないと回答していますが、中でも日本は30%以上が社会的孤立を訴えています。韓国にも同じような傾向が見られます。

2022年ですが、ニュージーランドと日本の幸福度ランキングの差は他人への寛容度の違いを特集して紹介しています。こちらも併せて読んでみて下さいね。

日本の順位が55位とアメリカ合衆国よりもかなり低く、しかも若者の孤独化が進んでいるとは深刻な状態かと思います。
ニュージーランドに住んでいる者として傍から見れば、日本人は、特に若い人はスマートで何でも揃っていて良い暮らしぶりをしているように見えるので、驚きです。

家具や装いではなく、取り入れるべきものはフィンランド人の生活習慣ということになるのでしょうか。
このブログが少しでもお役に立てば幸いです。

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ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。