ニュージーランド待望 オーストラリア市民権取得が簡単に!

Kia ora 

ニュージーランドが長年待ち望んでいたオーストラリアの市民権が簡単に取得できるようになりました。

連日連夜メディアを賑わしているこのオーストラリアの新しい移民法について、その詳しい内容やこれまでの経緯、それからオーストラリア市民権のメリットなどを紹介します。

    オーストラリアの新しい移民法とは?

ニュージーランドパスポート保有者のオーストラリア市民権取得に関する移民法が改正されます。

移民法改正後は、オーストラリアに Special Category Visaで4年以上住んでいるニュージーランド人は 、永住権を持たなくても直接オーストラリアの市民権を申請できるようになります。

この新しい移民法は7月1日から執行されます。

また、対象はニュージーランド市民のみです。他の国に適用される予定はありません。

    オーストラリアの市民権のメリット

市民権を取得すると次のようなメリットがあります。

  • 選挙権の取得
  • 医療制度の利用
  • 家族扶養手当て、失業手当て等の福祉の適用
  • 政府機関や防衛省に従事可能
  • 犯罪者がニュージーランドに強制送還されない

と、オーストラリア人と全く同じ権利が保障されます。また、ニュージーランドの両親の元に生まれる子供は自動的に市民権を得ることができます

    移民法改正までの経緯

 実は20年ほど前までは オーストラリアに入国したニュージーランド人には自動的に永住権が与えられていました。

が、2001年にハワード政権が移民法を改正し、永住権ではなく special category visa と呼ばれる特別ビザが与えられるようになりました。この特別ビザでは、ニュージーランド人はオーストラリアに住み仕事に就くことができますが、医療や福祉の適用に制限があります。

全ての権利を得るには、まず永住権それから市民権取得と二段階の手順を踏まないといけません。加えて永住権の取得自体が難しいため、多くのニュージーランド人が市民権を得ることなく特別ビザのままで住んでいるのが現状です。

このため、ニュージーランド政府は2001の改正直後から、オーストラリア政府に変更を求めて働きかけてきました。

具体的に話が進んだのは、去年2022年に就任したばかりのAnthony Albanese ( アンソニー・アルバニー )オーストラリア首相と、ニュージーランドのジャシンダ・アダーン元首相が協議したのがきっかけと言われています。
アルバニー 豪首相と、ニュージーランドのジャシンダ・アダーン元首相は共に労働党に属し旧知の仲だそうです。

尚、今回の新しい移民法はニュージーランドのChris Hipkins( クリス・ヒプキンズ ) 現首相のオーストラリア訪問に合わせて発表されました。

    両国の政府のスタンス比較

それではそのオーストラリアのアルバニー首相とニュージーランドのヒプキンズ首相のコメントを見てみましょう。

 

🦘 オーストラリアのアルバニー首相 (写真右)

「これにより、オーストラリアに住むニュージーランド人が扶養家族補助や失業手当など、オーストラリア市民と同じように恩恵にあたることができることを喜ばしく思う。」

🥝 ニュージーランドのヒプキンズ首相 (写真左)

「何十年ぶりかのニュージーランド人の権利の改善を手放しで歓迎している。NZ政府はここ数年オーストラリア政府に働きかけていたが、移民法改正はオーストラリアが独自に決めたものである」「オーストラリアの市民権を得てもニュージーランド人はニュージーランドの市民である。市民権の重複はニュージーランドにとってロスではなく、双方の国の関係を更に親密にするものである

オーストラリアのClare O’Neil(クレア・オニール)内務省大臣のコメントもついでに紹介します。

現在の不公平な法律が成立した当時は、 大勢のニュージーランド人がオーストラリアに入国するもののそのほとんどが短期間で帰国しオーストラリアに永住しないので、理に叶うと思われていた。が、現実はオーストラリアに移住したニュージーランド人はひどい扱いを受けており、隣人であるニュージーランド人をこのように扱っていたのは不公平である。」

と、ニュージーランドだけではなくオーストラリア側でも新移民法は歓迎されているようです。

    ニュージーランド人の反応

さて、このオーストラリアへの新移民法はニュージーランド社会ではどう受け止められているのでしょうか?

    一般市民の反応

オーストラリアの外務省の発表によると、現在オーストラリアには  670,000 人のニュージーランド人が住んでいるそうです。その内380,000人は現在の法律が施行された2001年以降に入国しそのほとんどが市民権を持たず、特別ビザのみ保有しています。
一方ニュージーランドに移住している70,000人のオーストラリア人は、ニュージーランド人と同様に選挙権を持ち、医療や福祉の恩恵を得ています。

このため、多くのニュージーランド人が 今回の市民権取得の改正は公正であると喜んでいます。

    反対派の意見

今回のオーストラリアの移民法改正について、ニュージーランドの経済学者が「政府や企業は雇用者がオーストラリアに流出することを防ぐ歯止め策を打たなければならない」と警告しており、各メディアでもこぞって懸念する声が報道されています

特に看護師のオーストラリア移住の要因が増えたも同然で、現在深刻な看護師の人手不足の状態に更に拍車がかかると予想されています
現在およそ5,000人のニュージーランドの看護師がオーストラリア国内のポジションに登録していると言われています。その理由として看護師の平均年収 が96,000 NZドルと、ニュージーランドに比べて 24,000 NZドル上回る上に、専門分野に特化したポジションに就いてさらに高い収入や特別手当を得られることが挙げられます。

尚この看護師不足は世界的な問題で、オーストラリア政府も積極的に改善を試んでいます。
ちなみにオーストラリアにおけるニュージーランド人の看護師は全体の10%を占めるそうです。

看護師の次には医師、それから教師のリクルート活動が活発になっており、IT業界にも波紋が広がると見られています。

このため、数年するとこの新しい移民法はニュージーランドでは裏目となり、深刻な経済状態になるのではと危ぶまれています。

ニュージーランドのヒプキンズ首相は、


「元々高い賃金や暖かい気候を求めて多くのニュージーランド人がオーストラリアに移住しているので、オーストラリアの市民権取得が簡単になったという理由だけでオーストラリアに移住者数が極端に増えることはない」

と客観視していますが、どうでしょうか。オーストラリアは人材不足を解消する為に、ニュージーランドの移民規制を緩くしたとも解釈できますよね。

 オーストラリアに移住する理由

ではニュージーランド人は何を求めてオーストラリアに移住するのでしょうか?

一番に挙げられるのは就職口が多いことです。オーストラリアの人口が2,500万人とニュージーランドの5倍ですから当然のことと言えるでしょう。

次に高い給与が挙げられます。去年2022年の11月時点でのオーストラリア年間の平均収入は102,500 NZドルでした。 77,844 NZドルのニュージーランドに比べて25,000 NZドルも高いのはやはり魅力的です。

そして暖かい気候です。説明する必要はありませんよね。

その他に安い住宅と言われますが、実際に思ったほど安くなかったという話もちらほら聞きます。一年前の住宅値を例にすると、オーストラリアの住宅地は825,500NZドル、ニュージランド840,000NZ ドルと幾分安いです。が主要都市のシドニーとオークランドを比べた場合、シドニーは1,220,000NZドル、オークランドは1,120,000NZドル、またシドニーのアパートメントタイプを除くと1,540,000NZドルと値段が跳ね上がります。
ですので、住宅の値段はオーストラリアが安いとは言えません。
物価についても同様です

*ニュージーランドの最近の住宅事情についてはこちらを。

 

   あとがき

オーストラリアで永住権を申請するには何十種類の申請カテゴリーがあり、またそれぞれが専門知識がない一般人には理解しがたく、取得も難しいと言われています。
このため一般的に簡単であると言われているニュージーランドで永住権、そしてその5年後に市民権を取得してオーストラリアに移住するケースが多々あります。

オーストラリア社会に興味がある方は、オーストラリアの人種差別社会についての記事も面白いかと思います。


機会があればニュージーランドの永住権取得や移民についても書きたいと思っています。
ご期待のほどを。

Ngā mihi
wonderer

(参考資料)

https://www.google.com/amp/s/amp.cnn.com/cnn/2023/04/22/asia/australia-citizenship-new-zealanders-intl-hnk/index.html
https://www.nzherald.co.nz/nz/politics/australia-citizenship-change-fears-of-exodus-of-kiwis-searching-for-better-pay-and-conditions/DNNA5BBTH5CIFEI75TGHPWR6YI/
https://www.nzherald.co.nz/nz/is-the-new-pathway-to-australia-paved-with-gold-for-kiwis/54S46GV6QRBWPEJZFYKRGJZBJM/ https://www.google.com/amp/s/amp.theguardian.com/world/2023/apr/21/new-zealanders-to-gain-faster-pathway-to-australian-citizenship-under-major-changes-to-immigration-rules

ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。