Kia ora
先週ニュージーランド国内のメディアでは「NZの女性は今年の残りの日数をただ働き」と、繰り返し報道されていました。
リベラルな社会が特徴のニュージーランドではのっぴきならない話ですが、朝の人気テレビ番組でもメインの女性キャスターが「NZの女性は今年の残りの日数をただ働き」と不満を漏らすと、同調した男性キャスターが彼女がいつも行う天気予報を代わって行ったほどです。
どうやらこの「NZの女性は今年の残りの日数をただ働き」には、 Pay Equity ( 男女平等賃金 )問題が原因のようですが、実際にNZの男女間の賃金格差はどうなのか説明します。
「年内残り日数を女性がただ働き」の真実
A non-profit group is raising awareness of the gender pay gap through a striking faux announcement: they are out of office until next year.https://t.co/ySqmeHOk0Z
— HRD New Zealand (@HRDNewZealand) December 7, 2021
どうして、ニュージーランドの女性は年内の残り日数をただ働きしていることになるのか、調べてみました。
すると、現在のNZの男女間の平均賃金格差は 9.1% で、その9.1%の給与を日数に換算すると、11月29日から女性はただ働きしていることになるそうです。
上述の朝のテレビ番組の女性ニュースキャスターが嘆いているのも当然と言えるでしょう。
上記の新聞記事を書いたジャーナリストに至っては、勿論女性ですが、“I am out of the office until January 1, 2022.” 「 来年まで席を外しています と、どれほどメイルの自動返信を設定したいことか 」と述べているほどです。
NZ の男女賃金格差に対する状況
▼ 歴史的な背景
今でこそ男女の賃金を同じとする PAY EQUITY という言葉をよく耳にするようになりましたが、一昔前までは、ニュージーランドでは男性と女性とでは給与形態が異なり、また女性の就業が禁じられている職業もありました。
1972年に Equal Pay ( 男女平等賃金法 ) に続いて差別禁止条例が制定されると、女性の給与形態は改善されましたが、それでも女性の給与は男性より低く、男性と違う職業やレベルの仕事に就く状況は変わりませんでした。
2017年の総選挙で労働党が政権を握り、*ジャシンダ・アダーン首相は Equal Pay ( 男女平等賃金法 )の改定を公約。2020年11月に法が改訂され、従業員や労働組合は雇用主との間で男女平等の給与体系について直接交渉できるようになりました。
“Labour will prioritise equal pay for our mental health workers” @nzlabour #VoteEqualPay @jacindaardern pic.twitter.com/kjDBPBycta
— Marja Fully Vaxxed Lubeck MP (@MarjaLubeck) August 12, 2017
*ジャシンダ・アダーン首相の詳細についてはこちらを。
▼ 男女間賃金格差の要因
ある調査によると、男女間の賃金格差の要因に、教育や職業の選択、年齢、仕事のタイプ、家族構成などが絡んでいることが明らかになっていますが、これらの要因を取り除いたとしても、男女間の賃金にギャップが生じていると言われています。その理由に、偏見や差別に基づいた態度や憶測が背景にあることが挙げられています。
▼ 現状
現在の男女間の賃金格差は9.1%と書きましたが、人種別にみても同じ男性でも白人とマオリ、パシフィック系の人種の間でも賃金格差があります。一番低いのはパシフィック系の女性で、白人男性との間のギャップは27%にもなります。換算すると白人男性の時給は32.60NZドルに対し、パシフィック系の女性の時給は21.70NZドルになります。
その一方で、2,000年に全国的に調査が始まった当時は、男女間の賃金格差が18.6%であった公務員については、2020年に9.6%、そして今年は8.6%まで改善されています。
また、1,000人の従業員を抱える飲料生産王手会社 Lion 社では、賃金格差は現在3.2%であり、企業としての取り組みの結果さらにこの差が縮まる傾向にあります。
Pay Equity 推進派によると、現在の法律は女性の数が圧倒的に占める産業のみ特化し、若い年齢層が占めるホスピタリティ業界の年齢による賃金格差を是正する必要があるとしながらも、ニュージーランドはワイタンギ条約で人権擁護が保証されているため、他国に比べ進んでいると楽観視しています。
世界の動向
ニュージーランドでは男女の賃金格差は9.1%ですが、他の国の状況は実際どうなのでしょうか?
今日の社会では、世界的に企業は統計を取って公表することが義務付けられており、それが賃金格差の縮小につながると言われています。
その例としてヨーロッパの企業では統計が発表されるまで男女間の賃金格差はないと信じて疑わなかった企業があり、フィンランドでは実に半分以上の企業が該当したそうです。
ニュージーランド以外にはオーストラリア、アイスランド、スウェーデン、デンマークが積極的に取り組んでおり、これらの国において男女間の賃金格差は10%台です。
ですのでニュージーランドはかなり進んでいる国かと言えます。
逆にOECDの統計によると、男女間の賃金格差がもっとも大きい国は韓国で34.6%、ついて日本が24.5%です。日本はワースト2位に位置していますが、その差が縮まる様子がないと専門家に指摘されています。
あとがき
ニュージーランドで働く女性 にとって、9.1%の男性との賃金格差は ショッキングなことですが、こうして世界と比べてみると、NZはそれでも女性が働きやすい国だということがわかりました。
私と同じように安心した方は多いのではないでしょうか。
それに比べて、日本では男女間の賃金格差の開きは大きいだろうとは予想していましたが、その差が25%で、しかもその差が埋まる見込みも立ってないととても残念なことです。
何とか日本の女性の政治家の皆さんには頑張っていただきたいものです。
Ngā mihi
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