ニュージーランド航空 乗客の体重を計る

Kia ora

先週の「ニュージーランド航空 乗客の体重を図る!」のニュースに驚かれた方は多いのではないでしょうか。

かくいう私もその一人で、ニュージーランドに限って体重で人を差別するようなことは絶対にないはず!と息巻きながら、このニュースの真相を追ってみることにしました。

体重測定の真相は?

先週、ニュージーランド航空は、国内線のフライトに搭乗する乗客の体重測定を行いました。
ニュージーランド航空は、1940年に前身の会社が発足、1965年に現在のニュージーランド航空となり、ニュージーランドのフラグキャリア ( 国を代表する ) 航空会社として、海外からも高い評価を得ている航空会社です。
そのニュージーランド航空に限って何故?と、思わず耳を疑った人は少なくないかと思います。

ニュージーランドの人気キャスター、ヒラリー・バリー ( Hilary Barry ) がたまたま国内線のフライトに搭乗する際にこの体重測定に出くわし、 ” OMG ”  から始まるさすがに驚きを隠せないコメントをツイートしました。

が、このツイートにもあるように、体重測定は調査目的で行われたとのこと。
航空会社の規則として、5年ごとに乗客の体重と手荷物の重さを図ることが義務付けられており、ちょうど今年がその調査の年にあたったということです。

ヒラリー・バリーのツイートに、実際に体重測定を経験した他の乗客が「体重計に乗った時にスタッフに自分の体重を聞いたが教えてもらえなかった。スタッフにも体重計の目盛りの数字が見えないようになっていた」とコメントしており、空港では決して乗客が恥ずかしい思いをすることのないように配慮がとられ、体重測定はスムーズに行われたようです。

ニュージーランド航空のコメントによれば、「 安全でなおかつ効率の良い飛行を目指し、飛行機の機体の重量やバランス、それから燃費を計算する一環として、乗客やフライト・アテンダントの体重や機内持ち込み手荷物の重量を測る」ことが、この調査目的だとか。
そして、計ったデータは匿名で集められ、スタッフや他の乗客にはわからないようになっているほか、体重測定はあくまでも乗客の任意に基づいたもので拒否することもできるそうです。

実際の重さは?

では気になる実際の乗客と手荷物の重さはどれ位なのでしょうか?

2003年にイギリス民間航空局 ( Civil Aviation Authority [CAA]) が発表したニュージーランド人15,000を対象とした調査結果では、乗客の体重と手荷物を合わせた重さは85.4kgとしています。

そして、この調査結果に基づき13歳以上の乗客の手荷物を合わせた重さを86kgとし、大型飛行機が収容できる乗客数を計算しているそうです。

( 出典 : https://www.stuff.co.nz/travel/news/300276859/air-new-zealands-weigh-week-why-the-airline-is-weighing-passengers )

体重で航空運賃が決まる動き

これまで調査の為の乗客の体重測定について説明しましたが、イギリスなどの海外の国ではコストや燃料、それから排気ガスを抑える為に、数年前より体重測定導入が検討されています。

その理由に、現在の想定値 ( 男性88kg 女性70kg )ではなく、 実際の重量で機体全体の重量を計算することにより、給油する燃料を減らすことができ、その分コストと排気ガス削減につながるとしています。
実現化にむけて、預け入れ荷物のカウンター・チェックイン時、もしくはセキュリティーのボディ・チェックの際に体重測定する方向で、現在そのシステムを開発しているそうです。

そして肝心のイギリス国民の反応ですが、大多数の人が一定の体重を超えると超過料金を払うシステムに賛成しているそうです。

© tookapic from pixabay

あまり知られていませんが、すでにニュージーランドのお隣の国サモアでは体重測定が導入されています。
2013年 サモア・エア ( Samoa Air ) が、世界に先駆けセスナ機の座席料金を体重で決めるシステムを導入し、成功を収めています。
簡単に説明すると、座席料金は体重1㎏あたりにつきおよそ50円で計算され、乗客は座席を予約するときに体重を入力、そして搭乗の前に実際の体重を計ることになっています。
サモア・エアによれば、自分の体重を金額に計算すること自体が乗客に好評な理由の一つだとか。また子供連れの家族にはかなり得な計算になるらしいです。

 ( 出典 : http://www.stuff.co.nz/travel/news/9509629/Pay-as-you-weigh-airfare-a-success )

あとがき

ニュージーランドや日本でも、乗客の体重で航空運賃が決まる日が来る日はそう遠くないかもしれません。
体重を図ることで乗客が恥ずかしい思いをしなれば、航空運賃や排気ガスの削減につながることから、体重運賃の案に私も賛成です。

が、個人で飛行機を利用する場合は良いですが、ビジネスや報奨旅行など、乗客個人ではなく所属する企業などの団体が航空運賃を支払う場合は、どこまで体重が個人情報として守られるのか疑問です。
また、結果として差別などの問題が発生し、その団体や社会の道徳観を問うような事態になりうることも予想されます。

体重で航空運賃を導入するには、システムだけでなく社会道徳の面でも色々と考慮すべき点がありそうです。

Ngā mihi
wonderer

 

 

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1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。