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ニュージーランドでは先週 Mental Health Awareness Week ( メンタル・ヘルス啓蒙週間)が行われ、全国で様々な活動が行われました。
この編では、Mental Health Awareness Week ( メンタル・ヘルス啓蒙週間)について、それからこの機会にニュージーランドの自殺の状況について説明していきます。
メンタル・ヘルス啓蒙週間とは
Mental Health Awareness Week ( メンタル・ヘルス啓蒙週間)は1993年より始まり、今年2022年は9月26日から10月2日の間に開催されました。
このメンタル・ヘルス啓蒙週間はWorld Federation for Mental Health(世界精神保健連盟)加盟国150ヵ国の間で行われており、日本でも「全国労働衛生週間」の名で10月の第一週目に行われています。
Reconnecting with people, places to boost wellbeing this Mental Health Awareness Week https://t.co/zNd5yqftVD (With @mentalhealthnz)
— Newshub (@NewshubNZ) September 26, 2022
ニュージーランドの今年2022年のメンタル・ヘルス啓蒙週間のスローガンは、RECONNECT。 人や場所と再び繋がって元気になろうというものでした。
「過去二年間はパンデミックで厳しい状況に置かれ、自分にとって大切な人や場所から切り離されてしまっていると感じてしまうもの。この機会に音信不通だった人に連絡してみたり、思い出のある場所や自然に囲まれたスポットを訪れることで、元気になって幸福感を高め、健康になる」と主催者の願いが込められています。
(出典https://mhaw.nz/explore/about/)
背景
● メンタルヘルスの意義
メンタルヘルスは「心の健康」を意味します。 世界保健機関(WHO)では「自身の可能性を認識し、日常のストレスに対処でき、生産的かつ有益な仕事ができ、さらに自分が所属するコミュニティに貢献できる健康な状態」と定義しています。
● 世界の現状
世界的に若者の間ではメンタル・ヘルスを病んでいる人が増加しています。
世界では40秒に1人が自殺していると言われており、その内若者の自殺が約3分の1を占めています。また若い世代では自殺が2番目の死因になっています。
ニュージーランドの自殺の現状
ニュージーランドでは5人に1人が毎年精神疾患もしくは依存症を患っていると言われています。その中で自殺の状況のデータを挙げてみました。
- ニュージーランドの自殺の割合は、OECD(経済開発協力機構) 加盟国38ヵ国の中で真ん中である。アイルランドやイギリスより高いが、オーストラリアやアメリカ合衆国よりは低い。
- 2020から2021年の一年間の間の自殺者数は607人で前年度の2019/20年は628人、2018/19年は685人と、減少傾向にある。1996年に比べると20%の割合で減少している。
- 男性の数は女性の2倍である
- 人種別に見ると、人口10万人当たりの自殺者数は、2020/21年度は、マオリ17.6人、パシフィック系5.8人、アジア人6.5人、ヨーロッパ系11.8人 である。マオリ、パシフィック系、ヨーロッパ系の割合は年々低くなっている中で、唯一アジア人の割合は前年度の4.7人から増加している。
- 1996年から2016年の間では、15歳から44歳のマオリ男性の割合が最も高い。パシフィック系の年齢層では、15歳から24歳の割合が他の年齢層よりも突出している。
- 1996年から2016年の間、男性は26%の割合で減少しているが、女性の割合は変化していない。
- 2019年から2020年の間でもっとも高かった年齢層では25-29、30-34、 80-84歳である
(出典https://mentalhealth.org.nz/suicide-prevention/suicide-statistics)
ニュージーランドの若者の自殺(2015年のデータより)
人口全体に占める自殺の割合は、OECD(経済開発協力機構) 加盟国38ヵ国の中で真ん中に位置するニュージーランドですが、若者の自殺の割合はOECD加盟国の上位に入ります。
2015年と今から7年前のデータですが、若者の自殺の状況を拾い上げてみました。
- 15~24歳の人口10万人当たりの自殺者数は男性20.3 人、女性は13.2 人
- 15~24歳の死因に対する自殺の割合は男性29.6%を、女性の41.8 % を占める
- この年齢層では、OECD加盟国の中で男性は5位、女性はトップである
- 15~19歳の層では、人口10万人当たりの自殺者数は男性19.6 %、女性16.3 % であり、 OECD 加盟国のトップである
- 自殺の要因として、貧困、低い年齢層の妊娠、家庭内暴力、虐待、学校でのいじめが背景にあると考えられる
世界の状況(2020年)
ここでは一昨年2020年の世界の自殺の状況を紹介します。
OECD加盟国(経済開発協力機構)加盟国38ヵ国の中で最も自殺者数が多かったのは韓国で人口10万人辺りの自殺者数は23.5人、2位はリトアニアで21.6人、3位スロベニア、4位ベルギー、5位日本、6位米国でした。
現在韓国では10代と20代の自殺者数が大幅に増えています。日本では同世代の自殺が死因の1位を占め、OECDの中トップです。
あとがき
ニュージーランドの若者の自殺について最近の詳しい情報が出ておらず、2015年の古いデータの紹介となり心苦しいのですが、ぼんやりとでも状況がわかっていただければと思います。
この記事を書くきっかけになったのは、以前から読者の方に要望をいただいており、そして先週のメンタル・ヘルス啓蒙週間中に読んだ、娘(A子さん)を自殺で失くした親御さんの手記でした。
中国系の移民の両親の元に生まれたA子さんは、子供の頃から絵を描くのが上手で大学で建築士の修士課程を得ましたが、就職活動が上手く行かず躁うつ病にかかり自殺されたというものです。決してガリ勉タイプではなく、高校まではホッケー部のキャプテンを務め明るく友達も多かったと言います。
ニュージーランドでは他の人種においては自殺率が低下している中でアジア人の自殺率は上昇していると上述しましたが、まだその理由についてはっきりとしたデータは発表されていません。
ですので憶測ですが、もしかしたらA子さんはアジア人特有の子供への期待感が高い家庭で育ち、家族や周囲からのプレッシャーを強く感じたのかもしれません。
ニュージーランドでお子さんを持っている、それから将来家庭を構える予定の方への警笛となれば幸いです。
Ngā mihi
wonderer