人間に託された三つの知識の籠 : マオリ神話 ④

Kia ora

マオリ族の先祖を表現する人間の形をした像 、Tiki ( ティキ)。そのTiki ( ティキ) の手には必ずといっていいほど三本の指が彫られています。

この三本の指はマオリ神話の中の逸話の一つ、人間に託された三つの知識の籠を象徴します。

これからその三本の指に象徴されている三つの知識の籠について、詳しく紹介していきます。

はじめに

その昔マオリ人にとって彫刻 whakairo ( ファカイロ) は文字に代わる情報の伝達手段でした。それゆえ現在でも建物や入れ墨として身体に彫られている型式や模様には、その部族や先祖の特徴が表現されています。

マオリの彫刻が施された像には人や鳥、トカゲなど様々な形があります。 その中でTiki ( ティキ) と呼ばれる祖先を表す人間の像を見ると、ほとんどの像の手には三本の指が彫られていることがわかるかと思います。

この三本の指にはマオリ族の間に古くから伝わる神話が伝承されており、大空の神 Ranginui (ランギヌイ)から森林の神 Tāne Mahuta ( ターネ   マフタ ) が授かった三つの知識の籠を象徴しています。

マオリの神様 ランギヌイ、タネ

まずはマオリの人間像に施されている三つの知識の神話に登場するRanginui (ランギヌイ)とTāne Mahuta ( ターネ   マフタ )  について紹介します。

Ranginui (ランギヌイ): 空の神
空の神として大地の神 ( パパトゥアーヌクツ) とともに天地を作り、この世に生命をもたらしました。

Tane Maori God of the forest by Craig Dylke via Flickr

Tāne Mahuta ( ターネ・マフタ ) : 森林の神
父親の 空の神Ranginui (ランギヌイ)と、母親の大地の神 ( パパトゥアーヌク)がお互い絡み合うようにくっつき、空と大地の間には光がなく闇の状態であったため、二人の子供であるターネ ・マフタが二人を引き離し、地上に光が差し込み生命が宿るようになりました。

*ランギヌイとターネについてもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

3つの知識の籠とは

ターネ・マフタは空の神ランギヌイから三つの知識の籠を受付りに、12段階に分かれている天国の最上階まで登ったと伝えられています。

籠はマオリ語でkete (ケテ)と言います。そして、三つの籠は kete-aronui(ケテ・アロヌイ ) 、kete-tuauri( ケテ・トゥアウリ ) kete-tuatea( ケテ・トゥアテア ) と呼ばれ、それぞの籠には次のような知識が入っていました。

kete-aronui ( ケテ・アロヌイ )
人類に役立つすべての情報

kete-tuauri ( ケテ・トゥアウリ )
儀式、記憶、祈り

kete-tuatea ( ケテ・トゥアテア )
人類に危険な邪悪

尚、ターネ・マフタが天国で授かったのは三つの知識の籠だけではありません。 人間の生命力も天国で授かっています。神と人間の両方のみなもとを吹き込んで最初の女性 の形をした女性Hineahuone ( ヒネアフノネ) 造り、そのHineahuone ( ヒネアフノネ)が、人間の子供をもうけました。

マナイア(森の守護神)の三本の指

これまで人間の形の像の三本の指について説明してきましたが、森の守護神と言われる Manaia(マナイア)の像にも3本の指を見ることが出来ます。Manaia(マナイア)の三本の指については、人間の形の像とは別の解釈がありますので、併せて紹介します。

森の守護神である Manaia ( マナイア) は、頭は鳥を、身体は人間の形をしています。マオリ神話では鳥は霊界と俗世界を往き来し、人間に霊界からのお告げをすると信じられています。そのためマナイア像の三本の指は、誕生と生、そして死を象徴していると言われています。

あとがき

これまでマオリの人間の形の像と、森の守護神マナイアの像の三本の指にまつわるマオリ神話を紹介してきました。

実は3本の指にはもう1つ理由があり、それは彫るのに5本よりも3本の指が簡単だったからという味気ない説もあります。ヨーロッパから鉄が入ってくるまでは、彫刻はポウナムと呼ばれるグリーン・ストーンや貝や石を使って施されてましたので、簡単な3本の指を彫った後で、理由付けをしたということも充分にありえそうですよね。

ですが、マオリの彫刻や神話を知るにつれて、マオリ族の人間と霊界、そして自然が密接に繋がった観念を理解でき、とても興味深いかと思います。

マオリ神話に関する記事を下に挙げています。興味のある方はぜひ合わせてご覧くださ。。

Ngā mihi
Wonderer

ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。