『Taste of Things/ポトフ 美食家と料理人』フランスのグルメと大人の恋愛を堪能

Kia ora

ようやくニュージーランドでも『Taste of Things / ポトフ 美食家と料理人』が公開されました。
『Taste of Things / ポトフ 美食家と料理人』は、「フランスの食と映画の世界を堪能」、「二人三脚で美食を追求する一組の男女の料理への情熱と愛の行方を描いたグルメ映画」と紹介されていますが、それだけではありません。
往年の日本シネマに通じる人生観が語られています。
そして主演はあのジュリエット・ビノシュ。
お見逃しなく。


2023年製作/136分/G/フランス/歴史・恋愛ドラマ
原題:La Passion de Dodin Bouffant (The Pot-au-Feu)
原作 : マルセル・ルーフ
監督/脚本:トラン・アン・ユン
出演:ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・マジメル
配給:ギャガ
日本劇場公開日:2023年12月15日
受賞歴:第76回カンヌ国際映画祭監督賞受賞

フランスで有名な美食家と言われたブリア・サバランをモデルとして1924年に書かれた『美食家ドダン・ゴーファンの生涯と情熱』が原案。
1885年のフランス郊外の自然の中に佇むシャトーが舞台。
美食家として有名なドダンがメニューを考案し、そのメニューをウージェニーがシェフとして再現。二人が生み出す極上の料理は国中の美食家を魅了している。ドダンはウージェニーは美食家とその片腕のシェフとしての関係を続けて20年以上が経つが、料理だけでなく恋愛関係においても二人は強い絆で結ばれていた。
ある日ユーラシア皇太子の晩餐会に招待され絢爛豪華な料理でもてなされたドダンは、そのお返しとしてユーラシア皇太子にシンプルなポトフでもてなすことに決め、極め付きのポトフを創作しようとするが。。。

食を追求するグルメ映画やテレビ番組は沢山ありますが、この映画『ポトフ 美食家と料理人』ほど芸術性に富み綿密に作られた映画はないかと思います。美食を追求する姿勢や喜びに連なるように、微妙な大人の恋愛の甘さと悲しさが絶妙なバランスで展開されています。
人生における光と影が美しく、濃厚にそして繊細に描写され、まるで絵画のようです。

さすがフランス映画だと言いたいところですが、感情の起伏が抑えられた話と演技は日本映画にも通じるところがあり、日本シネマファンには受け入れられやすいのではないでしょうか。
トラン・アン・ユン監督は黒澤、小津監督に影響を受けたそうです。
なるほど納得が行きますよね。

主演のウージェニー役のジュリエット・ビノシュは、歳を重ねても若いときと全く変わらないみずみずしい演技で、この映画をますます魅力的にしています。
ビノシュにとっても、このウージェニー役は、ビノシュの魅力が最大に生かされた久々の当たり役ではないでしょうか。ビノシュファンにはたまりません。

評価は、★が5つあっても足りないくらいです。★★★★★

Trần Anh Hùng ベトナム出身、フランス の映画監督・脚本家。
1962年、ベトナムのダナンに生まれる。12歳の時にベトナム戦争を避け両親とともにフランスに移住。
大学で哲学を専攻するが、ロバート・ブレッソン監督の『A Man Escaped』に感化され映画製作に転向。オルセー美術館の書店で働きながら最高峰とされる専門学校で映画作成を学ぶ。
デビュー作の『青いパパイヤの香り』(1993年)で、カンヌ国際映画祭新人賞)とセザール賞新人監督賞を受賞、アカデミー外国語映画賞にもノミネートされる。1995年『シクロ』がヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞。しばらく休業した後に2008年から再びメガホンを取り始め2009年2月、村上春樹のベ『ノルウェイの森』を製作、翌年日本で公開された。2015年東京国際映画祭の審査員を務める。2023年、『ポトフ 美食家と料理人』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞。

© Dick Thomas Johnson

Juliette Binoche フランスの女優。1964年 パリに生まれる。父親はフランス人アーティスト、俳優、母親はポーランド人女優。4歳の時に両親が離婚し、妹と一緒にカトリック系の寄宿学校に送られ、学校の休みは祖父の家で過ごした。パリの芸術高校、そしてフランス国立高等演劇学校で演劇を学ぶ。1983年に映画デビューし、『ゴダールのマリア』『ランデヴー』などのフランス映画に出演し人気を集める。1988年に『存在の耐えられない軽さ』で米映画界に入る。1991年『ポンヌフの恋人』でヨーロッパ映画賞女優賞、1993年『トリコロール/青の愛』でヴェネツィア国際映画祭女優賞、セザール賞主演女優賞、1996年『イングリッシュ・ペイシェント』でベルリン国際映画祭銀熊賞とアカデミー助演女優賞を受賞。翌年にロンドンのウエスト・エンドの舞台に立つ。2000年の『ショコラ』でアカデミー主演女優賞にノミネートされる。2010年『トスカーナの贋作』でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞し、世界三大映画祭すべての女優賞受賞を果たす。河瀨直美監督の『Vision』と是枝裕和監督の『真実』にも出演。『ポトフ 美食家と料理人』で共演のブノワ・マジメルのパートナーだったことがあり、二人の間に女児を設けている。

映画『ゴーストインザシェル』の2017年のSF版では、ジュリエット・ビノシュのシーンもここニュージーランドのウェリントンで撮られました。エキストラで出演した私の友人が待ち時間にたまたまジュリエット・ビノシュと一緒になったところ、なんでもビノシュはかなりの日本びいきでそしてとても気さくに話しかけてきたそうです。
それを聞いて彼女の大ファンである私は、エキストラ役に応募しなかったことをとても悔やんだことを昨日のように覚えています。

ビノシュの映画の中で私個人が鮮明に覚えているシーンは、『イングリッシュ・ペイシェント』の後半で教会の廃墟でブランコにのって無邪気に笑うシーン、それから『パリ』で恋人の前で靴をコミカルに脱ぐシーンです。
そしてこの『ポトフ 美食家と料理人』の指輪を見つけるシーンです。

『ポトフ 美食家と料理人』、今年観た映画の中で『パーフェクト・デイズ』と並んで気に入った映画です。メガホンを取ったトラン・アン・ユン監督の作品は今回初めて見たのですが、ファンになってしまいました。これからユン監督の過去の作品を鑑賞しようと思います。

Ngā mihi
wonderer

ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。