「 ファーザー ( The Father ) 」感想:シネマファン必見

Kia Ora

今回のシネマ編では「ファーザー( 原題 :  The Father)」を紹介します。
( ニュージーランドでは4月中旬から劇場公開されています。) 
 

「 ファーザー 」は、認知症を抱える父親の視点で、時間と記憶が交錯し次第に混迷状態に陥る経過と、それに伴い揺らぐ娘との絆を描いた作品です。

今年の第93回のアカデミー賞では、作品賞などの6部門でノミネートを受け、主演男優賞と脚色賞を受賞しました。

☆「ファーザー ( 原題 :  The Father)」
2020年製作ドラマ/1時間37分/イギリス・フランス合作/言語:英語/日本配給:ショウゲート

 あらすじ

81歳のアンソニーはロンドンのお洒落なアパートに住み、好きなオペラを聴き悠々自適な生活を送っています。
が、実際には認知症を抱えており介護が必要であるにも関わらず、理不尽な理由をつけては介護人を次々に辞めさせてしまいます。

そんなアンソニーを心配し毎日訪れる娘のアン。ある日アンはパリにいる恋人と暮らすために、ロンドンから離れることをアンソニーに打ち明けます。思わず動揺したアンソニーですが、新しい介護人をことのほか気に入り、何とか落ち着いたかのように見えます。
その一方で、認知症の症状が次第に進み、ついには現在と過去の記憶が曖昧に交錯し幻覚を見る中で、記憶から葬り去られていた真実に向かい合うことになります。

 レビュー


認知症を抱える患者の家族が抱える問題として家族の視点で描かれたドラマが多い中、この「 ファーザー 」は、認知症を持つ本人の視点で描かれており、珍しいという意味でも興味深い映画です。

次第に症状が進む中で、事実と捻じ曲げられた記憶の境があいまいで混沌としている事を本人自身が悟った時、それは足元をすくわれたような状況に陥ったも同然で、本人にとって恐怖以外なにものでもありません。

その主人公の恐怖感が、オペラの悲痛な歌声にのってまるでヒッチコックの映画を観ているかのようにじわじわと迫っきます。

そして、時には無邪気でチャーミングングかと思えば、猜疑心に駆られた老人や泣きじゃくる子供に豹変する主人公を見事に演じ切ったアンソニー・ホプキンズ ( Anthony Hopkins ) には脱帽の一言しかありません。

あの年齢でセリフを覚えて演技しているだけでも一目置かれますが、もしかしたら自身もいづれそうなる可能性がある主人公を、しかも同じ名前と年齢の役をどういう気持ちで演じたのか。。。計り知れないところです。
が、その本人のアンソニー・ホプキンズ自身はあるインタビューで、「他界した自分の父親を演じとても簡単だった」と語っており、それが真の役者というものなのかもしれません。

このアンソニー・ホプキンズの演技は年齢のハンディキャップを感じさせることはおろか、むしろ満身創痍の演技で、映画史上に残る名演技と言っても過言ではないと思います。


そして、アンソニーの娘アン役を演じたオリビア・コールマン( Olivia Colman ) の演技もこれまた素晴らしい!の一言です。こよなく愛する父親の状態に心を引き裂かれ絶望に陥る娘の心情が、言葉を発しなくても目と眉などの些細な顔の表情で十分に表現されています。
コールマンは、アカデミー賞主演女優賞を受賞した演技「女王陛下のお気に入り ( 原題:The Favourite ) 」に続き、存在感のある女優をいかんせん証明してくれています。
残念ながら受賞にはなりませんでしたが、「ファーザー」ではアカデミー助演女優賞にノミネートされました。

余談ですが、パリ育ちの監督そして撮影がロンドンとパリで行われていることもあって、インテリアや服装があか抜けていて洒落ています。

評価は、脚本良し、演技良しの映画で星五つ ★★★★★。
シネマファンの方には必見の映画です。

 監督・脚本・脚色 : フローリアン・ゼラー

● フローリアン・ゼラー ( Florian Zeller )

 
 

1979年フランスのパリに生まれる。
小説家、舞台脚本家、舞台監督など多才な肩書きを持つ。これまで10本以上の舞台劇脚本を書き45カ国で演じられている。
この「ファーザー」の脚本もその内のひとつで、今回映画用に脚色し自らメガホンを取って映画化した。
インタビューで、*「この作品は舞台用の脚本をアンソニー・ホプキンズが演じることを念頭において映画用に脚色したようなもの。自分自身にとって初めての映画脚色/製作、一方アンソニー・ホプキンズは伝説の大名優。その当時は出演してもらえるかどうかもわからなかったが。。。出演を承諾してくれて感謝していると」と述べている。
アカデミー脚色賞を受賞した他、作品賞にノミネートされた。
タイム誌で時の最も-優れている脚本家と称される
2010年に結婚し子供が一人いる。
( * 出典 https://people.com/movies/oscars-2021-florian-zeller-wins-best-adapted-screenplay/ )

 キャスト

● アンソニー・ホプキンズ ( Anthony Hopkins )

Philip Anthony Hopkins。1937年イギリスのウェールズ地方に生まれる。
パン職人の父親のもと労働階級者社会の中で育ち、学校では教科よりもアートや音楽を楽しんだ。1957年、ロンドンの演劇学校に進む。そこで名優ローレンス・オリビエ ( Laurence Olivie ) の目にとまり、ロイヤル・ナショナル・シアターに参加する。その後数々の舞台劇を始め、テレビドラマ、映画に出演。数々の賞を受賞。
主な映画作品に、「エレファントマン ( 1980 ) 」、「ハワーズ・エンド( 1992 ) 、「日の名残り (1993 ) 」「 マイティ・ソーシリーズ ( 2011 2013 2017 ) 」「 二人のローマ教皇( 2019 )」など。1991年の「 羊たちの沈黙 」の主役ハンニバル・レクターでアカデミー賞主演男優賞を受賞。今回の 「ファーザー」は2回目の受賞となる。
1993年、演劇界での功労が称えられエリザベス女王から爵位を預かる。2003年には、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイム ( ハリウッド名声の歩道 ) に星が刻まれた。
三度の結婚歴がある、娘が一人いる。

● オリビア・コールマン( Olivia Colman ) 

 
 

本名:サラ・キャロライン・シンクレア ( Sarah Caroline Sinclair  ) 。
1974 年、 イギリスのロンドンの北西に位置するノーウィッチ ( Norwich) に生まれる。
高校の学芸会で初めて演劇に足を踏み入れ、その後ブリストルの演劇学校に進む。
これまでコメディ中心にテレビドラマで活躍し数々の賞を受賞。
出演した映画には、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 ( The Iron Lady ) 2011」、「私が愛した大統領 ( Hyde Park on Hudson ) 2012 」、「ロブスター ( The Robster ) 2015 」、「オリエント急行殺人事件 ( Murder on the Orient Express ) 2017 」、「 The Lost Daugther ( 2021 ) 」がある。「思秋期 ( Tyrannosaur ) 2011 」では主役を演じた。
2018年公開の「女王陛下の御気に入り ( The Favourite ) 」のアン女王役でアカデミー賞主演女優賞を受賞。この「ファーザー( 原題 :  The Father)」では、助演女優賞にノミネートされた。
2001年に結婚し二人の子供がいる。

 あとがき


くどいかもしれませんが、往年のシネマファンにはこの「ファーザー」は絶対おすすめの映画です。

尚、この「ファーザー」の二部作として「The Son ( 仮題:息子)」の制作が決定しています。
勿論フローリアン・ゼラーが脚本、監督のもと、ヒュー・ジャックマンと ローラ・ダーンが主演です。 
公開は数年後だとか。今から楽しみですね。

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1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。