祝アカデミー国際長編受賞!日本発信の芸術映画「ドライブマイカー」感想★★★★★

Kia ora

ニュージーランドでもようやく待望の日本映画「ドライブ・マイ・カー」が劇場公開! 
「ドライブ・マイ・カー」は村上春樹による原作に惚れ込んだ滝口竜介が脚本、監督。先月末には栄えあるアカデミー賞国際長編 を受賞。「日本映画は新しい時代に入った」とすら言われ、かのオバマ元大統領も薦める作品です。お見逃しなく。

作品情報

製作年 : 2021年
製作国 : 日本
上映時間 : 179分
ジャンル : ドラマ
監督:濱口竜介
脚本 : 透子、大江崇允
原作 : 村上春樹
出演者 : 西島秀俊、三浦透子、岡田将生、霧島れいか、パク・ユリム
受賞:カンヌ国際映画祭 脚本賞、アカデミー国際長編映画賞

 

あらすじ

舞台俳優であり演出家の家福かふくは、愛する妻のおとと満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう――。2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。喪失感と“打ち明けられることのなかった秘密”に苛まれてきた家福。みさきと過ごし、お互いの過去を明かすなかで、家福はそれまで目を背けてきたあることに気づかされていく。

( 出典:https://dmc.bitters.co.jp/ )

感想

3時間近くの長編と感じることなく、見終わった時にもう終わったの?と、びっくりするほどでした。劇的な仕掛けがある訳でもないのに、最初から最後まで登場人物の顔の表情やセリフに釘付け。まるで目の前で奏でられる豊かな音楽の調に酔いしれた状態でした。

その理由の一つに、演出家の家福役の西島秀俊を始め、ドライバー役の三浦透子、妻の霧島れいか、若い男優役岡田将生、韓国人女優パク・ユリム一人一人がきめ細かく描写されていることがあります。その上、登場人物が抱える隠された過去が少しづつ、そしてなだらかな展開で明らかにされ、見る側は知らず知らずの内に次は何があるのだろうかと思い巡らしながら、登場人物の一つ一つのセリフを聞き入ることになります。

「ドライブ・マイ・カー」のテーマは人間の「生」という普及の類いですが、言葉の違いや身体の障害というバウンダリーを超えて一層普遍的なものとなり、それ故に海外でも広く称賛されていると言えるでしょう。

そして忘れることが出来ないのが、映像の美しさ。それもただ単に美しいだけでなく、シャープで研ぎ澄まされています。
トンネルを抜けた時のスクリーンに広がった景色のシーンには、わずか数秒でしたが、その美しさと、これから何が始まるのだろうと期待と興奮で、思わず鳥肌が立ったほどです。

「ドライブ・マイ・カー」は藝術作品。久々に劇場でもう一度観たいと思いました。
星五つ。★★★★★。

監督、キャスト

◯  監督/脚本 :  濱口 竜介(はまぐち りゅうすけ)

1978年神奈川県川崎市に生まれる。東京大学文学部卒業後進学した東京藝術大学大学院の新設の映画監督養成コース在籍中に監督した『PASSION』が国際映画祭に出品され世界の注目を浴びる。2013年『ハッピーアワー』を監督、ロカルノ国際映画祭で国際コンペ部門の最優秀女優賞、芸術選奨新人賞、日本映画批評家大賞選考委員特別賞を受賞するなど成功を収める。2018年、『寝ても覚めても』をカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品。2020年、パンデミック中に小規模映画館支援のための『ミニシアター・エイド基金』を立ち上げる。2020年公開の黒沢清監督『スパイの妻ー〈劇場版〉』では共同で脚本を手掛け、ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞。2021年 3月、『偶然と想像』が、ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で銀熊賞を受賞。同年7月、『ドライブ・マイ・カー』でカンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞、ゴールデングローブ賞、アカデミー賞では、作品賞・監督賞・脚色賞・国際長編映画賞(旧外国映画賞)にノミネートされ、国際長編映画賞を受賞。また、2月にはベルリン国際映画祭で国際審査員を努めた。

◯ 家福 役: 西島 秀俊

1971年東京都八王子市に生まれる。桐朋高等学校卒業、横浜国立大学工学部生産工学科中退。映画好きの父親の影響で映画界へ興味を持ち始め19歳の時にオーディションに合格し俳優となる。デビューは1992年のテレビドラマ『はぐれ刑事純情派5』。その後『わたしってブスだったの?』『悪魔のKISS』、『あすなろ白書』、翌年映画『居酒屋ゆうれい』に出演。1999年、『ニンゲン合格』で初の映画主演を果たし、日本映画プロフェッショナル大賞の主演男優賞を受賞。2002年、北野武監督の『Dolls』で主演。その後『帰郷』、『純情きらり』、『休暇』に出演し数々の賞を受賞した他、2011年に出演した『CUT』は国際映画祭で上映。2017年、デザイナー自身の指名により、ジョルジオ・アルマーニの広告モデルに4シーズン連続で起用される。『ドライブ・マイ・カー』の演技については、米ニューヨーク・タイムズ紙は「演技は鋭い批判的な知性を合わせ持っており、そのメランコリックで控えめな存在感が映画の重要なカギとなっている」とし、日本人では初めて「Great Performers/The Best Actors of 2021」に選出された。2014年に結婚、2児の父親である。

◯ みさき役 :  三浦 透子 (みうらとうこ)

1996年札幌市出身に生まれる。6歳の時に2代目なっちゃんとしてサントリーのCMに出演後、ドラマ『天才柳沢教授の生活』に出演。2011年のテレビドラマ『鈴木先生』の演技で高い評価を得る。2015年 歌手としてもデビュー、映画『ロマンス』のエンディングテーマの「サヨナラだけがロマンス」、2019年にはアニメーション映画『天気の子』の主題歌を歌い、同年『第70回NHK紅白歌合戦』でも歌っている。アルバム『かくしてわたしは、透明からはじめることにした』も発表している。『ドライブ・マイ・カー』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。オーデションの後に役が決まった当時は運転免許証を持っておらず、マニュアル免許を17日で取得した。

あとがき

この「ドライブ・マイ・カー」は、バラック・オバマ元米大統領の2021年に公開されたお気に入りの映画14本の中に選ばれたとして、ちょっとした話題にもなりました。無類の映画好きとして知られているオバマ元大統領は「芸術は常に心を支え、栄養を与えてくれる」とコメントした上で、「この14本の作品では力強い物語が語られおり、みなさんも楽しんでくれることを願う」と推薦しています。

あのオバマ元大統領がシネマファンで、しかも「ドライブ・マイ・カー」が好きな作品に選ばれているなんて嬉しい限りです。

尚、「ドライブ・マイ・カー」の他には、「サマー・オブ・ソウル」「ウエスト・サイド・ストーリー」「パワー・オブ・ザ・ドッグ」「Pig(原題)」「PASSING 白い黒人」「The Card Counter(原題)」「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」「The Worst Person in the World(わたしは最悪。)」「Old Henry(原題)」「最後の決闘裁判」「マクベス」「C’mon C’mon(原題)」「アイダよ、何処へ?」が選ばれています。

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」は、ニュージーランド人のジェーン・カンピオンが監督し撮影もニュージーランドで行われた、れっきとしたNZ映画で、アカデミー賞作品賞を見事射止めています。オバマ元大統領、よくぞ選んでくれました!と声を大にして言いたいです。

オバマ元大統領が選んだ「パワー・オブ・ザ・ドッグ」と、「ウエスト・サイド・ストーリー」についても、このブログで感想などを書いています。興味のある方はどうぞ。

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1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。