Kia ora
マオリ映画特集の第5弾です。
今回のテーマは、マオリとヨーロピアン開拓者の接触。
先月ニュージーランドで公開されたばかりの『The Convert』、それから昔懐かしい名作『The Piano / ピアノレッスン』を取り上げて解説します。
🎬『The Convert』
まず最初に紹介するのは最近ニュージーランドで劇場公開された『The Convert 』です。日本ではまだ紹介されてないようですが、タイトルを直訳すると『改宗者』になります。
◆ あらすじ
1830年代、プロテスタントの説教師としてトーマス・マンローはニュージーランドのイギリス人開拓地に赴任する。次第にマオリ族の部族間の血生臭い戦争に巻き込まれ、自身の運命までもが翻弄されることになる。
◆ 感想
監督はの Lee Tamahori (リー・タマホリ)はマオリ代表作とも言える『Once Were Warriors (邦題:ワンス ウォーリーアーズ)』(1994年)で主役のジェイクを演じ世界的に有名になったマオリ男優です。
この『The Convert』はいかにもリー・タマホリの作品だと言っていいくらい、マオリ族同士の領土をかけた争いが生々しく描かれており、当時の容赦ないマオリ族のしきたりが伺えます。
対照的に霞がかった山や鳥の鳴き声など、映像と音で美しく表現されたニュージーランドの深い自然が目を存分に楽しませてくれます。マオリ族の戦の方法や、それからTā moko ( ター・モコ:伝統的な入れ墨)などのマオリ文化や、火縄銃をめぐるヨーロピアンとの取引の様子の他、ヨーロピアン開拓者の様子がとてもわかりやすく描かれています。
◆ 映画概要
ジャンル: アクション/ドラマ
製作国:オーストラリア ニュージーランド
製作年:2023年
言語:英語
上映時間:119分
監督:Lee Tamahori(リー・タマホリ)
出演 : Guy Pearce ( ガイ・ピアース ) Tioreore Ngatai-Melbourne ( ティオレオレ・ナータイ・メルボ―ン)Antonio Te Maioha ( アントニオ・テ・マイオハ )
🎬『The Piano/ピアノレッスン』
マオリ族とヨーロピアン開拓者の交流を描いた映画として次に紹介する映画は『The Piano/ピアノレッスン』。1994年に公開されると世界的に旋風を巻き起こし、アカデミー賞でも脚本賞、主演と助演女優賞を受賞した名作です。最近デジタル化して日本でも再放映されています。
◆ あらすじ
19世紀半ば。未亡人のエイダは入植者のスチュアートと結婚するため、娘とともにニュージーランドに移住する。口のきけないエイダにとってスコットランドから持ってきたピアノは唯一自身の感情を表現することのできるかけがえのないもの。そのピアノが土地と引き換えにべインズの手に渡ってしまう。エイダはピアノを弾く交換条件としてべインズにピアノを教えることになるが、次第にアイダ、スチュアート、べインズの人間関係がもつれてくる。
◆ 感想
ニュージーランドに入植したヨーロピアンの動機や生活は様々。スチュアートのように新天地を求めて入植後ひたすら土地を買い求めようとする人もいれば、マオリ族と同化して素朴な生活に甘んじている人、そしてそういう男性に対する需要に応じて本国で行き場を失い花嫁として入植した女性など、入植者の様子がわかります。その状況を単なる開拓史としてだけでなく、ピアノで奏でられた美しい調べとともに恋愛作品の名作に出来上がっています。ニュージーランドの巨匠ジェーン・カンピオン監督には感服するしかありません。また、アカデミー賞主演と助演女優賞を獲得した主役のホリー・ハンターと娘役を演じたアンナ・パキンの演技も見物です。
◆ 映画概要
ジャンル: 恋愛ドラマ
製作国:オーストラリア・ニュージーランド・フランス
製作年:1993年
言語:英語
上映時間:121分
監督/脚本:Jane Campion ( ジェーン・カンピオン)
出演 : Holly Hunter ( ホリー・ハンター)Anna Paquin ( アナ・パキン)Sam Neil ( サム・ニール)
受賞:カンヌ映画祭:作品賞、主演女優賞
アカデミー:脚本賞、主演、助演女優賞
あとがき
最初に紹介した『The Convert 』を劇場で観た後に、自宅で『The Piano/ピアノレッスン 』を観ました。
『The Piano/ピアノレッスン 』を観たのはこれで3回目です。製作されてから30年が経っているとは思えないほど新鮮で、そして十分に楽しめました。
ちなみにこの『The Piano/ピアノレッスン 』でアカデミー賞脚本賞を受賞した Jane Campion ( ジェーン・カンピオン)は2021年の作品『パワー・オブ・ザ・ドッグ』でアカデミー賞監督賞を受賞しています。アメリカ合衆国が舞台ですが、撮影はニュージーランドの美しいオッタゴで行われています。よかったらこちらもどうぞ。
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