NZのギャング文化を知る映画『Once Were Warriors』『 The Dark Horse』『Savage 』

Kia Ora

ニュージーランドの映画特集として、ギャングを描いた三つの作品、『Once Were Warriors (邦題:ワンス ウォーリーアーズ)』、『 The Dark Horse / ダークホース』、『Savage/サベイジ』を紹介します。

どれもバイオレンスではなく、ギャングの心情や、ギャング形成の背景にあるNZの社会情勢に焦点をあてたものばかりです。
ギャング文化のみならず、ニュージーランドの社会や歴史に興味があるという方にもお勧めです。

『Once Were Warriors/ ワンス  ウォーリーアーズ

まず最初に紹介するのは『Once Were Warriors (邦題:ワンス ウォーリーアーズ)』という映画です。ギャング映画を知るという特集として紹介していますが、マオリ文化を知るという点でももってこいの映画です。初めてマオリ族の生活に触れた映画として大反響を呼びました。

◆ あらすじ
1980年代のオークランド郊外。結婚して18年が立つマオリ人のベスとジェイクは5人の子供と state house と呼ばれる政府所有の低所得者層用住宅に住み、ジェイクが稼ぐ日銭で生活を凌いでいる。突然ジェイクは仕事を辞め生活保護に頼る生活を始め、毎日仲間とともに酒に入り浸る。そんなジェイクの野性味に溢れた魅力に魅かれているベスは、妻として母として家族を守るように必死に努める。が酒に酔ったジェイクから激しい暴力を受けるようになり、そして長男が地元のギャンググループに加入、次男は犯罪を犯し。。。と家族が崩壊していく中でさらに追い打ちをかけるような悲劇が起こり、ベスは決断をすることになる。

◆ 感想
『Once Were Warriors 』が舞台となった1980代は、Urbanazation (アーバナイゼーション) の結果、都会に住むマオリ人の間に喪失感が強く漂い、そしてそれが社会に色濃く影響し始めた時です。Urbanazation (アーバナイゼーション) とは、NZ政府が原住民族のマオリ人を現代生活に適応させるという大義名分の元、半ば強制的に彼らを生まれ育った土地から都市に移動させた施作です。結果として、マオリ人は土地のみならず文化や習慣を失ったことにより自己を喪失し、また慣れない都会暮らしや社会的規範に挫折し、次第に数多くの男性が暴力、飲酒、犯罪へと陥っていきました。
この『Once Were Warriors 』はそうした社会を見事に描写しています。特に、ベスはマオリ部族の首長の家柄の出身で彼女の部族やマラエなどに帰属感をもっているのに対し、元々奴隷の家系の出身のジェイクは白人社会に入ってどこにも帰属する社会がない点などです。その他にも葬式の場面ではマオリの慣習も伺えます。マオリ文化に興味がある人にはこの映画は必須の映画と言えます。
また、この映画がきっかけで、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』など国際的な映画に進出したジェイク役のTemuera Morrison ( テムエラ・モリソン) の演技も見ものです。

◆ 映画概要
ジャンル : ドラマ/言語: 英語/
製作: 1994年/上映時間 :1時間44分

監督 : Lee Tamahori
出演 : Rena Owen、Temuera Morrison
映画賞:1994年モントリオール世界映画祭最優秀作品賞

The Dark Horse / ダークホース』

二番目に紹介するのは、『 The Dark Horse / ダークホース』です。実在の人物のスピード・チェスの名手ジェネシスのバイオグラフィー・ドラマですが、その主人公のジェネシスの甥の若い男性を通し、片田舎の貧困層の社会でギャングとなる社会的な要素が分かります。

◆ あらすじ
NZの北島のギズボーン。スピードチェスの名手であるジェネシスは重度の躁鬱病を患いながら、地元のクラブで子供たちにチェスを教え、全国大会に出場する夢を子供たちに託す。その一方で、身を寄せる地元のギャング集団の頭である兄のアリキの家で、アリキの息子でジェネシスの甥に当たる青年マナが不遇の扱いを受け、本人の意思に反しギャング入りすることが決まっていることを知り、マナを助けようとする。

◆ 感想
この映画は、スピードチェスの名手で不遇な状況にある地元の子供を啓蒙しようと子供たちにチェスを教えた 実在の人物、Genesis Potini ( ジェネシス・ポティーニ ) のバイオグラフィー映画です。残念ながら本人は躁鬱病重度患者で、病院へ入退院を繰り返し2011年に他界しています。そのジェネシスを演じた Cliff Curtis ( クリフ・カーティス) は、役作りのために体重を26kg増やし、正しく体当たりの演技は世界で高い評価を得ました。クリフ・カーティスは、『  Whale Rider ( クジラの島の少女 )』 で父親役でも登場しています。また、甥のマナを演じたJames Rolleston(ジェイムズ・ローラーストン) はデビュー作の『Boy 』で一世を風靡しましたがこの映画の後に起こした自動車事故で負った怪我が原因で、芸能界から立ち退いています。
ギャングがはびこる片田舎で、本人の意思に関わらず掟に従い洗礼を受けギャングとなる過程が生々しく描かれており、日本のやくざとは違うニュージーランドのギャングの慣習を知る映画としても見応えがあります。

◆ 映画概要
ジャンル : バイオグラフィー・ドラマ/言語: 英語/
製作: 2014年/上映時間 :2時間5分
監督 : James Napier Robertson
出演 : Cliff Curtis、James Rolleston
映画賞:2015年シアトル/サンフランシスコ/ロッテルダム映画祭最優秀作品

Savage/サベイジ 』

NZのギャング文化を知る映画の最後として『Savage /サベイジ』を紹介します。『Savage 』はギャングの世界に入った一人の男性の人生を追った映画です。先に紹介した2つの作品に比べると知名度は低いですが、圧巻的な入れ墨とはうらはらに、主人公の心情が細やかに描かれており、ドラマ映画としてもお勧めします。

◆ あらすじ
ウェリントン北部の白人家庭に産まれたダニーは、父親の暴力に耐えながら子供たちを守ろうとする母親を助け生き抜いている内に、少年院に送られてしまう。少年院でモーゼと呼ばれる少年に出会ったことがきっかけで、青年となったダニーはストリート・ギャングの仲間入りをする。

◆ 感想
この『Savage』は、実在の一人のギャングの人生を幼少時代から30年にかけて追って再現されてます。画像から想像できるように暴力シーンが含まれていますが、テーマは義理と人情の狭間で揺れ動く一人の人間の人生についてです。その点では、日本のやくざ映画にも似た要素があり、わかりやすいかと思います。
見所の一つとして、脇役に本物のギャングが登場しています。凄み(すごみ)など修辞が全く当てはまらず、野暮でただ飲んだくれて暴力を行使する姿に、NZのギャングの現実を知ることでしょう。

◆ 映画概要
ジャンル : 犯罪ドラマ/言語: 英語/
製作: 2019年/上映時間 :1時間40分
監督 : Sam Kelly
出演 : Jake Ryan, John Tui

あとがき

私の元同僚に、ギズボーン出身で『 The Dark Horse 』のジェネシスから小学校でスピードチェスを教わった人がいます。その彼が、ある日ウェリントンの街中で顔一面にギャングの文字の入れ墨を入れた少学校のクラスメイトにばったり会いとても驚いたと言っていました。それほど、ギャングが身近に存在する社会だと言えることと思います。

特に、コロナ禍で社会全体が苦境に陥っているここ数年は、ギャングの数が圧倒的に増えているそうです。現在のギャングの数は3,000 人にも上ると言われています。また、ギャング間の抗争もニュースで度々報道されるようになりました。

尚、ニュージーランド の映画特集として、これまで『JAMES AND ISEY』『WARU』『COUNSINS』、『  Whale Rider ( クジラの島の少女 )』 『Justice of Bunny King (邦題: ドライビング・バニー)』を紹介していますので、併せてご覧ください。

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1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。