tā moko マオリ族の入れ墨 解説

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マオリ族に古くから伝わる入れ墨を tā mokoと言います。
近年のタトゥーブームに乗じ、マオリ独特の模様の tā mokoを施す人の数も増え、街中でも tā moko が頻繁にみかけられるようになりました。

 tā mokoが一般化された理由の一つに、他の類いの入れ墨と同様、機械で簡単に彫ることができるようになったことが挙げられます。
機械彫では、ステンレス製の針を約 2 mmほど皮膚に打ち込んで模様が彫られます。

が、元来 tā mokoは、厳しい戒律に従い、ある特定の人のみが人生を賭けて施すものです。

この編では、その昔ながらの習わしを紹介するとともに、マオリ族の tā mokoへ秘める思いに迫ります。

  tā moko の起源と特徴


tā moko のルーツは、タヒチを発祥とし現在でもポリネシア人の間で受け継がれている tatau (タタウ) にあります。

tatau (タタウ)とは、uhi と呼ばれる髪をとかす櫛に似た形の鑿(のみ)の歯に色を付け、それを上から tā と呼ばれる木づちで打って皮膚に色をつける方法を指します。

歯の幅が異なる uhi ( 鑿のみ)を使い分けることで、皮膚の上に色々な幅の線や模様ができます。

おわかりのように、英語の tattoo (タトゥー)という言葉は、この tatau に由来します。

今からおよそ1000年ほど前にポリネシア諸島からニュージーランドに入植したマオリ族の間でもこの tatau (タタウ)が継承されていました。

が、時と共にマオリは独自の方法を取るようになりました。
鯨やアホウドリの骨を削って作った鑿(のみ)で皮膚に溝を掘り、そこに色を流し込むという方法です。
そしてこの方法で彫られた刺青に tā mokoという呼び方が定着しました。現在も、一部のマオリ人の間ではこの手彫りの方法が用いられています。

手彫りされた部分は傷痕として皮膚が盛り上がったまま残ります。
ですのでこの伝統的なtā mokoは、入れ墨の模様の部分の皮膚が盛り上がっているのが特徴です。
機械彫りでは皮膚が盛り上がることはありません。

またこの伝統的な手彫りで顔に tā moko を施す際は、鼻や頬の骨までも削られ、危険と極度の痛みが伴いました。


  tā moko の慣習

昔ながらの手彫りの tā moko にまつわる慣習を説明します。

   部位は顔とお尻のみ

現在は体のどの部位にも機械で彫られていますが、本来の tā mokoを入れる場所は顔とお尻の部位と決まっています。

マオリ族にとって顔は体の中で最も崇高な部位であり、その顔に tā moko を彫る事はマオリとしてのアイデンティティを極めることになります。
別の言い方をすると、自分の顔の tā moko で自身だけでなく、家族、部族、果てはその部族をはぐくむ自然環境を総体的に表現します。
ですので、tā mokoは、痛みに耐えうる事は勿論の事、人格を備え、また部族に貢献していると認められた特定の成人男性のみに彫られます

おしりは、美学的なもので、目に官能的に映るからだと言われています。
また、太ももの裏側から模様を繋げて、体を強く見せる目的もありました。

maori chief

© Wikimedia Commons

      マラエでの厳粛な儀式

tā moko として彫られる模様については、本人と家族そしてその部族のリーダー達が何日にもかけて話し合って決められます。

基本的に、顔の右側の模様は父方、左側は母方の家系、真ん中の鼻の部分は本人の将来に対する抱負表します。また、一つ一つの模様にその意味がある事は言うまでもありません。

tā moko が実際に彫られる前日に、* marae ( マラエ:部族の集会所、精神的な拠り所)で部族を挙げて厳かな儀式が執り行われます。そこで彫られる者は心身ともにみそぎを落とし、最後となるかもしれない晩餐を取ります。
その後家族や祈祷師が立ち会いの元、数日にかけて彫られます。顔一面の full tā moko は完成するまでに1週間かかるそうです。この間は満足に食事を取ることができません。

*  marae ( マラエ:部族の集会所、精神的な拠り所) の詳細はこちらをご覧ください。

 

    女性の tā moko – moko kaua


唇の回りや顎に施された tā moko は女性特有のもので、moko kauaと呼ばれます。
マオリ神話に登場する Murirangi Whenua が、顎骨に魔法を持っていた事に由来し、女性が持つ知恵を象徴します。
元々は酋長の長女が結婚した際に彫られていました。

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©James Heremaia

    tā moko の現在


近年のマオリ文化の復興とともに、機械りで簡単に出来るようになった事もあり、自己アイデンティティを認識する手段として、tā moko を入れるマオリ人の数は年々増えて来ています。
ここ数年は、moko kauaを入れた若い女性も見られるようになりました。

また、Rihana など海外の有名人がNZを訪れた際にtā mokoを施したこともあり、海外での知名度も一挙に高まりました。

数年前には保守的なミス・ユニバース大会でミス・NZ代表が肩の tā moko を披露し、旋風をまき起こすなど、海外においても tā mokoの人気は衰えることがありません。

現在、私の同僚のマオリ男性が顔面に tā moko を入れる準備中で、彼の部族と話し合いを重ねています。

tā moko を彫ることは彼自身10年以上考えていましたが、家族や親類の推薦で部族の間で認められ、夢が叶ったそうです。

彼の部族から許可が降りるに当たって、彼曰く自身のコミュニティへの貢献度を問われたとのこと。

何時でもマオリの manaakitanga (人を敬う、気遣う、面倒を見る)を実行する彼は、私や他の同僚の間では精神面において揺るぎない支えとなっています。
彼のそうした人柄と行いがあるからこそ、tā moko担い手にふさわしいと認められたのでしょう。
今の所は手彫りで彫るそうですが、模様次第では危険を避けて機械彫になるかもしれないそうです。

そのtā mokoを彫る彼がロックダウン開けにkarakia(カラキア)をしてくれた模様を別の記事で綴っています。併せてご覧下さい。

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1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。