マオリ族のカービング whakairo と模様 kōwhaiwhai を知ろう!

Kia ora

マオリ族の独特のカービング(彫刻)はマオリ語でWhakairo (ファカイロ)  と言います。
このマオリカービング、ファカイロに施されているのは、主に人や鳥の形をした像と、幾何学模様のモチーフです。

幾何学模様のモチーフは kōwhaiwhai (コーファイファイ)と呼ばれ、マオリ族の伝統的な入れ墨 tā moko (ター・モコ)にも彫られてます。「ああ、あれか、見たことがある」という人は多いのではないでしょうか。

この編では、そのマオリカービング、ファカイロの起源や歴史を詳しく紹介するとともに、モチーフ Kōwhaiwhai のパターンやその意味を紹介していきます。

マオリ語でwhakairo ( ファカイロ)と呼ばれるマオリ族独特のカービングのルーツはポリネシア諸島にあります。
知っている方も多いと思いますが、マオリ人は1,000年前にポリネシア諸島から移り住んだと言われていますので、当然だと言えますよね。

このため初期の彫刻のスタイルは、ポリネシア諸島で見られる彫刻とよく似ています。
中でも Uenuku(ウエヌク)と呼ばれる虹の神様を象徴するカービングは、ハワイのものと見分けがつかないほどです。


マオリ族の間に古く伝わる神話の中では、ファカイロの起源は次のように語られています。

Ruatepupuke (ルアテププケ)の娘 Manuruhi(マヌルヒ)は海でカヌーを漕いでいる時に、海神の Tangaroa ( タンガロア)に捕まり、海の中にあるタンガロアの家の切妻に埋め込まれた。マヌルヒを救いに来た父親のルアテププケがそれを見つけて陸地に持ち帰ったことをきっかけに、像をカービングすることがはじまった。

マオリ族はカービングの材料ととして、ニュージーランド固有種のKauri ( カウリ)や tōtara ( トータラ)と呼ばれる樹木を好んで用いています。特にtōtara ( トータラ)は、幹が固く、そしてまっすぐ50メートルの高さまで成長するため、大きな建物やカヌーに用いられました。

マオリ族は石や、貝殻、そして pounamu ( ポウナム)と呼ばれるグリーン・ストーンで木材に刻んでいました。
ヨーロピアンが入植後はヨーロピアンがもたらした鉄の彫刻刀が用いられるようになりました。

ファカイロ彫刻の作業中には色々なしきたりがあります。
ここでは二つの例を紹介します。

  • 木を切り倒す前や彫刻が完成後は、かならず karakia ( カラキア;祈り)を捧げ、大地にそして森の神 Tāne Māhuta ( タネ・マフタ)に感謝の念を表す
  • 彫刻している間に出る木屑は料理用の火に使ってはいけない

尚、マオリ族にとって木は森の神 Tāne Māhuta ( タネ・マフタ)の子供と考えられていますが、一旦像が彫られるとその木材は彫られた像の所有物となります。

1,000 – 1,200年
ポリネシア諸島からマオリ族が入植。
ニュージーランドでポリネシアスタイルの彫刻が始まる

1,500 – 1,800年
シダの葉の模様など込み入ったマオリ族独特のスタイルに発展する。
whare nui ( ファレ・ヌイ;マラエの家)や、 pātaka ( パータカ;食糧倉庫)、taua ( タウア;戦争用のカヌー)にも彫刻され、その部族の富と繁栄を表現されるようになった。
ヨーロピアン入植者は彫刻の緻密さに感心した。

1,800年 –
1840年の植民化はカービングにも大きく影響。
わざと大きく彫られたマラエの家が主流になり、その部族の威厳さやマオリ観念が表現された。
その代表的な家として、1840年代に作られ現在テパパ国立博物館に展示されているTe Hau-ki-Tūranga(テ・ハウ・キ・トゥーランガ)が有名である。

1926年
ロトルアに Rotorua School of Māori Arts and Crafts ( ロトルア・スクール・オブ・アート・アンド・クラフト)開設。伝統的なカービーングの研修が行われ、研修生は卒業後全国各地に建物を建てた。

1900年代の後半
アートとしてマオリカービングが登場。
1970年に入り都市部にも数多くのマオリが住むようになると、新しいスタイルのマラエが建てられた。
また、カービングされた waka ( ワカ)と呼ばれるカヌーも復活した。

(出典)
https://teara.govt.nz/en/whakairo-maori-carving/page-1
https://www.twinkl.co.nz/teaching-wiki/maori-patterns

マオリ族のカービングには人間や鳥などの動物の形をした像の他に、同じパターンが繰り返されたモチーフがあります。そしてこのモチーフは Kōwhaiwhai(コーファイファイ) と呼ばれます。

コーファイファイはカービングに、そしてマラエの家や倉庫などに描かれていることもあります。
tā moko (マオリ族の入れ墨)にも使われていると言った方がわかりやすいかもしれませんね。

コーファイファイはある種情報の伝達手段であり、それぞれに意味があります。
その意味とは、部族の歴史や特徴、それから家族の家系図を指します。

このため、コーファイファイのパターンは部族によって異なり、それぞれのパターンを見ればその部族がどんな自然環境に囲まれているか、そして祖先や人々について知ることができます。

コーファイファイに使われる色は伝統的に赤、黒、白の三色です。
赤は温かさ、血、生命を、白は純潔、約束、将来を、黒は地球を表します。
部族によっては赤と黒色の割合が多ければ多いほど、祖先の部族への貢献が表わされていると言います。

コーファイファイには沢山の種類があります。
ここではその代表的なパターンを紹介します。

● Koru(コルー)
もっともよく使われるパターンで、フェーン(シダ)の新芽が伸びる様を表す。海の波やエネルギーの動きや、個人的に家族を例えるときもある。

●  koiri (コイリ)
シダの新芽 koru ( コル―)を繰り返しながら、元に戻る。 永久に続くことを示し、 自己を顧みながら成長していく様や、繁栄を象徴する。

● Puhoro(プホロ)
半分に割れたシダの新芽 koru ( コル―)。スピード、機敏さを象徴。嵐や困難な状況を例えることもある。

● Mangōpare ( マンゴーパレ) 
シュモクザメを表し、力強さ、勇気を象徴する。

● Pātiki ( パーティキ ) 
ヒラメの形を原型とし、幸運、寛大さ、おもてなしを象徴

● Kowhai Ngutukākā(コーファイ・ヌツカーカー) 
 kākā (カーカー)というオウムの嘴に似ていることから名付けられたという名前の花。

● Rauru ( ラウル)
螺旋のような模様でkoru ( コルー)と同じような意味を持つ。
成長、力強さ、平和を象徴する。 

● Ngutukākā or Marama ( ヌーツーカーカー/マラマ)
オウムの kākā (カーカー)もしくは、 marama’(マラマ)の月を表す。

これまでマオリ族の伝統的な彫刻とパターンについて簡単に説明してきました。

マオリの彫刻の技術を習得するには20年かかると言われており、とても深いものがありますが、このブログが少しでも皆さんのお役に立てればと思います。

尚、文中何度も出てきたマオリ族の伝統的な入れ墨 tā moko ( ター・モコ)については以前特集を組んで紹介しています。
是非併せてご覧下さい。


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1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。