マオリ族の伝統芸能 waiata / ワイアタ① 歌う前に知っておこう!

Kia ora

ニュージーランドの先住民族のマオリ族の歌はワイアタと呼ばれます。
ワイアタはマオリ族の Pōwhiri (ポフィリ:伝統的な歓迎式)だけでなく、冠婚葬祭や学校や社会行事など様々なシーンで歌われています。

ニュージーランドに住んでいたら是非知っておきたいワイアタについて、その起源と特徴など詳しく紹介していきます。

ニュージーランドに住んでいると、集まりの席でマオリ語の歌を歌う場面によく出くわします。それもマオリ族の伝統的な歓迎式 Pōwhiri (ポフィリ)や、ポフィリにのっとった学校の入学式だけではありません。冠婚葬祭や様々な学校や社会行事、職場の会議など、多方面にわたります。

そして歌っている人の数も多いこと!それもそのはず、1987年にマオリ語が公用語となって以来、学校で沢山のマオリ語を歌が唱歌されているため、ワイアタはニュージーランド国民全体に浸透しています。

大抵の場合は、集いの始めと終わりにマオリ語でkarakia(カラキア)と呼ばれる祈りを捧げた後に全員で歌います。

そしてカラキアと同じように、ワイアタにも沢山の種類や曲があり、その集いの趣旨や会話の内容に合った歌が歌われます。

マオリ族の伝統的な慣習はマオリ神話に由来しており、ワイアタもその例外ではありません。

ワイアタの神様は、Hineruhi(ヒネルヒ)という女神だと言われています。

マオリ神話では、Hineruhi(ヒネルヒ)は夜明けとともに現れる女神で、ヒネルヒが踊ると朝露が光り輝いたという逸話があります。

このため、女性がもてなしの場で素晴らしい歌や踊りを披露すると、 ‘Ko Hineruhi koe, nāna i tū te ata hāpara’ (夜明けをもたらすヒネルヒ)と形容されます。

ちなみに夜明けに踊る神様には、ヒネルヒの他にTānerore(ターネロア)がいます。ターネロアが夏の朝踊ると陽炎(かげろう)が起こりました。このターネロアのかげろうの踊りが世界的に有名なマオリ族の武闘ダンスの haka (ハカ)の起源だと言われています。

ワイアタが歌われるのは、ただ単にその場や気持ちを活気づけるだけが目的ではありません。マオリ族の文化やそれから集いを進行するにあたり、ワイアタはとても重要な役割を担っています。

ワイアタには次のような役割があります。

  • Pōwhiri (ポフィリ)や集まりでの挨拶やスピーチを強調、補足する
  • 愛する家族の死を追悼する
  • 子供の教育の手段として
  • 災害や不幸に対して嘆き悲しみを表す
  • 祖先や過去の出来事や場所などを引用しながら歴史を記録する
  • 議論を解決する手段として
  • 過去と現在の事象に焦点を当てるため

18世紀にヨーロピアンが入植するまで、マオリ族の各部族の集落には、marae ( マラエ:マオリ文化の中枢の場所)の他にwhare tapere ( ファレ・タペレ)と呼ばれる娯楽を目的とする家が建っていました。
ファレ・タペレでは昔ばなしが語り継がれ、歌や踊りに合わせて楽器が演奏された他、様々なゲームも行われ、先祖と繋がるとともに、その部族の伝統や歴史が次世代に引き継がれたと言います。

ワイアタには、数多くの伝統的な歌があり、スタイルも様々です。
またほとんどの歌の題名や、振り付けにそのワイアタの趣旨が含まれています。

ワイアタは形式や役割によって次のように大きく3つに分けられます。

  • *チャント(waiata mōteatea /pōpō/oriori )
  • 追悼/哀悼(waiata tangi )
  • ラブソング(waiata aroha )

*チャント
一定のリズムと節を持った、祈りを捧げる様式を意味する古フランス語に由来する言葉。日本語では一般に詠唱、唱詠、唱和などと訳される。(出典元;ウィキベテア)

上の3つのワイアタのタイプの他にも、将来を予言する歌もあります。また、 haka (ハカ;武闘の踊り)や、poi(ポイ;紐のついたボール)ダンス、karakia(カラキア;祈り)もワイアタの一部と見なされることもあります。

これから、三大タイプのワイアタのそれぞれの特徴について詳しく紹介します。

昔は部族の高い位に付く人の子供用に作られていた。
幼児を楽しませるだけでなく、祖先や部族の歴史などを教える手段として歌われていた。
また、大きくなったら両親や祖父母などの年寄を大事にすることも盛り込まれていることが多い。
チャントの中でoriori(オリオリ)と呼ばれるララバイとして、クマラ(さつまいも)がポリネシア諸島からニュージーランドに移った話がよく知られている。

🎶 追悼/哀悼(waiata tangi )

他界した人だけでなく、戦いで敗れた戦士や酋長、部族へ、そして失った土地、部族、破壊されたカヌー、腐りはてた農作物などが追悼されている。

🎶 ラブソング(waiata aroha )

恋愛の喜びに満ちた幸せな時の感情よりも、愛にまとう苦悩や心配をうたうのが一般的。例えば戦争に長い間出ている夫の安否を心配する、愛する人がいなくて寂しい、または安堵する感情が表現されており、他の人の感情を掻き立てるためワイアタ・タンギとよく似ている。
娘を気遣う歌や、先祖から受け継いでいる土地への愛着心がテーマの歌も含まれる。

繰り返しになりますが、ワイアタは今日も日常的に歌われています。
そして、伝統的なワイアタの内容とは異なる、新しい時代や環境に応じたワイアタが続々と創られ歌われています。

ワイアタは過去の産物ではなく、今も尚進化しながら次世代に継がれるマオリ部族の文化です。

これまでマオリの唱歌ワイアタについて詳しく紹介しました。
ラブソングに付けている動画の中で歌われている『 Te Aroha 』は、その名も愛の歌というタイトルで、万物愛を表現しニュージーランド人にとっては馴染み深い曲です。
是非動画をクリックして聴いてみて下さいね。

この『 Te Aroha 』などよく歌われるワイアタの歌詞や意味について、別の編で特集して紹介する予定です。
ご期待のほどを。

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ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。