マオリ伝統料理 hāngi ハンギ

kia ora

ロトルアなどの観光地でよくマオリ文化体験の一つとして hāngi ( ハンギ ) が挙げられます。
たいてい、マオリ文化村やホテルなどでkapa haka ( カパハカ)と呼ばれるマオリ舞踊の後この hāngi ( ハンギ ) 体験となっています。

ここでは、この hāngi ( ハンギ )について詳しく説明していきます。

一般的に知られていない事情も説明していますので、是非最後までお読みください。

hāngi ( ハンギ )とは


hāngi ( ハンギ ) とはマオリの間に古くから伝わる伝統料理を指します。

一言で言うと、地熱を利用した料理方法で、umu ( ウム)と呼ばれる地面に掘った穴の中に置かれた熱した岩や石で、野菜や肉などの食材を加熱して料理したものです

直接火にかけずスチーム状態で料理されており、柔らかくまた味を損ねることなく出来上がり、今でもマオリ人に重宝がられています。

このため、* matariki ( マタリキ ) と呼ばれるマオリ新年など特別な行事やお祝いごとには、ハンギを振舞わって祝う習慣があります。

* matariki ( マタリキ ) についてはこちらをご覧ください。

 

EDC hangi 2010 © Sarah Steward via Flicker

昔は魚やkumura ( さつまいも)、根野菜を植物の葉に包んで土の中に入れてました。
現在は、魚だけでなく鶏、豚、羊、それにかぼちゃやキャベツなど色々なものが加わってバラエティに富んだ食材が、スチール製のバスケットやアルミホイールを利用して料理されています。

Hangi_ingredients © Sarah M Stewart via Flickr

熱した岩や石を利用していわば地熱で食材をスチーム料理していくので、出来上がるまで4~5時間かかります。

また料理の前には、地面を深く掘って umu ( ウム)を作り、火を焚いてumu ( ウム)の中に入れる岩や石を熱したりするので丸一日がかりの作業になります。

更に、昔は魚を釣り動物を狩りしたりするなど数日に渡って下準備が必要で、hāngi ( ハンギ )をする事は、大掛かりな作業でした。

マオリにとってのhāngi ( ハンギ )とは


その昔、māori ( マオリ ) の集落で皆でhāngi ( ハンギ )を囲んで食事をすることはその集落の一人一人を結びつけ部族を結束する方法として大事な役割を果たしていました。

部族外の客人が訪れた際は、最善をつくしたhāngi ( ハンギ )でもてなしました。
客人が同じ大地の土の中の食事を共にすることで、客人も自分の部族の一員となった事を意味しました。
同じ釜の飯を食った旧知の間柄になったという訳です。

Hangi dinner © eilanem via Flickr

hāngi ( ハンギ )の方法

 ンギを作る方法を簡単に説明します。

1. 料理を埋める穴を掘ります
(一般的に深さ1m弱で2m四方)

Maori cooking pit (Hangi) at Whakarewarewa, Rotorua, New Zealand via Wikimedia Commons

2. その穴に岩を敷き、木々を積み重ねて薪をします。
3.  岩が白くなるまで焼けると、 その上に食材を並べま す。
4. 並べた食材の上に、キャベツの葉や繊維でできた敷物をのせた後に、水を撒いて蒸す状態にします。
5. 最後に土を蒔き、毛布などでカバーします。
6.  そのままの状態で完全に調理されるまで
4〜5時間程待ちます。

EDC hangi 2010 © Sarah Steward via Flicker

留意点:商業用 hāngi ( ハンギ )は本物でない

 上記でハンギの仕方を説明しましたが、是非留意していただき点があります。

それは衛生面の問題です。
昔、マオリ族が暮らしていた集落では、ハンギをする場所や調理する場所と、他の生活の場所はしっかり分けられていました。現在では、土を掘った所が昔何に使われていたかはわかりません。
また、昔は大丈夫でも、近くの農場の農薬が流れ込み土が汚染されている可能性もあります。

このような理由でハンギをするに当たって市役所からの衛生許可が下りる事は無く、商業としてハンギ料理を販売することは認められていません。

観光地で、地中にあるハンギを見た方も多いと思いますが、実際にテーブルに運ばれて口にするハンギはキッチンで料理されたものになります。
このため、最近はハンギと呼ばれず、ハンギ・スタイルの料理やMāori feast ( マオリの晩餐) などと呼ばれて紹介されています。

また特に6月~の7月にかけてのマタリキの時期に、大きな鉄製の蒸し器で料理されたものが、カフェのメニューにハンギとして 見受けられるようになりましたが、これもハンギもどきで、本物のハンギではありません。

taste of Auckland hangi credit to Tourism New Zealand

あとがき


さて私事になりますが、私が住んでいる地域では、
毎年地元の子供ラグビークラブの遠征用の費用を作る為のチャリティとして、ハンギ料理が振る舞われます。
味はともかく、季節の風物詩として毎年冬の楽しみの一つとなっています。

一度だけですが、目の前で作られたハンギ料理を食べたことがあります。 友人のマオリ家族の長男の一歳の誕生日会で頂いたのですが、出来立てのホヤホヤのハンギは頬っぺたが落ちるほど美味しかったです。

その時は100人近くの人が集まっており、料理が地中から引き上げられるのを見ると、大人も子供も一斉に歓喜の声を上げ興奮状態に陥ったのを覚えています。

本当のハンギとは、こうして親しい家族や友人が集まって、同じ釜ならず同じ土の中のご飯を食べながら幸せな気持ちを共有することに醍醐味があるのでしょう。

長くなってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございます。

Ngā mihi
wonderer

ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。