マタリキの本質、そしてマオリの世界観(2023年改訂)

Kia ora

Mānawatia a Matariki ! ( A happy Matariki ! )

ニュージーランドはもうすぐマオリ族の新年マタリキを向かえます。

マタリキは世界で初めて先住民族の文化を祝う祝日として祝日に制定されました。そしてマタリキについてもマオリ族の世界観に通じる深い意味で認識されるようになってきています。

この編では、マタリキについて学術的な見地から真の意味とマオリ族の世界観を紹介します。

   マタリキ天文学

 マタリキとマオリ族の関係を紹介する前に、予備知識として天文学の観点から簡単に紹介します。

マタリキは星座ではなく星団である
星座は地球から見ると形を作っているが、星同士は離れている。マタリキ星団には500以上の星が固まって存在する。

★ 明けの明星である
東の地平線に太陽が昇る前に現れる。目で見えるようになるには地平線からおよそ5度以上上昇しており、太陽は少なくとも地平線より16度低い位置にある。それ以上高くなると太陽の光で見えない。

★ 天体から見えない時期がある
マタリキは一年を通してみることが出来るが、太陽光線と重なる冬の始めに見えなくなる。

★ マタリキの星はM45として区分され、等級は1.6 

★ 地球に最も近い星団の一つである
440光年と他の星団に比べると地球に近い(440光年は、時速100kmで48億年かかる距離)

★ 世界中で色々な名前で呼ばれている
地球のどこからも肉眼で見えるため、世界の各地で色々な名前が付いている。ギリシャや英語圏ではプレアデス星団、日本では昴、中国ではマオ、インドではクリッティカーと呼ばれる。

   マタリキとマオリの世界観

天文学的な紹介に続いて、マオリ族の観点からマタリキについて説明します

 1.マタリキの本当の意味

「MATARIKI」マタリキは、mata は目を, riki は小さいを指し、小さな目と言われてましたが、学術的な研究の結果、意味が改訂されています。

現在はマタリキの意味は

‘Ngā mata o te ariki Tāwhirimātea’
『マオリ神話の神 ターフィリマーテアの目

に書き直されています。

マオリ文化を少しでもかじったことのある方ならわかるかと思いますが、ターフィリマーテアは、マオリ神話で嵐の神様です。

そして勿論マタリキを意味する「ターフィリマーテアの目」もマオリ神話に由来しています。

Tāwhirimātea(ターフィリマーテア)は、父親の空の神 Ranginui (ランギヌイ)と母親の大地の神 Papatūānuku(パパトゥーアーヌク)がターフィリマーテアの兄である Tāne(ターネ)によって引き裂かれると、怒ってターネや他の兄弟と闘いに挑んだ。兄弟の1人で戦争と人類の神であるTūmatauenga (トゥーマタウェンガ )に打ち負かせられると、自身の怒りと父親への愛情を示そうと自身の目を取り出し手で潰すと空に投げると、空の神ランギヌイの胸にあたりマタリキの星団になった。

* マオリ神話の詳細についてはこちらを。

 2.マオリ族にとってのマタリキの意義

★ その昔、ポリネシアの人々が南太平洋を横断して航海する時の目印であった。

★ 時間の経過を伝えるものであった
マオリ族の先祖は、マタリキ星団が4月から5月の間に夜空から消えた時に作物を収穫し冬に蓄えた。
そしてマタリキが明け方に再び現れると新しい年  Te Mātahi o te Tau(テ・マータヒ・オ・テ・タウ) として祝った
亡くなった人々を思い遣り、健全でいることに感謝し、新年を計画した。そして家族や友人と一緒にご馳走を食べ、歌ったり、踊ったり、ゲームをして暖をとった。

★ 星の見え方で冬の行方を占った
星がくっきりと輝いていたら暖かくて穏やかな冬、ぼんやりと見える場合は厳しい冬を迎えると予想した

    3.それぞれの星の意味

マタリキの星団には肉眼で見える星が9つあり、マオリ語では Te Iwa a Matariki と表現されています。

そしてこのTe Iwa a Matarikiのそれぞれの星が、人類の幸福と取り巻く環境に多大な影響を与えていると、信じられています。

★ Matariki (マタリキ)
    マタリキ星団の中で最も明るい星(アルシオネ)。他の8つの星の母親であり環境と健康や幸福に反映、希望 をもたらし、人々を団結する。
★ Pōhutukawa ( ポーフトゥカワ)
    他界した人々の霊
★ Tupuārangi (トゥプアーランギ)
    樹木やその果実や木の実、鳥を司る
★ Tupuānuku  (トゥプアーヌク)
    農作物を司る
★ Waitī (ワイティー)
    川や湖、そしてそこに生息する魚などの食物資源を司る
★ Waitā (ワイター)
    海とそこに生息する食物資源を司る
★ Waipuna-ā-Rangi (ワイプナ・アー・ランギ)
    雨を司る
★ Ururangi (ウルランギ)
    風を司る
★ Hiwaiterangi (ヒワイテランギ)
    望みを叶え新年の願望をもたらす

   マタリキ祝日

マタリキはマオリ族が昔採用していた Tangaroa lunar period(タンガロア・ルーナー・ピリオド: 陰暦 )のPipiri ( ピピリ:6月~7月の中旬)にあたり、毎年異なります。今年2023年は7月11日から13日となり、14日の金曜日が祝日に設定されています。
来年2024年は、来年2024年は6月29~7月2日で、祝日は6月28日金曜日となっています。

通常ニュージーランドでは祝日は月曜日に設定されていますが、マタリキは準備を終えて週末を家族でゆっくり休めるように、意図的に金曜日が祝日に制定されています。

尚、このマタリキの祝日は去年2022年に初めて制定されました。先住民族の文化を尊ぶ祝日として世界で初めての例です。

マタリキ祝日の制定の詳細についてはこちらを。

   マタリキの見つけ方

それではどうやってマタリキの星を見つけるのか説明します。まずは英語での説明になりますが下の動画をご覧下さい。

⚠️ 南半球にあるニュージーランドでは日本と星座の見え方が逆になるのでご注意を。

  1. まず暁に、東の空を見る
  2. 3つ並んだオリオン座の三つ星( Tautoru:トウトル)を見つける 。三ツ星の上のひときわ明るい一等星のリゲルはPuanga(プアンガ)と呼ばれ、このプアンガを新年の目印にする部族もある。
  3. オリオン座の三つ星から左手に台の形をしたおうし座の顔 Te Kokotā(テ・コタカー)を見つける
  4. そこからさらに左手の方向に見える星団がマタリキ

   あとがき

これまでマタリキの本質について詳しく紹介してきました。
楽しんでいただけたら幸いです。

最後に、せっかくですのでマタリキの時に捧げられるカラキア(祈り)を紹介します。
是非声に出してお読みください。
 

Matariki e

Matariki te tupuna
Matariki te tawhito
Matariki te Kāhui whetū
Matariki hunga nui
Matariki ahunga nui
Matariki manako nui
E ara Matariki ki runga rā
Whano, whano,
Haramai te toki
Haumi e ! Hui e ! Tāiki e !

マタリキ

マタリキ ー 人々を奮い立たせる
マタリキー 古くから伝わる
マタリキ ー 星の集まり
マタリキ ー 人々を結び付ける
マタリキ ー 次の植え付けの準備
マタリキ ー  偉大さを熱望する
今 マタリキの星が空に上がる
皆 集まれ、集まれ、
そしてともにマタリキを祝うのだ
皆が一緒に集まって一つになるのだ!

 

では皆さん、

Mānawatia a Matariki ( Happy Matariki ) 良いマオリ新年を。

Ngā mihi
wonderer

ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。