タウポ湖のマオリロックカービング

Kia ora

ニュージーランドの北島のタウポ湖は、ニュージーランドの避暑地として知られています。湖畔の景色だけでなく、温泉やマス釣りの他沢山のアクティビティを楽しむことが出来ます。

この編では、そののタウポ湖の名所とも言えるマオリのロック・カービングが作られた背景やアクセス方法、それから同じようにユニークな地質編成の歴史を持つタウポ湖を併せて紹介していきます。

マオリ族にとってカービングとは?

マオリのロック・カービングを紹介する前に、マオリ族のカービングについて説明します。

カービングはマオリ族にとって自身や部族のアイデンティティを表現する手段として、今日でも重要な役割を果たします。
建物などの木材や、ポウナムと呼ばれるグリーンストーン、それから人の体にも * tā moko  (マオリの伝統 入れ墨 ) として彫られ、次世代まで受け継がれています。

ここ数十年の間、カービングはマオリ・アートとしても発展を成し遂げ、様々な材料が用いられ、色合いも多彩で斬新なパターンのコンテンポラリー・アートして用いられるようになりました。

その中でもタウポ湖のロック・カービングは、美しい水面に映える巨大なマオリ・カービングとして際立っています。


* tā moko  (マオリの伝統 入れ墨 )についてはこちらをご覧ください。

Lake Taupō タウポ湖


次にマオリのロックカービングがある Lake Taupō ( タウポ湖 ) を先に紹介します。

タウポは元々マオリ語でTaupō-nui-a-Tia ( タウポ・ヌイ・ア・ティア )と書き、湖を発見したティアの大いなる衣を意味します。
公式表記は Taupoですが、近年 Taupō と末尾の「o」の音にマクロンを付けてタウポーと長く発音する、本来のマオリ語での呼び方に戻りつつあります。

タウポ湖は、ニュージーランド最大の湖で、その表面積は616km²にも及び、シンガポールの国土面積に匹敵します。


タウポ湖は26,500年前の火山噴火によって作られたカルデラ湖としても知られています。
火山噴火としては地球の過去の70,000年の歴史の中で最大級のもので、その後も28回噴火が記録されています。
最後の噴火は今からおよそ1800年前ほど前、186年に起こりました。
この時は、ギリシャや中国の哲学者などが数年に渡り「東の空が赤い」と記録されているほどです。

現在も火山活動が活発で、この辺りには温泉や地熱発電所があります。

が、このような活発な火山活動とはうらはらに、現在のタウポ湖は穏やかで、湖畔にはホテルや別荘が立ち並ぶリゾート地として有名です。広々とした湖では、水上スキー、セイリング、カヤックなど様々なアクティビティを楽しむことができます。
また、マスが生息し、マス釣りの名所としても有名です。

( 出典 https://en.m.wikipedia.org/wiki/Lake_Taupo ) 

© Destination Lake Taupo

マオリ ロック カービング


そのタウポ湖のマイン・ベイ(Mine Bay)と呼ばれる西岸の岸壁に、大きなマオリの彫刻があります。
水際にそびえるこのロック・カービングは、高さ10メートルにも及ぶまさしく巨大壁画です。

© Tourism NZ

このマオリのロック・カービングは、1976年にマータヒ・ブライトウェル( Matahi Brightwell ) というマオリ男性によって彫られました

製作のきっかけとなったのは、先祖代々から受け継がれているこの土地に先祖や部族を表す像を作るように祖母に頼まれたことでした。
が、この地域では彫刻に適したトータラの木 ( totara tree ) が生えておらず、何か良い案はないかと静かに湖をカヌーで漕いで考えを巡らせてたといいます。

この時マータヒは、マラエ(  marae : 部族の集会所、精神的な拠り所でもある ) で 伝統的なマオリカービングを習得したばかりした。
伝統的なマオリカービングの習得は少なくとも10年はかかります。現在は伝授する人が少なくなったこともあり、残念ながらマータヒの世代を最後に途絶えてしまっています。このため伝統的なマオリの彫り師は現在ほんの一握りの数しか残っておらず、マータヒはその内の一人です。

そのマータヒが、タウポ湖をカヌーを漕いでいるときに巨大なアルコーブ(壁の窪み) に出くわし、その岩に彫ることを思いついたそうです。

巨大な岩のアルコーブに出くわしたのはまさに運命の出会いであった。
壁に入れ墨をした顔が浮き上がり、それでナートロイランギを掘ろうと決心した。

Matahi Whakataka-Brightwell


ナートロイランギ ( Ngatoroirangi ) は、1000年前に部族をタウポ湖に先導した預言者です。
このナートロイランギの顔の他に、マオリ族の守護神である*タニファ ( taniwha )や、それからニュージーランドが多様な文化である事を象徴するために小さいなケルト調のデザインの像も加えて彫られました。

作業はマータヒと4人の助手によってすべて手彫りで、また夏の間のみ行われたため、完成するまで三年の年月が費やされました。
なお、作業をする為に組まれた足場の費用は地元の飲食店の客などから寄付されましたが、それ以外はすべて無償で行われています。


現在は、単にタウポの観光名所としてだけでなく、マオリ文化とマオリ彫刻の技術を次世代にまで伝承する貴重な場所として年々人気が高まってきています。

アクセスは湖面からのみで、カヤック、ボート、ヨットでアクセスするツアーが数多く催行されています。

余談ですが、このロック・カービングの制作者マータヒ・ブライトウェル は、ニュージーランドで特に子供たちの間で人気のあるワカ・アマ( waka ama ) と呼ばれるポリネシア諸島の伝統的なカヌーの競技会の発足者としても知られています。
また、1989年には21メートルの手製のカヌーでタヒチからニュージーランドを航海し、ヨット界の名誉ある賞を受賞しました。

*タニファ ( taniwha ) についてはこちらをご覧ください。

(出典:https://www.newzealand.com/nz/feature/mine-bay-rock-carving 
https://www.lovetaupo.com/en/see-do/art-culture/mine-bay-maori-rock-carvings/ )

あとがき


私自身は家族とともにヨット上からマオリ・ロック・カービングを見るツアーに参加しました。
15人乗りのヨットでタウポ湖を2時間半のクルーズです。
ちょうど天気も良く、湖上では少し寒く感じましたが毛布にくるまって、気さくなキャプテンのタウポ湖やロックカービング説明を聞いたり他の乗客と話したりするなどアットホームな雰囲気の中、のんびりと湖上を帆走し心身ともにリフレッシュできました。
お目当てのロック・カービングにもすぐ近くまで近づき、客の要望で何度もヨットを廻船してもらってカービングを色々な角度から楽しめ充分に堪能出来ました。
ただ、私の中学生の娘には二時間半の工程は時間が長く感じられ退屈だったようです。
小さなお子さん連れの家族には、短い時間のクルーズをお薦めします。

© Adam Bryce

短時間でカービングにアクセスする方法としてボートでクルーズという手段もあります。
安全で天候にも左右されにくいため、日程を選ぶのも楽なのかもしれません。
が、私がヨット上から見た全く個人的な感想ですが、ボートでマオリカービングを見るのは風情に欠けているように思えました。ですが、これはあくまでも私個人の感想です。

ロック・カービングのすぐ側まで近づくことができ、何より美しい自然を満喫する絶状の手段としてはカヤッキングがあります。醍醐味を味わうには最高ですが、時には2m近くの湖面の風相手に4時間近く漕ぐことになるので、それなりの体力が必要です。

ヨット、ボート、カヤックでマオリロックカービングにアクセスするツアー催行会社の詳細は、下のリンクをご参照ください。良いプランが見つかるといいですね。

https://www.newzealand.com/nz/boat-cruises-taupo
https://www.lovetaupo.com/en/see-do/sightseeing-tours-transport/scenic-cruises-water-activities/

Ngā mihi
wonderer

 

 

 

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1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。