Kia ora
マオリ神話の第三話の今回は、Taniwha ( タニファ ) を紹介します。
ウェリントン市民にとってなじみ深いTaniwha ( タニファ )ですが、タニファにまつわる話は実はニュージーランド各地で伝承され、現在でも社会的現象となるほどタニファは国民の間に根強く浸透しています。
Taniwha ( タニファ ) とは?
Taniwha ( タニファ ) は、マオリ神話に登場する生き物の名前です。
一般に海や川底、洞窟に住んでいるとされています。そして海の中では、潮流が変わるところ、波が立つところに住んでいると言われています。
Taniwha ( タニファ ) は、KAITIAKI ( カイティアキ:守護神 ) として敬われているものもあれば、人間の女性をさらって妻にするなど、危険な怪獣として見られることもあります。
言語学者の研究によれば、このTaniwha ( タニファ ) という言葉は、ポリネシア諸島の言葉ではもともと魚を意味していましたが、中には人食いサメや海獣を指す島もあるそうです。
Taniwha ( タニファ ) の特徴
二種類のタニファが存在し、それぞれが異なる特徴を持っています。
海に現れるタニファはクジラや大型のサメの形をしています。
このため、人食いサメのあだ名を持つホホジロザメは、マオリ語で mangō-taniwha ( マンゴ・タニファ : タニファのサメ )と呼ばれます。
一方、川や湖にすむタニファは、トカゲやNZ固有種 Tuatra ( トゥアタラ:ムカシトカゲ ) に似ていて背中にトゲがあります。
また、オスとメスの両方がいます。
例えば、Araiteuru ( アライテウル ) という名のタニファは、12匹の雄の子供を産み、Hokianga Harbour ( ホキアンガ・ハーバー:NZ北島の北部に位置 )を形成したと言われています。
Taniwha ( タニファ ) の伝説
タニファはポリネシア諸島から人々と一緒にカヌーでニュージーランドに渡り、そのカヌーの人々の子孫、つまりその部族を守るようになったというのが通説です。
守護神として、部族の Tohu ( トフ ) と呼ばれる祈祷師を通じてコミュニケートし、敵の部族が近づくと警告したり、時として溺れる人を助けることもあったそうです。
タニファは暗くて危険で気持ちが憂鬱になるような場所に住んでいるため、人々はタニファの住みかに近づくときはタニファに捧げものをしていました。
それが由縁で、現在でも、kumara ( クマラ:さつま芋 ) などの作物の収穫時には、最初にタニファに捧げる習慣が残っています。
*Kupe ( クペ ) は別の記事で紹介しています。
詳細はこちらをご覧ください。
また、タニファは部族や首相を賛辞する言葉として使われることもあります。
よく知られている例に、Waikato taniwha rau ( 100頭のタニファがいるワイカト ) と呼ばれる、Waikato ( ワイカト) 地方のTainui ( タイヌイ ) 部族があります。
守護神であるタニファは、人々が tapu ( タプ: 神聖な、崇拝すべき ) 掟を守っているか油断なく見張っています。
万が一、聖域の掟が破られた場合はその人々を罰します。特に他の部族に対しては危険で、他の部族の人間を襲って食べたという話もあるほどです。
ですが、通常マオリ族はタニファの裏をかいて打ち負かしたそうです。
● Tuhirangi ( トゥヒランギ )
ポリネシア諸島から人々と一緒にカヌーでニュージーランドに住み着いたと言われるタニファは10数匹に登ると言われていますが、そその中でも、巨大タコを追ってニュージーランドを一番最初に見つけた*探検家 Kupe ( クペ ) の守護神のタニファ、Tuhirangi ( トゥヒランギ ) は有名です。
トゥヒランギ は、特にクペにとって容易ではなかった Cook Strait ( クック・ストレイト:北島と南島の間の海峡 ) の航海を守ったとされています。
この為、1888年から24年にかけてこのクック・ストレイトを行き来する船を一緒に泳いで先導した Pelorus Jack ( ペロラス・ジャック ) と呼ばれたイルカは、このトゥヒランギの生まれ変わりとして崇められたほどです。
● Whātaitai( ファータイタイ )と Ngake ( ナケ )
その昔、ウェリントン沖にWhātaitai( ファータイタイ )と Ngake ( ナケ ) と呼ばれる二匹のタニファが住んでいました。
ある日この二匹が陸の近くを一緒に泳いでいると地震が起こり、ちょうどファータイタイが泳いでいた海の底が水面上に盛り上がり、このためファータイタイはそのまま陸の上で干上がってしまいました。
このおかげで現在のミラマー半島とウェリントン市の中心部が陸続きで繋がり、この部分はハタイタイと呼ばれるようになりました。
一方、動揺したナケは尾を大きく振り上げながら一旦海に出た後、鳥に変身し現在の Mt Victoria ( マウント・ビクトリア ) 上で嘆き悲しみました。この為、Mt Victoria ( マウント・ビクトリア ) は Tangi-te-keo ( 悲しみの鳴き声 )と呼ばれています。
* 上の彫刻は、ウェリントン市の中心部に掛けられている City to Sea Bridge の一部、Whātaitai( ファータイタイ )です。この City to Sea Bridgeについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
あとがき
タニファはマオリ神話として伝承されているだけでなく、最近はマオリ語の啓蒙活動のおかげもあり、メディアでもお茶の間でもよく口にされるようになりました。
一方、ある時には社会的現象として物議を醸し出したこともあります。
2002年のことですが、オークランドとハミルトンの間に国道建設が提案された際、その地域のマオリ部族 Ngāti Naho ( ナティ・ナホ ) が、部族の守護神であるタニファがその国道予定地に住んでおり、タニファを動かすと災いをもたらすと反対。結果として国道のルートから外れるようになったという話もあるくらいです。
タニファが如何に人々の生活に浸透しているのか、お分かりいただけたかと思います。
最後に、この編ではタニファを特集していますが、マオリ神話に興味がある方は是非下のブログも併せてお読みください。
マオリ神話に登場する色々な神々を紹介しています。
Ngā mihi
wonderer
* ( 参考:https://teara.govt.nz/en/taniwha#:~:text=Taniwha%20are%20supernatural%20creatures%20in,kill%20people%2C%20or%20kidnap%20women.
https://en.wikipedia.org/wiki/Taniwha )