NZの名匠監督オッタゴで撮影『ザ パワー オブ ザ ドッグ』

Kia ora

世界が待ち望んだ『The Power of the Dog (パワー・オブ・ザ・ドッグ)』の映画が劇場公開されています。

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は、ベネディクト・カンバーバッチとキルスティン・ダンストの豪華キャストが話題となっていますが、実はニュージーランド人が監督、そしてオッタゴで撮影されていることをご存知ですか?

ジェーン・カンピオンは『ピアノ・レッスン』で女性監督として初のカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した名匠監督。
この『パワー・オブ・ザ・ドッグ』も、第78回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞。早くもアカデミー賞受賞の呼び声が高まっています。

Netflix でも配信される予定ですが、せっかくのオッタゴの雄大な景色、劇場の大型スクリーンで観る機会をお見逃しなく。

☆『The Power of the Dog (パワー・オブ・ザ・ドッグ)』
2021年製作/128分/G/ニュージーランド・オーストラリア・イギリス・アメリカ合衆国合作/ジャンル:恋愛・西部劇/監督:ジェーン・カンピオン/出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キルスティン・ダンスト
Rotten Tomatoes 評価:8.5

 あらすじ

舞台は1920年代のアメリカのモンタナ州。フィルとジョージは大牧場を経営する兄弟。頭が良くカリスマがありカウボーイから慕われているフィルは反面冷淡で無慈悲、一方弟のジョージは全く正反対で心優しく周りを気遣う性格。そのジョージは地元の未亡人のローズを結婚し、ローズとその息子のピーターが家に移り住むことになる。
男らしいカウボーイとして抑圧的なフィルにとって、ローズとピーターの存在は許容外。ローズを残酷に追い詰め、繊細で弱々しく見えるピーターを鍛えようと厳しい態度で接する。やがてフィルの心理の均衡バランスが崩れたかのように隠された本性が表れる。

 感想

The Power of the Dog (パワー・オブ・ザ・ドッグ)』は、1967 年に書かれた同名の小説が映画化されたもので、人間の深層心理を描いた文芸映画です。

抑圧的な男性の深層心理が、大自然に囲まれたカウボーイ文化の中で、繊細にそして美しく見事に描かれています。

映画を見終わた直後の感想は、主人公や他の登場人物の幾重にも重なった心理を追っている内に、知らず知らずのうちにクライマックスを迎え、そして全く予想していなかった結末に驚いたというのが本音です。

美しい情景と細やかな描写、そして緩やかな展開に上手く嵌められてしまいました。
こうしてレビューを書いている間にも、まんまとしてやられたという気持ちが湧き、ますますこの映画が頭から離れなくなってきているほどです。

主人公のフィルを演じるベネディクト・カンバーバッチは、持ち合わせた知性を発揮しながらも、この映画では野性味に溢れたそして残忍であると同時に脆さを抱えた複雑な役柄を繊細に表現し、大成した役者としての力量を思い余すことなく見せています。
主演男優賞受賞、少なくとも候補に挙がることは間違いないでしょう。

他の俳優人の演技も素晴らしいですが、個人的に、ピーターの役を演じたオーストラリア人の俳優  コーディ・スミット・マクフィーと、若い使用人ローラを演じたニュージーランド人のトマシン・マッケンジー  の二人の初々しい演技が印象に強く残りました。今後の二人の活躍に期待したいと思います。

そして、モンタナの舞台として実際に撮影されたオッタゴの格別に美しい風景も称賛に値します。

NZ人の監督による優れた映画、素晴らしい演技、そして美しいNZの景色。文句無し5つ星です。
★★★★★

 監督 / キャスト プロフィール

 ▼ 監督  : ジェーン・カンピオン

本名: Elizabeth Jane Campion。1954年、ニュージーランドの首都ウェリントンに生まれ、オーストラリアのシドニーで育つ。父は舞台監督、母は舞台俳優。
ウェリントンのビクトリア大学で人類学を専攻、その後オーストラリアで絵画と映画制作を学ぶ。映画の監督、脚本、テレビドラマの制作を手掛ける。
1982年、短編映画『ピール』を発表。カンヌ国際映画祭の短編映画部門パルム・ドールを受賞。
1993年、『ピアノ・レッスン』では初の女性監督、またNZ出身としてカンヌ国際映画祭パルム・ドール賞を受賞。同映画ではアカデミー脚本賞、主演女優賞、助演女優賞、などの部門でも受賞し一世を風靡。
1997年、ヴェネツィア国際映画祭の審査委員長を務め、北野武監督の映画『HANA-BI』金獅子賞をもたらす。
2006年、アメリカ合衆国製作の北朝鮮の日本人拉致事件を扱ったドキュメンタリー番組『めぐみ 引き裂かれた家族の30年』の制作総指揮を執る。
2021年、監督作品『パワー・オブ・ザ・ドッグ』でヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞。

 ▼主演:ベネディクト・カンバーバッチ(フィル役)

本名:ベネディクト・ティモシー・カールトン・カンバーバッチ(Benedict Timothy Carlton Cumberbatch )
1976年ロンドンに生まれる。両親ともに俳優である。曾祖父は有名な海軍軍人で、ヨーク朝最後の国王リチャード3世の血縁でもある。
中学・高校の名門校ハーロー校在学中に演劇を始める。卒業後チベットの僧院で英語を教えた後、マンチェスター大学、それからロンドン音楽芸術学院で演劇を学ぶ。
2001年より、劇場で重要な役を演じ始め、ローレンス・オリヴィエ賞主演男優賞受賞後、テレビや映画で活躍。
主な出演作品 : 『シャーロック』、『ホビット 思いがけない冒険』、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』『フィフス・エステート/世界から狙われた男』、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』、『マイティ・ソー バトルロイヤル』、『クーリエ:最高機密の運び屋』『パワー・オブ・ザ・ドッグ』、2022年公開予定『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

2015年、イギリス王室より勲章を受賞
2018年、ハリウッド業界の男女賃金格差問題を取り上げ、女性俳優にも平等な出演料が支払われる作品にのみに出演すると表明


 あとがき

繰り返しなって申し訳ないですが、監督がNZ の名匠ジェーン・カンピオン、美しいオッタゴの地で撮影された『パワー・オブ・ザ・ドッグ』、まずは劇場の大画面で美しい雄大な景色と雰囲気を楽しみ、それから Netflix で振り返りながら見ることをお薦めします。

余談ですが、この『パワーオブ・ザ・ドッグ』を2020年に撮影中にNZはロックダウンに入り、メインキャストはそのままNZでロックダウンを過ごしたそうです。

追加情報として、この『パワーオブ・ザ・ドッグ』バラック・オバマ元米大統領の2021年に公開されたお気に入りの映画14本の中に選ばれています。無類の映画好きとして知られているオバマ元大統領は「芸術は常に心を支え、栄養を与えてくれる」とコメントした上で、「この14本の作品では力強い物語が語られおり、みなさんも楽しんでくれることを願う」と推薦しています。
あのオバマ元大統領がシネマファンで、しかも『パワーオブ・ザ・ドッグ』が好きな作品に選ばれているなんて嬉しい限りです。
尚、『パワーオブ・ザ・ドッグ』の他には、「ドライブ・マイ・カー」、「サマー・オブ・ソウル」「ウエスト・サイド・ストーリー「Pig(原題)」「PASSING 白い黒人」「The Card Counter(原題)」「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」「The Worst Person in the World(わたしは最悪。)」「Old Henry(原題)」「最後の決闘裁判」「マクベス」「C’mon C’mon(原題)」「アイダよ、何処へ?」が選ばれています。

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1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。