kia ora
今回はニュージーランドで公開されている映画、『 Juniper ( ジュニパー)』をお届けします。
『Juniper ( ジュニパー)』は、イギリスの往年の女優 Charlotte Rampling ( シャーロット・ランプリング ) が主役ですが、れっきとしたNZ映画です。監督、脚本はニュージーランド人、またAucklandが舞台となっています。
内容は、人々の心の機微が優雅に描かれた優れたヒューマンドラマで、アートハウスやインディ系の映画ファンは勿論、大人の女性にお薦めの映画です。
Juniper: Charlotte Rampling shines, but Kiwi drama has other great qualities too https://t.co/gudaaYZtO4
— The Dominion Post (@DomPost) October 22, 2021
☆題名:『 Juniper (ジュニパー)』
ジャンル:ドラマ/上映時間94分/ニュージーランド製作/監督・脚本 Matthew Saville ( マシュー・サビール)
出演:Charlotte Rampling ( シャーロット・ランプリング )、George Ferrier ( ジョージ・フェリア)
目次
あらすじ
舞台は1990年代のオークランド西部。17歳のサムは自己破壊な行動を繰り返す高校生。ある週末に寄宿学校から帰省すると、イギリスから移り住んだ祖母のルースと対面する。サムは、否が応でも足が悪く車いす生活のルースの介護の手伝いをすることになる。ルースはアルコール依存症の上、サムに対しても容赦ない厳しい性格。サムはルースと相いれずますます破壊的になるが、次第にルースの正直で的を得た言葉に心を開くようになる。お互を認めるようになった二人の関係は良好に向かい、そしてサムはやがて若者としての人生を取り戻しつつ一方で、ルースは運命を直視せざるを得ない状況に陥る。
感想
悲喜こもごもなそれぞれの人生を、時にはブラックユーモアを交じえながら、甘く切なくそして優雅に描写。
そして、社会問題を反映しながらも重くならず洗煉された展開で、観終わった後の後味も良く、文句なく星五つです。★★★★★
主役ルース役は、脚本と監督を手がけた Matthew Saville ( マシュー・サビール)自身が17歳の時にヨーロッパから移住して一緒に暮らし始めた実在の祖母がモデル。実生活でも祖母はとにかく大量のジンを、それも朝から飲んでいたとか。
サビールはこの映画の脚本を書き始めた時から、祖母のルース役を演じるのはイギリスの Charlotte Rampling ( シャーロット・ランプリング ) 以外には考えられなかったそうで、一旦ランプリングに「とてもいい話で脚本も良く出来ているが、あなたはまだ若いし経験が浅い」という理由で出演依頼を断られると、ランプリングが住むフランスまで出向いて説得。
それ程までにサビールが惚れ込んだランプリングは、アルコール依存症でありながらインテリジェントで、時に可憐な乙女の顔を持つルース役を素晴らしいまで表現。
ランプリングの演技が映画評論家の間で絶賛を受けているのは当然と言えるでしょう。
ランプリングの相手役の17歳の少年サムに抜擢された George Ferrier ( ジョージ・フェリア) は当時ロサンゼルスで演劇を学び始めたばかりで、この映画ではサムの役を自分自身に重ねて演じたとか。そして大ベテランの女優ランプリングと良い関係を持つために、撮影が始まる前にランプリングに手紙を書いて親交を深めたそうです。
それが功を奏し、フェリアもまた、多感な17歳の少年を見事に演じ切っており、今後の活躍が期待されるところです。
映画のタイトル Juniper ( ジュニパー) は、ジンの香りの元となるセイヨウネズという樹木を意味します。
この映画自体が夏の夕方に喉を潤すジンのような映画みたいなもの。
特に大人の女性にはお薦めです。
人物プロフィール
▼ 脚本・監督 :Matthew J Saville ( マシュー・サビール)
南アフリカ生まれ。母親がNZ人でオークランド郊外で育つ。大学生時代に演劇に目覚める。イギリスの劇場などで活躍し俳優として確立した一方で、制作・監督を始め、2011年にショート・フィルムで監督としてデビューし、海外の映画祭で上映される。
▼ 主演 Charlotte Rampling ( シャーロット・ランプリング )
1946年イギリスに生まれる。18歳になるまで軍人の父親の任務地のジブラルタ、フランス、スペインなどで過ごす。14歳の時に姉と一緒にシャンソンを歌い始める。18歳の時にモデルとしてスカウトされCMに、その後映画やテレビドラマに出演する。1970年代から数々のハリウッドの名作にも出演。1976年にはアカデミー賞を受賞。2000年代には『氷の微笑2』『ある公爵夫人の生涯』『ユーフォリア/EUPHORIA』や、最近では『DUNE/デューン 砂の惑星』に出演。2015年『45 years (さざなみ)』では、ベルリン映画祭の主演女優賞を受賞。
ボーグやエル誌のカバーを飾った他、第56回ベルリン映画祭の審査長を務めたこともある。
二度結婚しており、最初のニュージーランド人との結婚で息子が一人いる。
あとがき
残念ながら少年サム役のGeorge Ferrier ( ジョージ・フェリア ) の情報が公開されておらず、年齢などもわかりませんが、持ち前の容貌と演技力でこれからも色々な作品で活躍することでしょう。
フェリアの他にも、脇役にNZのテレビのCMなどでおなじみの顔が登場しています。
神父役は、一昔前にVISAのCMでコミカルなオールブラックスの追っかけ役をしていた俳優です。
ニュージーランドに由縁のある方、機会があれば『Juniper ( ジュニパー)』を観てみて下さいね。
勿論、お手元にはジントニックをお忘れなく。
Ngā mihi
wonderer