ノルウェー映画『わたしは最悪。』レビュー★★★★★三十路の女性でない人にもお薦め 

Kia ora

『The Worst Person In The World(邦題:わたしは最悪。)』が日本に先駆けてニュージーランドで公開されました。

『The Worst Person In The World(邦題:わたしは最悪。)』は、三十路に立つ女性の恋愛と仕事の狭間に揺れる様子を、美しいノルウェーの首都オスローで撮ったダーク・コメディタッチのロマンティックドラマ。

Rotten Tomatoesのレビューの現在の支持率は96%、今年のアカデミー賞では、『ドライブ・マイ・カー』(日本)と並んで国際長編映画賞と脚本賞にノミネート。バラック・オバマ元米大統領の2021年に公開されたお気に入りの映画14本の中にも、『ドライブ・マイ・カー』とともに選ばれています。

三十路の女性でない人にもお薦めします。

映画情報


題名:『The Worst Person In The World/ わたしは最悪。』

2021年製作/128分/言語:ノルウェー語/撮影:ノルウェー、フランス、スウェーデン、デンマーク
ジャンル:ダーク・ロマンティック・コメディドラマ
監督:ヨアキム・トリアー
出演:レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー
日本公開:2022年7月1日/配給:ギャガ
受賞:カンヌ映画祭:パルム・ドール賞ノミネート、主演女優賞を受賞
アカデミー賞 脚本賞、国際長編映画賞ノミネート

あらすじ

 

ユリアはこれまで衝動に駆られて方向転換を試みるがどれも中途半端。おかげで30歳の人生の節目を迎えても、将来とキャリアの方向性が定まらない。それに加えて子供を設け安定した家庭を望むボーイフレンドとの恋愛関係でも悶々としている。

ある日ユリアはふとしたきっかけで新しい恋愛に陥る。気分一新、新たな人生の一歩が始まることを期待したユリアだったが。。。

感想

 

ノルウェーのオスローを舞台に現代の女性が抱える愛と人生の意義の葛藤を痛快に描いたコメディ・ドラマ。

色々なことを経験しながら、時には紆余曲折したり人を傷つけたりしながらも、自分の気持ちに正直に生きながら道を歩む。ある程度の人生経験をしている人なら女性でなくても共感できるテーマ。

ありきたりになりがちなテーマを退屈せず最後まで面白く観られたのは、映画が痛快なブラック・コメディ仕立てのおかげ。見終わった後に清々しい気持ちになったほど。

何といっても主役のユリアを演じるレナーテ・レインスヴェ演技力に脱帽。自由奔放ながらも、三十路を迎える女性の微妙な心理を繊細に表現。

監督のヨアキム・トリアーはそのレナーテの才能に惚れ込んで、この映画の脚本を書かいたとか。
そしてレナーテ自身はこの映画でカンヌ映画祭で主演優賞を受賞。今後は世界の映画スターとして活躍すること間違いなし。

『わたしは最悪。』は、「人生って案外こういうものなのかもしれないよね」と明るくつぶやきたくなる。そこには全くわざとらしさがない。良質のコメディ・ドラマ。
★★★★★

監督/キャスト


◯ 監督ヨアキム・トリアー

Joachim Trier  1974年、デンマークのコペンハーゲンに生まれ、両親の国ノルウェーで育つ。祖父が映画監督/脚本家、父親は映画音響師。10代のときにスケートボードのチャンピオンとなり、自身のスケートボードを滑る様子を撮影した。デンマークとイギリスの学校で映画制作を学ぶ。2006年に『Reprise』で映画監督としてデビュー。トロント国際映画祭などで上映され、海外からも高い評価を受ける。2作目の『Oslo, August 31st』はカンヌ国際映画祭で上映、2015年に公開となった第3作目『Louder Than Bombs』は、日本で初めて公開となる。2018年ににはカンヌ映画祭の審査委員長を勤める。2021年『The Worst Person In The World(邦題:わたしは最悪。)』でカンヌ映画祭:パルム・ドール賞ノミネート、主演女優賞を受賞。2022年のアカデミー賞の脚本賞、国際長編映画賞ノミネートされた。

主演 ユリア役 :レナーテ・レインスヴェ

Renate Reinsve   1987年ノルウェーのSolbergelvaに生まれる。9~16歳までに受けた経験がトラウマとなり現在でも本人は口にすることがない。16歳で高校を退学し、スコットランドに行くが資金が底をつき慈悲を受けバーテンダーの仕事をする。2011年ヨアキム・トリアー監督製作2作目の『Oslo, August 31st』で映画デビューした後に、映画やテレビ番組に出演。が、俳優業をあきらめてカーペンターになるつもりでいたときに、『わたしは最悪。』のユリア役に抜擢される。同役でカンヌ映画祭主演女優賞を受賞。

あとがき

 

外国映画の邦題名には原題にそぐわないと議論されるものが多々ありますが、この『 わたしは最悪。』の邦題は映画が伝えようとするメッセージにぴったり。このタイトル以外には考えつかないほど、よく出来た邦題ですよね。

冒頭に、バラック・オバマ元米大統領の2021年に公開されたお気に入りの映画14本の中に『ドライブ・マイ・カー』と共に選ばれていると書きましたが、オバマ元米大統領は無類の映画好きで「芸術は常に心を支え、栄養を与えてくれる」と言われているとか。

そのオバマ元大統領リストに『The Worst Person In The World(邦題:わたしは最悪。)』とともに選ばれている『ドライブ・マイ・カー』や、『ウエスト・サイド・ストーリー』『パワー・オブ・ザ・ドッグ』をレビューしていますのでよかったら併せてご覧ください。

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ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。