『Licorice Pizza リコリス・ピザ』レビュー 昔懐かしいアメリカの青春映画

kia ora

今回お届けするシネマは『リコリス・ピザ(原題: Licorice Pizza)』です。

『リコリス・ピザ』は1970年代のロサンゼルスを舞台にレトロで昔懐かい感覚に溢れた今どき珍しい青春映画。ポール・トーマス・アンダーソン製作・脚本・撮影・監督、主演のアラナ・ハイムクーパー・ホフマンの新人に加え、脇役にショーン・ペン、ブラッドリー・クーパーなど往年の名優が陣取っています。

日本では7月1日公開予定。お見逃しなく。

映画詳細

2021年製作/134分/PG12/アメリカ
原題:Licorice Pizza
配給:ビターズ・エンド、パルコ
製作・脚本・撮影・監督 : ポール・トーマス・アンダーソン
キャスト:アラナ・ハイム、クーパー・ホフマン、ショーン・ペン、ブラッドリー・クーパー、トム・ウェイツ
賞:第94回アカデミー賞 作品、監督、脚本の3部門にノミネート

あらすじ

1973年、ロサンゼルスのサンフェルナンド・バレー。俳優活動を行う高校生のゲイリー・ヴァレンタイン(クーパー・ホフマン演)は、ある日役のオーディションで10歳年上の女性アラナ・ケイン(アラナ・ハイム演)に出会い恋に落ちる。ゲイリーとアラナは互いに惹かれ合うが、時にそれぞれの道を歩みながら、楽しさと物悲しさが入り交じった甘酸っぱい恋を通して成長していく。

 

感想

青春って。。。と、昔がとても懐かしくなりました。

主人公の二人は特別に美男美女じゃなくどこにもいそうな若者で現実味大。それに細々とした所までこだわった70年代のファッションやセットが加わって、若い恋の痛みと嬉しさがより斬新に甦ってきました。

その一方で、どこにもいそうな主人公の二人が、人生を前向きに突っ走りながら成長していく様は、いかにも個人主義のアメリカ合衆国ならではかもしれません。

そしてその主人の二人、アラナ役のアラナ・ハイムとゲイリー役のクーパー・ホフマンの二人の瑞々しさが光っています。アラナは、映画の舞台であるサンフェルナンド・バレーの出身で、人気のポップバンドの「ハイム」三姉妹の末っ子です。そしてクーパー・ホフマンにはどこか懐かしい面影があるなと思いながら観ていたら、故フィリップ・ホフマンの息子でした。

他にも、ショーン・ペン、ブラッドリー・クーパー、トム・ウェイツと言った大物俳優が脇役として出演しています。特にブラッドリー・クーパーのエキセントリックな演技は見物です。

私自身ラブロマンスや青春コメデイをあまり好んで観る方ではありませんが、この『リコリス・ピザ』は別物。等身大の主人公がひたむきに愛と人生を歩み、そしてただ甘いだけでなく酸っぱさも噛み締めた現実的な青春物語として楽しみました。無心で映画を観ていた子供の頃に帰ったような気分で。

欲を言えばクライマックスが消化不良気味。せっかく最後まで話がぐいぐいと引っ張ってきたので、もう少しクライマックスに捻りがあったらもっとよかったと思います。

星は4つ半 ★★★★1/2

監督/キャスト

● 脚本・監督・撮影:ポール・トーマス・アンダーソン

PAUL THOMAS ANDERSON
1970年生まれ、ロサンゼルス出身。9人兄弟の3番目。父親は俳優兼TV司会者。
12歳でビデオカメラで撮影を始める。ニューヨーク大学中退。 TV番組のプロダクション・アシスタントを経験後短編映画を製作し始める。1992年短編『シガレッツ&コーヒー』がサンダンス映画祭で公開され注目を浴び、その後『ハードエイト』で初の長編映画を監督。1997年『ブギーナイツ』で名を知られるようになる。その後も『マグノリア』(99)『パンチドランク・ラブ』(02)『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)『ザ・マスター』(12)『インヒアレント・ヴァイス』(14)『ファントム・スレッド』(17)を監督。
この『リコリス・ピザ』は、第94回アカデミー賞 作品、監督、脚本の3部門にノミネートされた。
映画以外にも、ミュージックビデオも製作しており、『リコリス・ピザ』主演のアラナ・ハイムが属するバンド、ハイムにも提供している。

 

● アラナ役: アラナ・ハイム

© Raph_PH via Wikimedia

ALANA HAIM 。1991年ロサンゼルスにてユダヤ人家族に生まれ、『リコリス・ピザ』が舞台である サンフェルナンド・バレーで育つ。三人姉妹の三女である。父親はイスラエルのプロのサッカー選手で1980年にアメリカ合衆国に移住。母親はフィラデルフィア出身で小学校でアートを教えていた。両親とも音楽が好きで、幼い頃から姉二人とともにボーカール、ギター、ピアノのレッスンを受け、チャリティーなどの舞台で家族でフォークを演奏していた。
2007年、姉妹バンド「ハイム」を結成。デビューアルバム“Days Are Gone”はグラミー賞最優秀新人賞にノミネート。17年、“Something to Tell You”を発表。三番目のアルバム“Women in Music Pt. III”は、アメリカやイギリスのアルバムチャート1位を獲得。また、女性のみのロックバンドとして初めてグラミー賞の最優秀アルバム賞に、そして収録曲の“The Steps”は、最優秀ロック・パフォーマンス賞にノミネートされる。
初出演した映画『リコリス・ピザ』の演技でも高い評価を受け、ゴールド・グローブ、バフタなどの主演女優賞にノミネートされた。

ゲイリー・バレンタイ役:クーパー・ホフマン

COOPER HOFFMAN 2003年アメリカ合衆国生まれ。三人兄弟の長男で、父は俳優であった故フィリップ・シーモア・ホフマン、母は衣装デザイナーのミミ・オドネル。幼少時代の情報は明らかにされていない。シャイな性格で、また父親のように演技できないとの思いで人前に立つのを避けていた。17歳のときに監督のポール・アンダーソンから送られた『リコライス・ピザ』の脚本を読んだ瞬間に、主役のゲイリーは自分の役だと確信、映画撮影中も演技を楽しんだという。この演技でゴールド・グローブの主演男優賞にノミネートされるなど高い評価を得ている。

あとがき

映画の題名の  “Licorice Pizza”は、1970年代にカリフォルニア州で流行っていたレコードチェーンの名前から取られたものだそうです。
リコリスは独特の捻りの効いた甘さがあり、この映画にピッタリですよね。

『リコリス・ピザ』は久々に映画って楽しいなと思える作品。ハリウッド業界でもっとこういう作品を作って欲しい思う今日この頃です。

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ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。