Kia ora
ニュージーランドの首都ウェリントンにあるテパパ国立博物館では、今新たにロビン・ホワイトの個展が開催されています。
ロビン・ホワイトはニュージーランドの人々や風景、建築様式などの数々の名作で知られており、NZ国民には最も親しみのあるアーティストの一人です。
現在も南洋諸島の事情を通して平和主義を唱えるなど、精力的に創作活動を続けるロビン・ホワイトの一生涯を通した作品が一同に会するテパパの個展、ウェリントンにお越しの際は足を踏み入れてみてはいかがですか?
目次
『Robin White: Te Whanaketanga Robin White: Something Is Happening Here 』
作品紹介
その『Robin White: Te Whanaketanga Robin White: Something Is Happening Here 』で展示されている幾つかの作品を紹介します。
〇 『 Fish and chips, Maketu, 1975 』油絵

Fish and chips, Maketu by Robyn White, 1975 Auckland Art Gallery Toi o Tāmaki, purchased 1975
『フィッシュ・アンド・チップス,マケトゥ』は、ロビン・ホワイトの代表作となった風景画の一つです。
マケトゥと呼ばれるベイ・オブ・プレンティ地方の小さな町に佇むフィッシュ・アンド・チップスのお店の建物は、70年代を代表する建築様式です。力強い輪郭とシンプルなフォームは無機質ながらも透明感があり、さらにパウダー・ブルーの色合いでチャーミングに描かれているこの絵は、70年当時のニュージーランドの人々のイメージを象徴していると評論家の間で高く評価され、現在でもニュージーランド国民の間でもこよなく愛されています。
〇『Mere and Siulolovao, Otago Peninsula、1978』シルクスクリーン

NameMere and Siulolovao, Otago Peninsula by Robin White; 1978
ロビン・ホワイトの友人のメレとその娘のシウロロバオの肖像画。二人の視線はまっすぐ正面ではなく下向きで、まるでカメラに向かって構える前にとられたスナップ写真のよう。また二人の後ろには如何にもコロニアル様式の小屋風の家、それも赤いトタンの屋根が色褪せた古い家で、その軒先には洗濯物が風になびいており、暑い夏の人々の生活の様子が伺えます。
モデルのメレはダニーディンでマオリや南洋諸島出身の人々の為のコミュニティの推進グループのリーダーで、マオリの血を引きそして子供を持ちながらアーティストとしての創作活動に喘いでいたロビン・ホワイトと深い交流がありました。後にこのプリントは、女性を支援する機関のポスターにも採用され、フェミニズムの象徴として今でもNZ国民の記憶に残っています。
アーティストして名が出たロビン・ホワイトは人々が安価でアートを購するために、大量生産する手段として*シルク・スクリーンの技法を用い、この『メレとシウロロバオ』以外にも数多くの作品を創っています。
*シルクスクリーン(Screen printing)は、版画の技法の一種で、メッシュ状の版に孔(あな)を作り、孔の部分にだけインクを落として印刷するシンプルな印刷方法。版さえ作れば何枚でもプリントを刷れることができ、1枚あたりのコストが低くなる。
◯ 『 Living in a material world 2017 』タパ・クロス

Living in a material world 2017 from the series of ” Something Is Happening Here ” by Robyn White and Tamari Cabeikanacea
*バハイ教の信仰者であるロビン・ホワイトは夫と子供と一緒に、宣教の為南洋諸島のキリバス共和国に17年間住んでいました。NZに帰国後は、*タパ・クロスと呼ばれる南洋諸島の独特の素材を用い彼女の世界観を表現しています。
2017年に製作された この『Living in a material world 2017 』は、蟹がティー・ポットの中に、魚がカップの中に、サバの缶詰がテーブル上でケーキのように飾られ、その横にはインド移民によりフィジーに導入された bulbul 鳥が飛んでいます。ものがあるべきではないところに置かれ、見る側は一瞬困惑してしいます。
この作品は、フィジーの混沌とした歴史と世情に対し社会観、スピリチュアル性、環境問題意識を表現する、” Something Is Happening Here ” のシリーズの一環として製作されています。
尚、現在もタパ・クロスを使って世界観を伝える創作は続いています。
*バハイ教
19世紀現在のイランで生まれた宗教。人種差別とナショナリズムを拒絶し、人類の平和、男女平等、などを教義し、世界的な普遍宗教と理解されている。
*タパ・クロス
南太平洋諸島で桑の木の樹皮を搗いて作られる紙に似た布。
Robyn White プロフィール

© New Zealand Government, Office of the Governor-General via Wikimedia
Dame Robin Adair White
1946年7月、ニュージーランドの Te Puke ( テ プケ ) に生まれる。マオリの Ngāti Awa 族の血を引く。7人兄弟の末っ子で、オークランドのエプソンで育つ。
1967年アートの学校として最高峰の Elam Schoolを卒業。ElamではNZ アートの巨匠Colin McCahonに師事する。
ウェリントン郊外の高校でアート教師として教壇に立ちながらスクリーン・プリントの技法を用いた創作活動を始め、自身の油絵『Mangaweka ( 1973 』などをプリントとして再販する。この頃多くの作家と交流する。

Mangaweka Print by Robyn White
1972年バハイ教の宗教活動の一環として、ダニーデンに移り、二人の子供の育児をしながら画家として専念する。
1982年バハイ布教のためキリバス共和国に移住。木版画を用いて創作活動を続ける。1999年、NZに戻る。以来 Mastertonに住み、フィジーと往き来しながら南洋諸島のアートを表現している。
世界中の展示会で展示され、2021年には東京の森美術で開かれた『アナザーエナジー展:
挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』に半世紀に渡って活動する女性として選ばれた。
2003年エリザベス女王誕生 叙勲。2009年には爵位、Dame の称号を授与。
アート会場/テパパ情報
個展名 : 『Robin White: Te Whanaketanga Robin White: Something Is Happening Here 』
開催期間 :2022年9月18日迄
場所 : テパパ国立博物館4階
入場料 : 無料
● テパパNZ国立博物館
場所 : 55 Cable Street, Wellington 6011, NZ
開館日 : 10時~6時 クリスマス日を除き無休
入館料 : 無料
HP : https://www.tepapa.govt.nz/
あとがき
マオリの女性として、母として生きながら、現在も世界平和や環境問題意識を表現すべく創作活動を続けるロビン・ホワイトは称賛に値 します。
今回ご紹介しているロビン・ホワイトの個展『Robin White: Te Whanaketanga Robin White: Something Is Happening Here 』は、油絵、スクリーン・プリント、タパ・クロスなどの異なる素材の作品が目を楽しませてくれる他、ニュージーランドや南洋諸島の歴史や文化が伺えます。
入場料は無料ですので、ウェリントンを訪れた際は、是非足をお運び下さい。
Ngā mihi
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