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2015年にガリポリの戦いの100周年記念としてオープンしたテパパ博物館の『ガリポリ展』。
2016年には世界で最も魅力のあるアトラクションの一位に選ばれ、今現在実に4百万人の入場者を記録しています。
何故それまでにテパパの『ガリポリ展』が人気を博しているのか、その魅力に迫ります。
これからテパパを訪れる予定の方は是非最後までご覧下さい。
はじめに
ニュージーランドの首都ウェリントンにある国立博物館テパパの『Gallipoli: The Scale of the War ( ガリポリ展 )』は、オープンして2015年にオープンして以、ニュージーランド国内のみならず海外からも絶大な人気を博しています。オープンして8年が経った今でも入場に長蛇の列ができるほどです。
日本人にはあまり馴染みがありませんが、ガリポリの戦いは1915年にニュージーランドが初めて経験した悲惨な戦争で、その100周年を記念して『ガリポリ展』が一般公開されました。
この『ガリポリ展』の製作者は「Weta Workshop ( ウェタ・ワークショップ)」。ウェタ・ワークショップは、ウェリントンにある映像製作スタジオで、特殊効果の技術で世界的に知られています。『指輪物語』や『ホビット』を製作したと言った方がわかりやすいかもしれませんね。最近では『アバター』のアニメーション製作でアカデミー賞を授賞しています。
そのウェタ・ワークショップが制作した『ガリポリ』展が、これまた世界で三本の指に入る博物館テパパで開かれており、しかも入場料は無料。それだけでも充分にみる価値がありますが、実際に想像以上の迫力に圧倒されるほど見応えがあります。
これから、その『ガリポリ展』の見どころなどを紹介していきます。
テパパのガリポリ展
ウェタ・ワークショップ制作のテパパ博物館の『ガリポリ展』は、戦争という尋常ではない状況に置かれた8人のニュージーランド人の視点で語られています。この8人は英雄として崇められた人々ではありません。どこにでもいるごく普通の人々です。
そのごく普通の8人が、巨大なモデルとして再現されています。初めて見た時はその迫力に思わずのけ反ってしまったほどです。そして皮膚や、汗、それから毛の一本一本までが実に綿密に本物そっくりに出来ていて、モデルがこれほどまで大きくなかったら生身の人間と間違いそうなくらいとにかくよく出来ています。
それもその筈、気が遠くなるほどの手間と時間をかけてこの『ガリポリ展』は製作されています。
ここに、その『ガリポリ展』製作にまつわる裏話をまとめて紹介します。
? ガリポリ展の製作うらばなし
- 巨大モデルは実物の2.4倍の大きさ。最大限の効果を出すとして、この2.4倍の数字が弾き出された。
- 皮膚は蝋ではなくファイバーガラス(ガラス繊維)で作られた。
- 毛は人間と馬やアルパカなどの動物の毛を使用。すべて一本づつ手で植毛されている。因みに上の写真の兵士の髪の毛だけで5千本ある。
- ガリポリ展の製作に24,000 時間が費やされた。人ひとりの1日8時間、週5日の労働時間に換算すると、12年間である。 別にモデルの人物の経歴のリサーチにも膨大な時間が費やされた。
巨大モデルは上の写真のような腕を怪我しながら戦い続ける勇敢な兵士だけではありません。
蝿がたかった食べ物に虚しい表情を浮かべる兵士、負傷した兵士を救えず失意にくれる医者、弟たちが戦死したことを知りすすり泣く看護婦などがあります。
ガリポリの戦いは、兵士だけでなく沢山の国民を巻き込み、それだけにどれほど悲惨だったのかを物語っています。
圧巻は、マシンガンを発射しているマオリ兵士のブースです。アドレナリンで興奮している顔の表情と、背後に流れるマオリのHAKA(ハカ)の音響効果で、前線で兵士が戦っている臨場感が味わえます。
? 見どころは巨大モデルの他にもある
巨大モデル以外にも、『ガリポリ展』には沢山の見所があります。3Dマップ(立体地図)がその一つの例で、ガリポリ半島のアンザック岬に到着したニュージーランドを初めとする連合軍の兵士たちと、対するオスマン・トルコ軍の兵士の陣地どりを巡る攻防がつぶさにわかります。
その他にも、塹壕の兵士たちの生活模様を紹介するミニチュアや写真、3D映画、それから巨大モデルの人物の生い立ちから亡くなるまでのプロフィール、武器各種についてなど、ふんだんな情報が最新技術を使ってわかりやすく説明されているのが大きな特徴です。
? 混雑を避けて見るには?
『ガリポリ展』をじっくり見て回るとゆうに30分はかかります。
週末やスクール・ホリディ中は午前中は混みあいがちですので、ゆっくり見学したい場合は午後からの入場をお薦めします。
午前中しか時間がない方には、アーリーバード(特別早朝入場)も用意されています。テパパ博物館の一般会館30分前に入場し、人込みを避けて静かな環境で見学できます。
こちらは有料で一人15ドル、事前に予約が必要です。
予約はこちらから。
https://www.tepapa.govt.nz/visit/guided-tours/gallipoli-arly-bird-entry-930am
★ ニュージーランド国立博物館テパパ・トンガレワ
場所 : 55 Cable Street, Wellington 6011, NZ
開館時間 : 9時30分 ~ 6時 ( 各展示の一般入場は10時より)クリスマス日を除き無休
入館料 : 無料
HP : https://www.tepapa.govt.nz/
ガリポリの戦いとは
これから、『ガリポリの戦い』について紹介します。
ガリポリは現在のトルコのガリポリ半島を指します。ガリポリ半島はトルコの西側、ヨーロッパ側に位置し、半島の西側はエーゲ海に面しています。
そのガリポリ半島に、第一次世界大戦中の1915年4月25日、イギリス連合に加わってニュージーランド軍とオーストラリア軍が上陸しました。
連合軍がドイツ側についた当時オスマン・トルコと呼ばれたトルコを叩いてドイツ側の気を引き、その間イギリスはドイツを攻めるという、当時のイギリス海軍大佐のウィンストン・チャーチルの策略でした。
4月25日の上陸からおよそ半年の間、ニュージーランド、オーストラリア、イギリスの連合軍はトルコ相手に戦いました。過酷な状況の中で苦戦を強いられ、結局連合軍はトルコ軍前線を突破することなく、惨憺たる結果でガリポリから引き揚げました。このガリポリの戦いで、8,500人のオーストラリア人、2,800 人のニュージーランド人兵士の命が失われています。ニュージーランドに至っては、参加した兵士の半数以上は生きて戻ることができませんでした。
この為、ニュージーランド、オーストラリアとイギリスでは、4月25日は Anzac Day (アンザック・ディ)として、国を挙げて亡くなった兵士を追悼する祭日に定められています。このアンザック・ディは、毎年各地で dawn ceremony と呼ばれる夜明けに始まる追悼式典が行われています。
ウェタ・ワークショップ
それでは、これまで紹介したテパパの『ガリポリ展』を制作者であるウェタ・ワークショップについて簡単に紹介します。
Wētā Workshop 特殊効果や映画セットの制作会社。ウェリントン空港近くの Miramar 所在。ウェタ(Wētā)は、ニュージーランド固有種の昆虫の名前である。
1987年、Sir Richard Taylor (リチャード・テイラー)と Tania Rodger(タニア・ロジャー)が創設。NZ国内TV番組の『ハーキュリーズ』『ジーナ』や映画『ヘヴェンリー・クリーチャーズ』の製作に関わる。1993年、別会社 デジタル部門を独立して別会社Wētā FXを設ける。ピーター・ジャクソン監督の『指輪物語』『ホビット』『キング・コング』など数々を制作し、アカデミー賞を受賞。
尚、このウェタ・ワークショップにもツアーが行われています。ツアーでは、ガリポリ展の巨大モデルの他、映画の製作などを見ることができます。一時間30分で料金は大人49ドルです。
予約や詳細はこちらまで。
あとがき
一般のニュージーランド人にはあまり知られていないようですが、このガリポリの戦いに向かったニュージーランドとオーストラリアの軍艦の輸送に日本の空母「伊吹」が護送しています。
ニュージーランド人とガリポリの戦いについて話す機会があれば、言ってみてください。たいていの場合、相手にびっくりされるかと思います。
Ngā mihi
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