テパパ博物館の新マオリ展 : 大航海/カヌー/ウナギ仕掛け篭など

ニュージーランドの首都ウェリントンにある国立博物館テパパに、新しいマオリ文化の展示が登場しています。

新しい展示は、ワカと呼ばれるカヌー、ヒナキと呼ばれるウナギ取りの仕掛け篭、それからコンテンポラリー・アートと様々。

これらの新しいマオリの展示を通じ、過去から今に至るまで継承されるマオリ文化を紹介します

    MANA WHENUA

テパパの4階のマオリ文化の展示会「MANA WHENUA ( マナ フェヌア)」に、新たに2つの展示、

「Manu Rere Moana | Pacific Voyagers」
「He Kaupapa Waka | A Fleet of Waka」

が加わりました。

どちらも、マオリ語で  waka (ワカ)と呼ばれるカヌーをテーマとし、前者は昔の大航海について、後者は現在のマオリコミュニティーに焦点が当てられています。

  🛶 Manu Rere Moana | Pacific Voyagers

「Manu Rere Moana (マヌ・レレ・モアナ)展では、その昔*天文航法を用い*ダブル・ハルのwaka/カヌーで南太平洋諸島からニュージーランドへ航海した人々(現在のマオリ族)の知識と技術が学べます。

*天測航法 (てんそくこうほう、celestial navigation、astronavigation)または 天文航法 (てんもんこうほう)とは、陸地の見えない外洋で 天体 を観測することで 船舶 や 航空機 の位置を特定する 航海術 である。

** ダブル‐ハル【double-hull】 船、特にタンカーの二重船殻構造。船体強度を高める
(出展:ウィキペディア)

1,000 年以上も昔、まだコンパスや望遠鏡が発明されていない時代に、南太平洋の島々の人々は太平洋をwaka / カヌーで横断していました。これは世界の探検史の中でも目を見張るものがあります。
特に、太平洋航海に使われた*ダブル・ハルのwaka / カヌーの製造技術には、人類の歴史における著しい進歩が見られます。

ニュージーランドでは1890年から90年にかけて、この太平洋大航海の術を蘇らせようとする動きが生まれ、1992年にニュージーランドからララ・トンガまで waka/カヌー、Te Aurere (テ・アウレレ号)で横断がなされました。

テパパには、Te Aurere (テ・アウレレ号)の1/3の大きさの模型が展示されています。(上の写真)

そしてそのテ・アウレレ号の模型のカヌーの横の大型スクリーンでは、大平洋諸島からニュージーランドに向けて南向きに進む航海の様子が画像と音で再現されています。

大型スクリーン上には、船舵を取るために人々がコンパスの代わりに頼りにした目印も表れます。

  • 太陽の動き
  • 星空 (水平線を32に区分し、星座や天の南極を目印に方角を定めて進んだ)
  • イルカ、クジラ :  ( イルカの種類を見分けたり、回遊する鯨の後を追い現在地を確認 )
  • 嵐 
  • 渡り鳥 
  • うねりや波


など、目印は全部で14つあるそうです。幾つ見つけることができるでしょうか。

 🛶 He Kaupapa Waka | A Fleet of Waka

もう1つのカヌー展 「He Kaupapa Waka | A Fleet of Waka 」では、シングル・ハルのワカ/カヌー二艘が並べられ、壁にはワカ/カヌーに乗ったマオリの人々の写真が一面に飾られています。

古き良き大航海の優れた技術が廃れることなく、今もマオリコミュニティーで継続されていることが手に取るようにわかります。

それから、壁に立て掛けられた実物大のオールと、マオリの彫刻を施したカヌー/ワカの船体は圧巻です。

   Hinaki 

次は、テパパの5階のアートギャラリーの新設展示を紹介します。

新しいギャラリーの名前は、Hīnaki ( ヒナキ)。
ヒナキはマオリ語でウナギを取る仕掛け篭(かご)を意味します。

ヒナキの立体的で手の込んだデザインはマオリ独特のアートフォームであり、代々マオリ族の間で受け継がれている文化遺産です。

ヒナキの実物や、歴史を物語る写真を通じて、ウナギを捕らえる仕掛けや、形、そして素材といったものに、マオリ族の自然に対する造詣の深さが表されていることが分かります。

   コンテンポラリーアート

最後は、ヒナキ展の横の、Hiahia ( ヒアヒア) ギャラリーに新しく登場したマオリアートを紹介します。

『 only fools are lonely 』というタイトルのこの作品は、マオリの女性アーティストAna Iti(アナ・イティ)によって2018年に作製されました。

微妙に色が違う100枚近くの粘土板が、ヒマラヤ杉の上に並べられています。

ニュージーランドの大地が入植者や外来種により少しづつ変わっていくことに対する、一人のマオリ人としてアーティストの遺憾が表現されています。

*テパパのアート・ギャラリー「HIAHIA 」や他のギャラリーの詳細についてはこちらを。

   テパパ国立博物館情報

場所      : 55 Cable Street, Wellington 6011, NZ
開館日  : 10時~6時 クリスマス日を除き無休
入館料  : 無料
HP     : https://www.tepapa.govt.nz/

   あとがき

これまでテパパ博物館の新しいマオリ文化の展示を紹介しました。

私個人としては最後に紹介した『 only fools are lonely 』がお気に入りの作品と言ってもいいかもしれません。

海外に長く住んでいると、日本に帰国する度に自分が生まれ育った故郷の変わりようにいつも驚かされます。たまに、自分だけが取り残されたような喪失感に陥りそうになることもあります。

そうした思いを『 only fools are lonely 』に重ねることができました。

Ngā mihi
wonderer 

ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。