『バービー』実写番映画 :バービー文化についていけない人の感想

1959年に発売されるや否や全世界の女の子を魅了するきせかえ人形のバービー人形が、ついに実写番として映画化。

すでにアメリカ合衆国での興行収益は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を超えており、ここニュージーランドでも公開以来バービー旋風が起こっているほど。

その一方で批判も相次ぎ、何かと話題に上る映画『バービー』を、アンチ・バービーの視点からレビューします。

  映画概要

原題:『 Barbie 』製作年: 2023 製作国:アメリカ合衆国/配給:ワーナー・ブラザース映画上映時間:114分/言語:英語
監督:グレダ・ガーウィグ
出演:マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング
吹替版声優:沢城みゆき、置鮎龍太郎
公開日:2023年8月11日(金)

  あらすじ

 バービーとケンは、ピンク色に彩られた完璧なバービーランドで、他のバービーやケンと一緒に幸せに過ごしていた。ある日バービーは体の異変に気付き、その原因を探ろうとケンとともに人間の世界を訪れる。人間の世界では、思いもかけないトラブルに見舞われながらも、自身を見つめ直すようになる。

     感想

グレタ・ガーウィグ監督の前作『レディ・バード』と『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』が好きで、特に『若草物語』は何度も観たので、同監督の新作品『バービー』を観たのですが。。。

この『バービー』実写版には見事に期待を裏切られました。

『バービー』という女の子のファンタジーの世界なので、そんなにシリアスな展開はないだろうと予測していましたが、あまりにも一本調子で見終わった後拍子抜けしてしまいました。

ですが、これはあくまでも私個人の感想。私の周りの観客(ほとんどが大人の女性)は始終大笑いして楽しんだ人も多数いたようです。

英語で女性が使う自虐的な表現に「 blonde moment 」というスラングがあります。この「 blonde moment 」は、ブロンドの色の髪の毛の女性は頭が弱いという俗念に由来しています。

もしかしたら、『バービー』の映画を楽しむことは、「 blonde moment 」的な経験に共鳴することかもしれません。

と、『バービー』に対して否定的な私ですが、ケンのキャラクターは存分に楽しめました。ケンが一人前(?)の男になっていく様子はよく描かれていて、それにとても面白い。『kenough 』は決定的でした。(これから映画を観る方の為に詳細は控えておきます)

そして、なんと言ってもケン役の ライアン・ゴスリングが素晴らしい!ゴスリング以外にこのケン役は考えられません。それもそのはず、他の作品を見て彼の演技に惚れ込んだガーウィグ監督は脚本を執筆中、彼をイメージしてケンの役柄を書いたと言います。

脚本にまつわるこぼれ話をもう1つ。人間のサーシャがフェミニスト論をかざしバービーをけなすセリフがありますが、実際にバービーのメーカーのマテル社がそのセリフを承認するとは思っていなかった(実際にマテル社は「いける」と後押ししてくれた)そうです。

さて、『バービー』の評価です。
バービーに対して星1つ ★
でもケンが素晴らしかったので 星2つ ★★
そして、一緒に観た14歳の娘が楽しんだことと、シンプルなメッセージが伝わりやすいのかもしれないと妥協して、星をもう一つ増やして 三ツ星にしました。★★★

    プロフィール

 📣 監督 : グレタ・ガーウィグ

グレタ・セレスト・ガーウィグ(Greta Celeste Gerwig) 女優、映画監督、脚本家。1983年アメリカ合衆国のカリフォルニア州に生まれる。バーナード・カレッジ大学で英語と哲学を専攻。在学中に映画に端役で出演したことがきっかけで、元々は脚本家志望であったが、数々の映画に出演。またパートナーのノア・バームバック製作の作品にも出演した。2017年の『レディ・バード』、2019年『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』を監督し、共にアカデミー監督賞とアカデミー脚本賞にノミネートされた。『バービー』は、監督だけでなくバームバックと共同で脚本も書き下ろしている。

  バービー役 :  マーゴット・ロビー

Margot Elise Robbie, 1990年オーストラリアのクイーンズランド州に生まれる。女優、映画プロデューサー。2008年に女優として活動を始め2011年アメリカ合衆国に移転。テレビドラマに出演後、マーティン・スコセッシ監督の映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でブレイクする。『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』、『 クイン・メリー/愛と悲しみの生涯 』『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 』『 スキャンダル 』『バビロン』など数多くの映画にメジャーな役で出演し、BAFTA やアカデミー賞など数多ノミネートされる。夫のTom Ackerleyと製作会社を設立し、プロミシング・ヤング・ウーマンなどの映画の他、ネットフィックスのシリーズ番組を製作。『オーシャンズ』シリーズにライアン・ゴスリングとの共演が決まっている。

  ケン役 :  ライアン・ゴスリング

Ryan Thomas Gosling 1980にカナダのオンタリオ州に生まれる。カナダの俳優・ミュージシャン。1993年 『ミッキーマウス・クラブ』や他の番組で子役を演じる。注意欠陥・多動性障害 (ADHD) との診断を受けたことがあるが、姉と一緒に演技や歌に没頭する。自主映画数本に出演後、ハーフネルソン』、『ラースと、その彼女』『ブルーバレンタイン』『ラブ・アゲイン』『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』『ドライヴ』に出演し、数々の賞にノミネートされる。一方で監督デビュー作の『ロスト・リバー』は酷評を受けた。2016年の『ラ・ラ・ランドゴールデングローブ賞 主演男優賞を受賞。エヴァ・メンデスと結婚し二人の娘を設けている。

    あとがき

今回この記事を書くために主演のマーゴ・ロビーについて調べていたら、なんとあの # Me Too ( ミー・トゥー) 運動がテーマの『Promising Young Woman / プロミシング・ヤング・ウォーマン』を製作したと知って驚きました。

あのフェミニズム映画を作りながら、女性の立場という点で時代に逆らい(少なくとも私にはそう思えます)、また物質主義を全面に押し出したような『バービー』に主演するなんてと、府に落ちません。

でも、それがハリウッドの世界なのでしょうね。

Ngā mihi
wonderer

追伸、マーゴ・ロビーが製作した『Promising Young Woman / プロミシング・ヤング・ウォーマン』についての私のレビーに興味がある方はこちらをご覧ください。

ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。