闇からの使者?世にも奇妙なニュージーランドのトゥアタラ(昔トカゲ)

Kia ora

ニュージーランドには他で見られない、しかも奇妙な動物が沢山います。

飛べない鳥キウィもしかりですが、中にはなんと恐竜時代からの生き残っているものもあります。
その名も『トゥアタラ』。日本語では昔トカゲと呼ばれていますが、実際はトカゲではなく、その昔は原住民のマオリ族にさえ、闇からの使いとして恐れられていたとか。

一体トゥアタラとはどんな動物なのか気になりませんか?

 トゥアタラの驚くべき事実

   🦕 恐竜時代からの生き残り


恐竜が生息していたジュラ紀(およそ2億年前)から生き残った唯一の爬虫類です。言い方を変えると、2億年の間本質的に変化していない「生きている化石」と言うことになります。
トゥアタラが属する(スフェノドン)属には沢山の種が存在していましたが、トゥアタラ以外の種は6000年前ほどに絶滅しています。また、日本では昔トカゲと呼ばれていますが、生態学上ではトカゲとは全く異なる種になります。

   👁 第三の目がある

頭の上にも目があります。本来の眼とよく似た構造を持っていますが、視るためでなく紫外線吸収や体温調節のためだと言われています。また、孵化した時にのみ外から確認できますが、大人になると鱗で覆われて外からは分かりません。

   ㊗️ 100年以上生きる?

100年以上生きている個体があり、平均寿命は80年とも言われていますが、実際はその間調査されたことがないので正確な寿命は不明です。ご長寿の秘訣は、一般的なトカゲの体温が20度前後であるのに比べて、トゥアタラは5〜11度と超低体温で新陳代謝が低いからと言われています。また、一呼吸すると1時間持ちこたえます。

   ❗️絶滅危惧、わずか2種のみ存在

トゥアタラはニュージーランドにのみ生息していいますが、種類も僅かcommon tuatara と Brothers Island tuataraの二種類のみと、とても希な存在です。また現在の推定数が55,000匹と絶滅の危惧にあり、保護活動は世界からも注目されています。

    特徴

驚くべき事実の他にも、トゥアタラにはとても面白い特徴があります。

  • ニュージーランドで最大の爬虫類。 雄で体長50cm、重さ1.5kgまで成長する。
  • 雄は首から背中にかけてトゲのような特徴のあるトサカがある。雌を引き付ける時や他の雄と戦う時はこのトサカを立てる
  • オリーブ色がかった緑色から茶色やオレンジがかった色がいる。また一生を通じて色が変わることもある。一年に一度脱皮する。
  • 巣穴に住み、海鳥と巣穴を共有することもある。
  • 主に夜間に活動するが、たまに日中巣穴から出て日光浴をする。
  • 昆虫やとかげ、海鳥の卵や雛、稀にトゥアタラの幼体を食べることもある。

  • 他の爬虫類と違って寒い気候の中でも活動する。常温が25度を越えるの環境には適応しない。
  • 雌は春に 6-10 個の卵を産み暖かい土の中に埋める。1年後に卵が孵りその直後から幼体は自立sして生活する。
  • 爬虫類の中で最も成長が遅く、大人になるまで35年かかる。
  • 昔はニュージーランド全土に生息していた。が、現在は野生では北島の東北部そして南島北部の離島にのみ生息する。

    保護活動

トゥアタラはニュージーランド全土に生息していましたが、人間の入植に伴い住み着いたネズミにより全滅状態となり現在は本土では見ることができません。

今現在37の離島に生息し、クック海峡(北島と南島の間)にあるStephens Islandと呼ばれる離島にはおよそ30,000匹が住んでいます。

これらの離島では、トゥアタラの天敵であり同じ食物の競争相手である齧歯動物 (げっし動物: ネズミなどの大きな切歯を持つ小動物)や他の外来哺乳類が徹底的に駆除されています。また、海鳥の巣があるため土壌が濃く、トゥアタラが補食する無脊椎動物やトカゲが繁栄し食料資源も豊富です。

また、最新技術を使って人工孵化や飼育することで生息地も増えて来ており、本土に還すことも検討されています。

トゥアタラはニュージーランドの法律で保護動物として指定された一番最初の動物です。1895年のことです。それまでは数百匹ものトゥアタラが、海外の博物館や個人コレクターに送られました。現在は法律で守られていることに加え、トゥアタラは離島にのみ生息しているため密漁される心配はほとんどありません。

    マオリ族とトゥアタラ

マオリ語でトゥアタラや大型の爬虫類はNgārara (ナーララ)と呼ばれ、マオリ神話の中で語られています。

Ngārara (ナーララ)は、 Punga(プンガ)の子孫だと信じられている。Punga(プンガ)はマオリ神話に登場する海の神Tangaroa(タンガロア)の息子である。

Punga(プンガ)の子孫、爬虫類や鳥、昆虫にいたるまで誰もが醜くそして反抗的であった。ある日、トゥアタラは兄弟である mangō ( マンゴー: 鮫)と、陸に住むか海に住むか言い争いとなり、鮫はそのまま海に居残り、トゥアタラは陸に移り住むことにした。怖い外見だから人間は怯えて邪魔することはないだろうと。

実際マオリ族は、トゥアタラやトカゲ類を、邪悪な死神 Whiro(フィロ)の使いだと信じ恐れていましゅた。中には集落で飼って、敵の部族が来た時に脅すものもいたそうです。

また、トゥアタラを恐れると同時に守護神としても崇め、死者を埋葬する洞窟に放していたこともあります。

    トゥアタラが見れるところ

離島に生息しニュージーランド本土には野生として生息していないと言いましたが、本土にある自然保護施設で見ることが出来ます。観光名所にもなっていますので、興味のある方は足を運んで見てください。

ウェリントン   ZEALANDIA
https://www.visitzealandia.com

ホキティカ(南島)National Kiwi Centre
The National Kiwi Centre Hokitika

サウスランド( 南島)Southland Museum     
Home (southlandmuseum.co.nz)

 

 あとがき

8年ほど前ですが、ロトルアにあったRainbow Springs という、自然保護を目的としたレジャー施設で、トゥアタラの子供の餌付けを見たことがあります。5cmにも満たない小さなトゥアタラが数匹、差し出された昆虫に素早く飛び付いていたのが印象的でした。残念ながらこの施設はコロナ禍の営業で閉鎖しており、訪れることができません。いつか開園して、トゥアタラを間近で見れるようになるといいのですが。。。

余談ですが、2006年10月に廃止されたニュージーランドの5セント硬貨の片面には、トゥアタラが刻まれていました。

最後に、これまでトゥアタラを紹介しましたが、ニュージーランドのこれまた奇妙な昆虫ウェタについても以前特集しています。興味のある方は併せてご覧ください。


Ngā mihi
wonderer

(参考)
https://teara.govt.nz/en/ngarara-reptiles
http://www.doc.govt.nz/nature/native-animals/reptiles-and-frogs/tuatara/

ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。