Kia ora
アートの街としても知られるニュージーランドの首都ウエリントンでは、美術館の中だけでなく、街のあちこちで面白いアートを楽しむことができます。
その数ある街角アートの中から、今日は風の都の異名を持つウェリントンにふさわしいアートを紹介します。
「 Blown Away 」
「Blown Away」というインパクトのある名前のこの看板は、ウェリントン国際空港近くの丘の斜面に建て掛けらており、空港に行き交う観光客は勿論、地元民の目を楽しませています。
末尾が風で吹き飛ばされている Wellingtonの一文字に、ウェリントンの要素が凝縮されていると言ってもいいかもしれません。
心憎いほどまでに的を得てそれでいて斬新なデザインもそうですが、製作に至るまの経緯もまたウエリントンならではとても興味深いものがあります。
事の始まりは、2010年にウェリントン空港が、翌年NZで開催されたラグビーワールドカップ観戦で訪れる観光客にウェリントンをアピールする手段として、「 wellywood 」( ウエリウッド ) という文字の大きな看板を立てると発表した事でした。
ご存じの方も多いと思いますが、世界的に大ヒットした「The Lord of the Rings trilogies 」( 指輪物語 三部作)はウェリントンにある Weta Studio ( ウエタ スタジオ ) で製作されています。
そこでウェリントンを映画産業の街として名を世界に知らしめて経済効果を高めるという目論見でした。
ところが、この「wellywood」の提案に対し、 ウェリントンは独自の文化があり、安っぽい ハリウッドやボリウッドなどと一緒にするべきでないとしてウェリントン市民はこぞって猛反対しました。
フェイスブックで立ち上げられた反対グループの署名活動には、26,000人以上が反対に署名したほどです。(かくいう私もその1人です。)
その結果、この「 wellywood」は取りやめとなり、代わりに一般公募のデザイン中からウェリントン市民が選ぶということになりました。
こうして、地元紙上で300を超える応募作品の中から公開投票がなされた結果、過半数の19000近くの表を集めた、Blown Away に決定したという訳です。
市民運動にまで発展したこの看板にはウェリントン市民の誇りが表現されていると言ってもいいかもしれません。
ウエリントン空港へ乗り入れする機会がある方は是非お見逃しなく。
ちなみに、このBlown Awayは、広告会社の Saatchi & Saatchi によるデザインで、ウェリントン空港にかかった製作費は80,000ドルでした。
「 Solace in the Wind 」
© Scott James Remnant from Flickr
次はウエリントンでお馴染みのテパパ国立博物館のすぐ目の前に立つ「Solace of the Wind」と言う名の像です。
こちらもやはり風にまつわるアートです。
solace という言葉には慰みの意味がありますが、わざわざ海風に向かって身体を前向きに逸らしてヨガのようなポーズを決めているくらいですから、慰みではなくて、風を愉しんでいるという表現が合っているかもしれません。
「Solace of the Wind」は鋳鉄で出来ており2mの高さです。2008年2月に一般に披露されましたが、その時はこの像は市役所に製作者から貸与されている状態で、1年後には製作者に返却される予定でした。
が、設置されるや否や「Solace of the Wind」はたちまち話題となり、その年のウェリントン市民が最も好きな彫刻に選ばれたことから、市役所は像を6万ドルで製作者から買い上げてそのまま継続して置くことになりました。
以来を訪れる人は必ずと言ってこの銅像の写真を撮るそうで、ニュージーランドで最も親しまれている像とも言われています
尚、この像の製作者はウェタ・ワークシップの彫刻部門の長であったMax Patte 氏です。
この像の他にも数体製作されており、オーストラリアやドイツなどにも設置されています。
In honour of Max Patte’s open gallery this Saturday. And the birthday’s of both “Solace in The Wind” & Te Papa. And being back in #Wellington.
— Martin Jago (@ukpuppetboy) February 12, 2018
All bloody great things. #Wellington #SolaceInTheWind #Sculpture #WCC #OpenGallery #MaxPatte @Te_Papa pic.twitter.com/7dqv0zSQuH
「Solace of the Wind」には、これまでマントやマフラーなどが被せられてはその度話題になっていますが、今年4月にはコロナウイルス対策としてマスクと手袋が被せられました。またそれをポーランド大使館がツイ―トしているのも面白いですよね。
Solace in the Wind, the iconic sculpture of #Wellington, in times of the #COVID19 pandemic.
— POL Embassy in NZ (@PLinNewZealand) April 15, 2020
Stay safe, be kind
Kia kaha pic.twitter.com/LtrSVDfSPl
最初に紹介した「Blown Away」と同じように、この「Solace of the Wind」も、ウェリントン名物の風に対して明るくてポジティブなメッセージを与えていることが、ウエリントン市民の共感を得ているのではないでしょうか。
市民の意識が強く表現されたこの二つの作品、ウェリントンにおいでの際は是非ご覧ください。
下のクリップはウェリントン市のプロモーション用で、「Solace of the Wind」を初め、テパパ国立博物館やストリートアートそれから、カフェなどウェリントンの文化が紹介されいます。ご興味がある方はどうぞ。
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