「塩田千春」展 NZ国立博物館テパパにて開催

Kia ora

先週末テパパで日本人アーティストの個展が幕を明け、以来訪れた人やマスコミの間で大反響を呼んでいます。

テパパはニュージーランドの首都ウェリントンにある国立博物館。
そのテパパの4階のアート・ギャラリーの玄関口にあたるメイン・ギャラリーに、このほど新しく設置された作品は、「時間の交錯: web of time 」と呼ばれる大型のインストレーション。アーティストは塩田千春さんです。

塩田千春さんは、2015年に世界最高峰の Venice Biennale (ベネチア・ビナーレ国際美術博覧会)で日本代表として「掌の鍵」を展示した他、世界各国で数多くの個展を開催しています。
昨年日本で行われた展示には4か月の間に66万人と驚異的な入場者数を記録し、今世界で最も注目を集めているアーティストの一人です。

本篇ではテパパで展示されている「 時間の交錯 / web of time 」と塩田千春さんのプロフィール、それから去年日本で好評を博した「魂がふるえる」展を紹介します。

「 時間の交錯 : web of time 」展

テパパの TOI ART と呼ばれるアート会場の玄関口は、3年前にリニューアルオープンして以来、常に斬新で型にはまらない作品を展示し、アートシーンに旋風を巻き起こすギャラリーとして知られています。

その新鋭的なギャラリーに新設された塩田千春さんの「時間の交錯/ time of web」。
蜘蛛の巣のように見えますが、中に一歩足を踏み入れると、不思議な空間に入り込んだような錯覚に陥ります。
ですが決して不気味とかネガティブな感覚ではなく、むしろ逆で、他から隔てられた自分だけが存在するような気持ちで、懐かしい感情が沸いてきます。

この「時間の交錯/ time of web」では、一面に紡いだ黒い糸の中に白い数字の星が散らばり、夜空が形成されています
数字は歴史の中で重要な日が表すそうです。中にはアーテスト自身にかかわる日付も含まれているとか。

この「時間の交錯/ time of web」について塩田さんは次のように解説しています。

この作品は、人の内なる内面にこだまして、過去や現在、将来、つまり人生に向き合うように意図してしている。

数字はある意味で安らぎを与えるものである。大事な日付を共有することは、自身を理解することに繋がる。」

引用:www.tepapa.govt.nz/visit/exhibitions/toi-art/chiharu-shiota-web-time

この作品に見られるような、糸を紡いだ大型の作品は塩田さんのトレードマークです。
この「時間の交錯/ time of web」には、約4,000個の黒い毛糸が使われ、12人のスタッフが3週間かけてインストールされたそうです。

塩田千春の25年にわたる実践のなかで、彼女の作品を最も特徴づけるのは、黒や赤の糸を空間全体に張り巡らせるダイナミックな没入型のインスタレーションです。観客はその空間の中を歩きながら、目に見えない繋がりや、記憶、不安、夢、沈黙など、かたちの無いものを体感的、視覚的に意識させられます。糸の色について、塩田は、黒は夜空とも宇宙とも捉えることができ、赤は血液、あるいは「赤い糸」といった、人と人の繋がりと考えることもできると語っています。
引用:https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/19223

塩田千春さんの生い立ちとアーティストとしての経緯

 

● 生い立ち

1972年 大阪府岸和田市に生まれ。両親はダンボール製造業を営む。兄弟が二人いる。
大阪府立港南造形高等学校、京都精華大学洋画科卒業。現在はベルリン在住。

● 経歴

1993年  オーストラリア国立大学(ANU)キャンベラスクールオブアートに交換留学生として一年間留学。平行する線を描いた「一本の線」や、空間に糸を張った作品「絵を描くように」を制作。
また、絵のなかに自分が入っている夢を見たことをきっかけに、自身の身体に絵具を塗りシーツを使って絵画になるパフォーマンスを始める。

1996年、ドイツに留学し、2003年までハンブルク美術大学、ブラウンシュバイク美術大学、ベルリン芸術大学(UDK)にて学ぶ。

その後25年以上にわたる創作活動において、世界各国の美術展に300回以上も出展。

2003年より、ポーランドや、ドイツ、日本(新国立劇場)においてオペラや舞踊の舞台美術を手掛ける。

2008年、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。

2010年、京都精華大学客員教授となる。

2015年 第56回ベネチア・ビエンナーレ国際美術展(イタリア)の日本館代表として「掌の鍵」を展示。

©Karen Eliot via Flicr

2019年 66万人が見た「魂がふるえる」展

2019年に東京の森美術館にて開催された「魂がふるえる」展には、四ヵ月の間に何と66万人もの人が訪れました。
この66万人という数字は予想の3倍を超えたものであり、森美術館の歴代2位に入るそうです。

この驚異的な訪問者数の背景には、SNSを通じて若者の間で「インスタ映え」するとして人気が出たことが挙げられています。

その「魂がふるえる」展は、塩田千春さんは再発した癌の病気と闘いながら全身全霊を傾けて製作した作品でした。

生と死という人間の根源的な問題に向き合い、「生きることとは何か」、「存在とは何か」を探求しつつ、その場所やものに宿る記憶といった不在の中の存在感を糸で紡ぐ大規模なインスタレーションを中心に、立体、写真、映像など多様な手法を用いた作品を制作。

塩田が展覧会のオファーを受けたのは約2年前。塩田はそのとき「生きててよかったと思った」という。しかしながらそのオファーがあった翌日、12年前に患った癌が再発していることが発覚。「これからどうやって生きていけばいいかわからない状態に陥りました」。闘病を続けながら準備に注力してきた本展について、こう振り返る。「ここまで死と寄り添った展覧会は初めてで、死や生きていくことを考えさせられた展覧会でした」。

出典元:美術手帖 ( https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/20030 )

まとめ

「魂がふるえる展」はその後「The Soul Trembles」という題でオーストラリア、インドネシア、台湾などの国を巡回して展示される予定でしたが、残念ながらコロナウィルスの影響のおかげで開催延期もしくは中止となっています。

ですので、この「 時間の交錯 / web of time 」は塩田千春さんの作品を見れる貴重な機会になります。
(日本ではグループ展:「眠り展:アートと生きること -ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで」が開催されています)

ちなみに、塩田さんと彼女のスタッフ二人はNZ入国の際に2週間の自己隔離を行い、テパパ博物館でインストレーション作業に臨まれたようです。

「 時間の交錯 / web of time 」は2021年11月まで展示されています。
入場料は無料ですのでニュージーランドに在住の方は、是非ともこの機会をお見逃しなく。

● 展示情報

★「 時間の交錯 / web of time 」展示会
会期:2020年12月12日~2021年11月まで
(12月25日は閉館)
ニュージーランド国立博物館テパパにて
https://www.tepapa.govt.nz/visit/exhibitions/toi-art/chiharu-shiota-web-time
入場料無料

*「眠り展:アートと生きること -ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで-」グループ展
東京国立近代美術館
2020年11月25日 – 2021年2月23日
 https://www.momat.go.jp/am/exhibition/sleeping/

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1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。