鬼才ウェス・アンダーソン最新作『フレンチ・ディスパッチ』感想 ★★★★★

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今回紹介するシネマは、鬼才ウェス・アンダーソン監督の最新作『フレンチ・ディスパッチ リバティ・カンザス・イヴニング・サン別冊』

ニュージーランドでは『フレンチザ・ディスパッチ』として毎年恒例のインターナショナル・フィルム・フェスティバルの目玉として公開された後、現在一般の劇場でも公開中で人気を博しています。

ウェス・アンダーソンは、『ダージリン急行』や、『ファンタスティック・Mr.FOX』、『グランド・ブダペスト・ホテル』などのヒット作を作り出し、その独特の作風で知られた名監督。2018年に公開されたストップモーション・アニメーション映画『犬ヶ島』は日本を舞台にした物語で、日本でも話題になりました。

そのウェス・アンダーソンの10作目になる最新作『フレンチザ・ディスパッチ』は、集大成とも言える傑作。ウェス・アンダーソンの世界が充分に堪能できます。

映画情報

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』
原題:The French Dispatch of the Liberty, Kansas Evening Sun
2021年製作/107分/G/アメリカ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
日本公開日:2022年1月28日(金)
監督:ウェス・アンダーソン
出演:ベニチオ・デル・トロ、エイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントン、レア・セドゥ、フランシス・マクドーマンド、ティモシー・シャラメ、リナ・クードリ、ジェフリー・ライト、マチュー・アマルリック、スティーブ・パーク、ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、クリストフ・ヴァルツ、エドワード・ノートン、ジェイソン・シュワルツマン、アンジェリカ・ヒューストン

あらすじ

20世のフランスの架空の街が舞台。米国新聞社の支局のアーサー・ハウイッツァー・Jr(ビル・マーレイが編集する「フレンチ・ディスパッチ」誌は、国際問題からアート、ファッション、グルメに至るまで深く掘り下げた記事で人気を博す。その「フレンチ・ディスパッチ」のひと癖もふた癖もある当代一と謳われる才能豊かな4人の記者のスクープ記事をオムニバス形式で描く。

【 第1話 : 自転車レポーター 】 向こう見ずな自転車レポーターのサゼラック が、アンニュイ・シュール・ブラゼの街を紹介。
出演 : オーウェン・ウィルソン

【 第2話 : 確固たる名作 】 批評家で編年史家のベレンセンが、超個性的な画家の囚人のモーゼスと、彼のミューズで看守のシモーヌとの風変わりな関係を描く。
出演 :  ベニチオ・デル・トロ、エイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントン、レア・セドゥ

【 第3話 : 宣言書の改訂 】 孤独のエッセイスト のクレメンツが、女性徒の間で始まった学生運動が街全体に発展していく様子を取材。
出演: フランシス・マクドーマンド、ティモシー・シャラメ、リナ・クードリ

【 第4話: 警察所長の食事室 】 博識家の記者ローバック・ライトは、グルメレポーターとして警察署長お抱えの天才シェフ・ネスカフィエを取材している内に大事件に巻き込まれる。
出演: ジェフリー・ライト、マチュー・アマルリック、スティーブ・パーク

感想

この『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』は、ウェス・アンダーソンが学生のころ愛読していた雑誌「ニューヨーカー」の影響を受け、短編の記事をかつて住んでいたフランスを舞台にスクリーン上で表現したいという自身の長年の願望を実現したもの。

おかげで、これまでの作品のように実写、ストップモーションともに絵本のページをめくるような感覚で楽しめる話が四篇。しかもそれぞれの話に常連組の俳優陣に新たな俳優が加わった豪華キャストとあって、ずいぶんと得した気分になりました。

それぞれの話がユニークで面白いのですが、個人的には第2話の画家のモーゼと彼のミューズである看守のシモーネの話が一番面白いと思いました。シモーネ役のレア・セドゥのファンで彼女の映画は色々見ていますが、このシモーネ役では監獄の覗き窓から覗く目だけでも存在感が充分。さすがフランスで大物女優と言われるだけあります。ダニエル・クレイグ演じる007の恋人役よりも、このシモーネ役の方がレア・セドゥの個性がよく引き出されており、ファンとしては嬉しい限りです。

レア・セドゥの他にもう1人注目したい俳優は、第3話に登場するティモシー・シャラメ。端正な顔立ちに加えて主演男優賞にノミネートされた『君の名前で僕を呼んで』で繊細な演技がまだ記憶に新しいところですが、この映画ではコミカルな演技に挑戦。ティモシー・シャラメは、現在公開中の『DUNE/デューン 砂の惑星』の主役ポールを演じています。

そんな時の人の俳優が、宝石が散らばった宝物箱の中が凝縮されたシーンの一コマとして登場し、とても贅沢な気分が味わえます。

勿論、宝石箱の中にはエイドリアン・ブロディ、オーウェン・ウィルソン、ビル・マーレイといった常連組も入っています。

『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』は、ウェス・アンダーソン監督の集大成作品とも言えるでしょう。★★★★★

監督 ウェス・アンダーソン

 

Wesley  Anderson  映画監督、映画プロデューサー、脚本家。1969年アメリカ合衆国テキサス州ヒューストンに生まれる。
テキサス大学オースティン校で哲学を学ぶ。学生時代、映画に常連俳優オーウェン・ウィルソンと一緒に住んでいたことがある。

(主な作品)
『天才マックスの世界(邦題 Rushmore)』1998年、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ 』2001年、『ライフ・アクアティック』2004年、『ダージリン急行( The Darjeeling Limited)』2007年、『ファンタスティック Mr.FOX』2009年、『ムーンライズ・キングダム』2012年、『グランド・ブダペスト・ホテル』2014年、『犬ヶ島(Isle of Dogs)』2018年、『フレンチ・ディスパッチ リバティ・カンザス・イヴニング・サン別冊 』2021年
次の作品は『アステロイド・シティ』を予定している。

(受賞歴)
2014年『グランド・ブダペスト・ホテル』
    ベルリン国際映画祭 銀熊賞
                全米映画批評家協会賞 脚本賞
    ゴールデングローブ賞作品賞
    アカデミー賞 ( 技術部門 )
2018年『犬ヶ島』ベルリン国際映画祭 銀熊賞(監督賞)

あとがき


ウェス・アンダーソンの新作『フレンチ・ディスパッチ リバティ・カンザス・イヴニング・サン別冊』は映画の域を超えた動くアート。
アートやインテリアなどが好きな方も是非お見逃しなく。

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ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。