リドリー・スコット監督、ホアキン・フェニックス主演の『ナポレオン』感想:壮大な大河ドラマ彷彿

Kia ora

ニュージーランドから映画『ナポレオン』の紹介と観た感想をお届けします。

『ナポレオン』の監督は、『エイリアン』『グラディエーター』リドリー・スコット、主演は『ジョーカー』『カモン・カモン』のホアキン・フェニックス。
全世界オープニング興行収入で1位を獲得しています。

日本公開は12月1日(金曜日)予定です。お見逃しなく。

映画情報

原題:『Napoleon』
製作国:アメリカ合衆国、イギリス / 言語:英語 / 上映時間:158分
監督:リドリー・スコット、脚本:デヴィッド・スカルパ、リドリー・スコット
制作:リドリー・スコット、ケヴィン・J・ウォルシュ、マーク・ハッファム、ホアキン・フェニックス
出演:ホアキン・フェニックス、バネッサ・カービー
配給:ソニー・ピクチャーズ
日本公開:12月1日より

あらすじ

1789年に始まった自由、平等を求めたフランス革命。その怒涛の中で、一人の名もなき兵士であったナポレオンが驚くべき戦略思考で数々の戦争を仕掛ける。一方で最愛の妻ジョゼフィーヌとの波乱万丈の愛憎関係を続けながら、皇帝にまで上り詰め英雄として国民から崇められた。

感想

見方によって歴史に残る英雄、それから3百万人を戦争で死に至らしめた悪魔とも取れるナポレオン。今回紹介する『ナポレオン』は英雄史でも伝記でもなく、そのナポレオンを一人の人間としてのありさまを描いています。

そしてそのナポレオンを演じるのはホアキン・フェニックス。ホアキン・フェニックスと言えば、同じくリドリー・スコット監督の『グラディエーター』で助演男優賞、そして主演男優賞を受賞した『ジョーカー』など個性の強い役の他、去年公開の『カモンカモン』では子供に振り回されるどこにでもいそうな中年の叔父さん役を軽やかに演じるなど、幅広い役を演じることができる俳優。

この『ナポレオン』では、純真に母国フランスの愛国者、フランス革命という混沌とした時代の寵児、変態志向がある好色者の英雄、皇帝、悪魔と言われるナポレオンそのもの。何よりもホアキン自身が持つカリスマがナポレオンを更に凄みのある役にしているだと思います。ホアキンのような人を生まれながらの役者というのでしょうね。

圧巻は戦争シーン。何と8,000人ものエキストラが動員され、撮影には11台のカメラが使われたそうで、GCで作られたシーンとは違い生々しくて迫力がありました。加えて、ノートルダム寺院での皇帝の戴冠式やフォーンテーヌブロー宮殿、美術なども美しく目を見張るものがあります。

一部から、実際にはナポレオンはエジプトのピラミッドに発砲していないなど、事実と異なる点があると批判されているようですが、それでも映画としては、最近のGC映画と違い昔テレビで見た大河ドラマを彷彿させる迫力と美しさがあります。さすがリドリー・スコット監督です。

おかげで最初から最後まで目を離すことなく、2時間40分の長時間も気にならず楽しみました。
評価は五つ星。★★★★★

監督、主役プロフィール

📣 監督 リドリー・スコット

サー・リドリー・スコット(Sir Ridley Scott )1937年イギリス生まれ。
美術大学でグラフィックデザインや絵画、舞台美術を学んだ後、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでグラフィック・デザインを専攻。卒業後、BBC(英国放送協会)に入社、セットの制作だけでなくドキュメンタリーやテレビドラマの演出の仕事をするが、テレビディレクターを目指し退社。CF(コマーシャル・メッセージ)の制作会社を設立、数多くのCFを制作し国際映画祭などで数々の賞を受賞する。
1977年のデビュー作『デュエリスト/決闘者』でカンヌ国際映画祭新人監督賞を受賞。そして1979年の『エイリアン』は世界的大ヒットとなる。以来、活動の拠点を米国に移す。1982年『ブレードランナー』、1989年の『ブラック・レイン』では高倉健や松田優作が出演し、日本でも大ヒットを記録。1991年『テルマ&ルイーズ』でアカデミー監督賞候補となる。1995年、弟のトニーと共に映画への貢献に対してBAFTA(英国映画テレビアカデミー)を受賞。2001年、『グラディエーター』でアカデミー賞作品賞、ゴールデングローブ賞ドラマ部門作品賞受賞。2002年『ブラックホークダウン』『ハンニバル』が公開。興行的に成功を収め、2年連続のアカデミー監督賞ノミネートを受けたる。2003年、ナイト(騎士号)を受章。
その後、『アメリカン・ギャングスター』、『オデッセイ』、『ゲティ家の身代金』を製作。2021年にはヴェネツィア国際映画祭で監督・ばんざい!賞(北野武制作の映画のタイトルから来ている)を受賞。
弟のトニー・スコット、長女のジョーダン、長男のジェイク、次男のルークも映画監督である。

☆ 主演:ホアキン・フェニックス

ホアキン・ラファエル・フェニックス(Joaquin Rafael Phoenix ), 1974年プエルトリコ生まれ。父親はアメリカ合衆国出身の元カトリック教徒、母親も合衆国生まれで、両親ともに新興宗教の宣教師となり布教活動のため家族で南米に住んだ。1978年に両親が宗教団体から脱退、4歳のホアキンは家族と共にアメリカに戻った。アメリカでは家族は貧困状態に陥り、ホアキンと兄弟は街頭で歌ったり楽器を演奏したりしてお金を稼ぎ一家の家計を助けた。その内に兄弟の1人が子役としてCM出演したのをきっかけに兄弟は芸能界に進みんだが、ホアキンは距離を置くために南米を旅した。1982年に自身も子役として芸能界デビューするが1989年の『バックマン家の人々』の後に活動を休止。1993年ジョニー・デップのナイトクラブで一緒に行った兄のリバーが薬物の大量服用で死亡。映画界から距離を置こうしたことが、周囲の説得で映画に出演。2000年公開のリドリー・スコット監督の『グラディエーター』で主役の宿敵を演じ絶賛を浴び、アカデミー賞やゴールデングローブ賞など名立たる映画賞の助演男優賞にノミネートされた。その後も『ホテル・ルワンダ』(2004年)など数多くの作品に出演。2011年のポール・トーマス・アンダーソン監督の作品『ザ・マスター』ではアカデミー賞とゴールデングローブ賞にノミネートされた。2019年の『ジョーカー』ではゴールデングローブ賞とアカデミー賞で主演男優賞を受賞。一時歌手に転向したこともある。
厳格なベジタリアンで動物愛好家、環境保護家とも知られている。女優のルーニー・マーラとの間に息子がいる。

あとがき

実は『ナポレオン』を観る4日前にマーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演の『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を観たばかりです。
どちらも年季の入った監督による長編大作、そして良く出来た映画です。
が、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、どうしても映画の主人公というよりもディカプリオそのものが全面に出ていて途中で見飽きてしまい、後半になると早く映画が終わってくれないかとそわそわしながらの鑑賞になってしまいました。
その点、ナポレオンは最初から最後までナポレオン以外の何者でもありません。

さすがホアキン・フェニックスです。

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ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。