『アステロイド・シティ』感想: ウェス・アンダーソン監督のお洒落な傑作

Kia ora

ウェス・アンダーソン監督の新作映画『アステロイド・シティ』のレビューです。

『アステロイド・シティ』は人間の宇宙に対する尽きない興味と社会情勢を、ポップにそして風刺的に描いたコメディドラマ。アンダーソン監督独特のアート感がさらに崇高化し次元を超えたレベルの画像に、いつもにましての豪華なキャストが加わり、アンダーソンの最高傑作とも言える作品。
カンヌ国際映画祭で6分間のスタンディング・オベーションを受けています。

日本では9月1日より公開予定です。お見逃しなく。

  映画情報

原題:『 Asteroid City 』製作年: 2023 製作国:アメリカ合衆国/上映時間:104分/言語:英語/ジャンル:コメディ
監督/脚本:ウェス・アンダーソン
出演:ジェイソン・シュワルツマン、スカーレット・ヨハンソン、トム・ハンクス他
日本公開日:2023年9月1日
公開劇場:パルコ

 あらすじ

舞台は1955年のアメリカ南西部に位置する砂漠の街、アステロイド・シティ。隕石が落下してできた巨大なクレーターが有名な観光名所である。そのアステロイド・シティで行われる科学賞の授賞式に、5人の天才児たちとその家族が招待される。ところが、その授賞式の最中に宇宙人が現れたことから、アステロイド・シティの街は大混乱に陥る。街をロックダウンし現実を隠蔽しようとする軍の思惑をよそに子供たちが奮闘する一方で、母親が亡くなったことを伝えられない戦争写真家の父親、マリリン・モンローを彷彿させる魅惑的な映画スターのシングルマザーなどの複雑な人間模様が展開。果たしてその運命はいかに。

  感想

元々ウェス・アンダーソン監督のファンですが、この『アステロイド・シティ』は映画のポスターに一目惚れして、劇場公開と同時に(ニュージーランドにて)観ました。

映画も期待を裏切ることなく、ポスターのように映画の1コマ1コマすべてがポップでレトロでアート感がかなり高く、ウェス・アンダーソン独特のカメラ構図や、登場人物のセリフ、音楽もすべてオシャレで面白かったです。久々にもうちょっと長く観たかったと思ったほどでした。

キャストには常連のジェイソン・シュワルツマンやエイドリアン・ブローディに加え、今回はトム・ハンクスやスカーレット・ヨハンソンといった重鎮も加わって見応えありました。

内心トム・ハンクスは軽いノリのポップな映画に重すぎるのではと一人勝手に心配してましたが、何のその。くすっと笑えるようなコミカルさを十分に醸し出していて、流石だと脱帽しました。

個人的には、マット・ディロンを見つけて心躍りました。マット・ディロンと言えば『アウトサイダー』や『ランブル・フィッシュ』でティーン役者としてならしていたのに、最近ご無沙汰していたのでちょっと得した気分になりました。

「『アステロイド・シティ』は人類の宇宙への飽くなき興味、そしてマット・ディロン演じる車の整備工が言うように、『これまでに見たことのないもの』に対する人間の対応を言わんとしていている」と、どこかの雑誌に書いてありました。
なるほどと思いますが、そういう人類の未知の世界に歩む中での歴史的な出来事をアート色の強いコメディとして映画を作るウェス・アンダーソンは鬼才であると改めて思い知らされたのでした。

因みにスカーレット・ジョハンソンが演じたキャラクターはマリリン・モンロー、ジェイソン・シュワルツマンが演じたカメラマンは水俣病を世界に伝えたユージン・スミスをオマージュしているとか。
ウェス・アンダーソンの映画へのこだわりが強く感じられますよね。

『アステロイド・シティ』は『犬ヶ島』、『ムーンライズ・キングダム』、『グランド・ブダペスト・ホテル』の各要素をさらに昇華した映画として、5つ星 ★★★★★ を付けました。

次の動画『アステロイド・シティ メイキングビデオ』も覗いて観てください。楽しさが倍増すること間違いなしです。

  監督/キャスト紹介

  📣 監督:ウェス・アンダーソン

Wesley  Anderson  映画監督、映画プロデューサー、脚本家。1969年アメリカ合衆国テキサス州ヒューストンに生まれる。キサス大学オースティン校で哲学を学ぶ。学生時代、映画に常連俳優オーウェン・ウィルソンと一緒に住んでいたことがある。
主な作品 : 天才マックスの世界』1998年、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ 』2001年、『ライフ・アクアティック』2004年、『ダージリン急行』2007年、『ファンタスティック Mr.FOX』2009年、『ムーンライズ・キングダム』2012年、『グランド・ブダペスト・ホテル』2014年、『犬ヶ島』2018年、『フレンチ・ディスパッチ リバティ・カンザス・イヴニング・サン別冊 』2021年。『グランド・ブダペスト・ホテル』はゴールデングローブ賞作品賞の他、数々の賞を受賞した。

  ★ 主演:ジェイソン・シュワルツマン

Jason Francesco Schwartzman. 1980 年アメリカ合衆国ロサンゼルスに生まれる。父親は『郵便配達は二度ベルを鳴らす』『ネバーセイ・ネバーアゲイン』を製作したユダヤ系ジャック・シュワルツマン、母親はイタリア系の女優。伯父にフランシス・フォード・コッポラ、従兄弟にソフィア・コッポラ、ニコラス・ケイジがいる。1998年ウェス・アンダーソン監督の『天才マックスの世界』で映画デビュー。その後もアンダーソン監督の作品の常連で、脚本も手掛ける。ロックバンド「ファントム・プラネット」のドラマーとして日本に来日したこともある。

  あとがき

全く土俵が違うのでいけないと思いながらも、『アステロイド・シティ』を数週間前に娘と一緒に観た『バービー』とつい比べてしまっています。私は『バービー』は全く面白く思いませんでした。

まあ人それぞれ好みが違うので、どちらが良いなどとはここで書きません。

が、シネマファンの方はたとえ好みのジャンルが違っても絶対この『アステロイド・シティ』を観られることをお薦めします。

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ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。