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この4月1日にニュージーランドでは、ミニマム・ウェッジと言われる最低賃金が21.20 NZドルに引き上げられました。
この最低賃金の引き上げで収入が増えると喜んでいる人がいる一方で、支出が増えることに不安を覚えているビジネス・オーナーがいることも事実です。
この編では最低賃金引き上げについて、他の手当ての引き上げ、それから反対意見など色々な角度から説明していきます。
Minimum wage to increase to $21.20 from April, government confirms https://t.co/52xe0b2wqq
— RNZ News (@rnz_news) February 10, 2022
最低賃金増額の詳細
この4月1日より最低賃金が 6% 引き上げられています。
これによりニュージーランドで働くと、一時間当たりの労働に対しての報酬として最低でも21.20 NZドルを得ることになります。
この最低賃金に当たる時給21.20 ドルで1週間40時間働いた場合、以前より週にして48ドル、1年間では2,500ドル収入が増えることになります。
この最低賃金の引き上げは、アダーン首相率いる労働党が2020年に発表した選挙公約の内の一つです。特にパンデミックで苦境に陥っていると言われているおよそ30万人の国民が恩恵を受けることが見込まれています。また、国民の購買力を取り戻し地元のビジネスに恩恵をもたらすなど、相乗経済効果も期待されています。
また、6%の最低賃金の引き上げ律については、労働党は*物価上昇率が5.9%と過去30年の間でもっとも高い数字を記録している現在、雇用者と雇用主の間でバランスが取れた数字であり、これ以下であれば低所得者層の生活基準が危うくなると説明しています。
実際に2020年から最低賃金を引き上げ策を施行して以来、失業率が下がり、去年は3.2%と過去最低の失業率を記録しているそうです。
尚、最低賃金は今後も継続して引き上げられて行く予定です。
* NZの物価上昇率についてはこちらをご覧下さい。
他の補助金の増額
最低賃金と併せて次のような手当ての額も引き上げられています。
◯ The starting-out and training minimum wage ( 見習い研修中の賃金) 時給も 16 ドルから16.96 と1ドル近く上がっています。
◯ 家族手当の額が1週間に20ドル、失業手当は大人一人当たり週32~52ドル増額。
◯ 年金額も2週間の受け取り額が一人の場合52ドル、カップルでは80ドル増え、これにより一人当たりの1週間の平均年金受給額は一人頭462.94ドル、カップルでは712.22ドルとなります。85万5千人の年金受給者が恩恵を受けます。
◯7月末まで公共交通機関の料金の半額

Living Wage ( 生活賃金 )
最低賃金や上記の手当てとは別に living wageと呼ばれる生活賃金も引き上げられています。
生活賃金とは国民が一定の生活水準に満たすことができる時間給です。推進団体により推奨されています。
最低賃金は法令で定められたものですが、この生活賃金の採用は雇用主の任意となっています。ですので絶対ではありません。
その生活賃金も9月1日から現在の22.75ドルから23.65ドルに引き上げられます。
最低賃金引上げについて反対意見
国民党による6%の最低賃金の引き上げに対して、野党のナショナル(国民)党は、労働党がニュージーランドが生活コスト危機にあることを自白している証拠であると主張しています。
同時に、最低賃金を大幅に引き上げても貧困層は去年よりも厳しい状況に置かれており、物価高騰により高い生活費に苦しんでいる人々にとっては焼け石に水も同然であること。また、すでに苦境にあえぐビジネス・オーナーの状況をさらに悪化させるだけとし断固として反対。国家予算の支出を増やすだけではなく、支出自体について見直すべきだと反論しています。
BusinessNZという機関も、物価上昇に追い付くのが精一杯の事業主に、最低賃金の引き上げに対応できる体力が残ってないのが現状であると強く反対。
同様に小売業界においても、商品の値上げ、人員整理、閉店に繋がると懸念する声が高まっています。
(出展) https://www.rnz.co.nz/news/national/461301/minimum-wage-to-increase-to-21-point-20-from-april
https://www.1news.co.nz/2022/03/31/will-the-governments-april-1-changes-give-you-more-cash/
世界の最低賃金
では他の国と比較してみましょう。

下のリストは最低賃金が高い上位10ヶ国です。ある調査機関が今年初めに発表しました。
(1週間40時間のフルタイム雇用者を対象。表示されている金額はアメリカドルで最低賃金での年収と時給)
このリストではニュージーランドはオーストラリア、ルクセンブルクに次いで見事上位から3番目にランクインされています。
- オーストラリア– $30,243 ($14.54/hour)
- ルクセンブルク – $28,433 ($13.67/hour)
- ニュージーランド – $27,414 ($13.18/hour)
- モナコ – $24,710 ($11.88/hour)
- アイルランド – $24,003 ($11.54/hour)
- フランス – $23,837 ($11.46/hour)
- イギリス – $23,649 ($11.37/hour)
- オランダ – $23,316 ($11.21/hour)
- ベルギー – $23,004 ($11.06/hour)
- ドイツ – $22,214 ($10.68/hour)
(出典 www.mappr.co/highest-minimum-wage-in-the-world)
ちなみに日本の最低賃金はどうでしょうか?
日本は最低賃金は都道府県により異なり、平均すると去年末の時点で930円となっています。上の表とは別の調査機関の結果によれば、日本の最低時給は2020年の時点で世界の15位に入っています。
あとがき
ニュージーランドの最低賃金は世界で3番目に高く、そして別の編で書きましたが、ニュージーランドは*民主主義度の面でも世界で2位にランクされています。
これだけ聞くと、ニュージーランドはさも素晴らしい国のように受け取ることができます。実際住んでいてもとても柔和で優しい国だと感じています。
が、最低賃金の値上げ反対派の意見にも一理あります。ナショナル党が言うように国家予算の支出を増やすだけではなく、支出自体の見直しも必要なのではないでしょうか。さもなければ、次世代に大きな借金が残ってしまうのではと危惧するのは私だけでしょうか。。。
* アダーン首相についての詳しい情報はこちらをご覧ください。
* ニュージーランドの民主主義度についてはこちらを。
Ngā mihi
wonderer
*2023年の最低賃金引上げについてはこちらを。
