2023年4月よりNZの最低時給額が22ドル70セントに増額

この4月より、ニュージーランドではminimum wage と呼ばれる最低時給額が22ドル70セントに上がります。

これからその最低時給額と、それから同時に行われる他の手当の引き上げについて詳しく紹介していきます。

    最低時給額が7 %増額

今年2023年4月1日より、最低時給額が現在の21ドル20セントから22ドル70セントに引き上げられます。

この最低時給の引き上げ額は、 昨年2022年の12月時点での7.2%の物価高騰率に応じたもので、1ドル50セントに設定されています。

最低時給額が引き上げられたことで、1週間40時間働いた場合、それまでの週715 ドルの収入額が756ドルとなり、税金込みで週に60ドルの増収となります。

現行の最低時給である21ドル20セント以上新しい時給の22ドル70セント未満の額で働いている22万3千人が、この最低時給増額の恩恵に当たる事が見込まれています。

併せてThe starting-out and training minimum wage ( 見習い研修中の最低時給 ) も16ドル96セントから18ドル16セントに引き上げられます。

また、政府は年末に最低時給額の見直しを図る予定です。

因みに現在の21ドル20セントの最低賃金は1年前の2022年4月に変更されています。この時は前年度より6%の増額でした。

    最低時給額引き上げの背景

この最低時給の引き上げを執行しているのは、ジャシンダ・アダーン元首相と交替して新しく首相の座に就いた労働党のChris Hipkins( クリス・ヒプキンズ)首相です。

 

労働党首に任命された時の誓約が人々の生活を助けることであったヒプキンズ首相は、今回の最低時給の引き上げについて次のように声明文を発表しました。

「困難な時代に、毎日の生活のやりくりが難しい家族を助ける事はニュージーランド社会にとってとても重要なことである。低収入層の人々は食費や医療費、家賃、くつなど、生活に必要最低限なものさえままならない生活を強いられており、これまで以上に支援が必要である。物価高騰に応じた最低賃金の引き上げは、何千人ものニュージーランド人がさらに悪い状況に陥るのを防ぐものである。」

また、引き上げ額についてヒプキンズ首相は、日本の経済省にあたる Ministry of Business Innovation and Employment (ビジネスイノベーション・アンド・エンプロイメント省: MBIE)の分析から失業率の増加には直接繋がらない事と、既に多数の業界で引き上げられている平均賃金に見合う額であることから決定したと説明しています。

また同時に、昨年2022年の動向を分析した結果、今回の7% の最低賃金の引き上げはGDP ( 国内総生産 )を算出する要素の一つの賃金に対する影響はわずか0.1%に過ぎないとして、最低賃金の引き上げによって懸念されている物価高騰への影響については非常に少ないとも述べています。

一方グラント・ロバートソン財務大臣は、インフレーションはピークをすでに迎えたと見られるものの、影響は後々まで続く見通しであることを捕捉しています。

    野党の反応

野党である国民党の ニコラ・ウィリス財務担当は、労働党はこれまで賃金引き上げを大幅に行ったが、インフレーションに合う額まで引き上げてないと遺憾の意を表しました。

ウイリス氏は、国民党が政権を握っていた当時も毎年最低時給の引き上げており、今回の労働党政権の決定は当然の事として受け止めているが、引き上げ額については細心の注意を払ってバランスを取るべきである。
何故なら、人々の収入額が増えても、それまで以上の額が食料品や家賃、その他の経費に費やされているのであれば、元もこうもないと警戒しています。

別の野党であるアクト党は、景況感を上げるには最低賃金の引き上げを止めるべきだと真っ向から反対しています。

( 参考:https://www.1news.co.nz/2023/02/08/govt-announces-minimum-wage-to-rise-from-april-1/ )

    生活補助・手当の増額

最低賃金と併せて4月1日より補助や手当ての額も引き上げられています。以下は週あたりの引き上げ額です。

○ 失業手当 : 31ドル83セント~40ドル96セント

○ 家族補助 : 両親に対し40ドル86セント、片親に31 ドル83セント

○ 年金 :  夫婦51ドル50セント、1人33ドル50セント

○ 大学生の学生手当: 20ドル

尚、各手当は、特に家族については、個々の状況によって異なります。

詳しくは、下記のWork and Income のサイトでご確認下さい。

https://www.workandincome.govt.nz/products/benefit-rates/benefit-rates-april-2023.html

    あとがき

前にも書きましたがニュージーランドの最低時給は世界上位5位に入るほど高い時給です。そして毎年のように引き上げられています。生活保護や年金の受給額も同様です。
それでも、物価高に喘ぎ貧困者層が増加する社会とは一体全体どうしたものかと、私のように思わず首を捻ってしまった方は多いのではないでしょうか。

コロナ禍の影響や小さな島国であることが原因ですが、それにしてもこれほどまでに高いインフレーションが続くとは、ニュージーランドの脆弱な一面が顕著に暴露されてしまったと言っていいかと思います。

一時期、ニュージーランドの経済は回復の見込みだと言われたこともありましたが、先日のサイクロンや洪水で酪農や農作物が大打撃を受けた為、年内はこのままの状況が続くとも言われています。

残念ながらニュージーランドに住むものにとって、大変な時代はまだまだ続きそうです。

Ngā mihi
wonderer

*前回の最低自給の引き上げや世界各国の時給についてはこちらをご覧ください。

ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。