映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN 』の紹介と感想です。
日本では2月28日金曜日に封切り予定です。お見逃しなく。
1. はじめに
Kia ora
ニュージーランドで、日本より一足先に公開中の『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN 』を観てきました。
『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN 』は、あのフォークの神様として日本でも有名なボブ・ディランの伝記映画とあって興味深いですよね。
それに加えて今年2025年のアカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞など数多くの部門でノミネートされている話題の映画とあって、観る価値は十分にあると思います。
その『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN 』を実際に観た感想や、ボブ・ディラン自身について紹介します。
2. 映画概要
映画邦題:『名もなき者』原題:『A Complete Unknown 』
原作:イライジャ・ウォルド(『Dylan Goes Electric!』)
ジャンル : 伝記映画
製作国 : アメリカ合衆国/言語: 英語(日本語) /上映時間/142 分
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ティモシー・シャラメ、エドワード・ノートン、エル・ファニング、モニカ・バルバロ、ボイド・ホルブルック、ダン・フォグラー、ノーバート・レオ・バッツ、スクート・マクネイリー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
日本公開日: 2025年2月28日
3. あらすじ
伝説のミュージシャン、ボブ・ディランの若き日々を綴ったイライジャ・ウォルド著の『Dylan Goes Electric!』の映画化。
1960年代初頭、たった2ドルとギターを抱えてニューヨークに来たディランと名乗る若者が、フォークシンガーとして瞬く間に時代の寵児として音楽界のトップに立つ。

4. 感想
元々ボブ・ディランは社会にシャイでプライベートな面は世間にあまり知られていません。特に生い立ちから世間に知られるまでの間についての情報量は極端に少ないそうです。
公民運動が盛んな1960年代に社会へのプロテストとしてフォークソングが流行した社会背景や、フォークソングの貴公子とまで言われたボブ・ディランがどのように詩的な歌詞をしたためたかがよくわかる貴重な映画だと思います。
印象深かったシーンは幾つかありますが、敢えて選ぶならば「フォークの女神」ジョーン・バエズの前でディランの名曲中の名曲、『Blowin’ In The Wind / 風に吹かれて』 を歌うまでのシーン。それからNew Port のフォークフェスティバルのステージに初めて立った際、ディランが絞り出すように歌った歌詞の一言一言に観客が沸き返るシーンです。
どちらも、フォークソングの神髄を観た気持ちになりました。
そして、シャイで繊細でありながら才能と社会への反抗心に溢れるボブ・ディランをティモシー・シャラメが実によく演じていると思います。
数多い若い男優の中で、柔らかい感性で演技ができる男優はシャラメの他にいないのではないでしょうか。
また、劇中歌うシーンはすべて彼自身がギターを弾いて歌っています。コンサートも生で撮影されたそうです。以前アメリカかイギリスか忘れましたがあるトークショーで「デューン 砂の惑星 PART2」を撮影している間に、控室でギターと歌の練習を一生懸命している動画が出ていました。
元々ピアノを弾くシャラメですが、ギターとハーモニカは初めてだったそうです。
実のところ、曲によってはディラン本人よりもシャラメの方が上手だと思ったくらいです。
そして、ジョーン・バエズ役のモニカ・バルバロも吹き替えなしで歌ったそうで驚きですよね。
最後に、へんに賞受賞など成功後のサクセスストーリーを付け加えていない点にも好感が持てました。
ボブ・ディランらしさが十分に表現されて作られた良い映画だと思います。
『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN 』の評価は文句なしの星5つ ★★★★★ です。

5. プロフィール
📣監督:ジェームズ・マンゴールド
James Allen Mangoldアメリカ合衆国の映画監督、脚本家。
1963年芸術家の両親の元ニューヨークに生まれる。カリフォルニア芸術大学とコロンビア大学で映画製作を学んだ後に、1985年ウォルトディズニー社と監督/脚本家として契約を結ぶ。
1995年『君に逢いたくて』で初めてメガホンを取る。その後『コップランド』『17歳のカルテ』『ニューヨークの恋人』などの数多くの作品を監督。『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』ではアカデミー賞の5部門にノミネートされる。その後『3時10分、決断のとき』、『ウルヴァリン:SAMURAI』『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を監督し、2019年の大ヒット作品『フォードvsフェラーリ』ではアカデミー賞2部門を受賞した。現在『スターウォーズ』が予定されている。
★ 主演:ティモシー・シャラメ
Timothée Hal Chalamet アメリカ合衆国とフランスの俳優。1995年フランス人で国連勤務の父親と元ブロードウェイのダンサーで不動産ブローカーの母親の元、ニューヨーク州マンハッタンのヘルズ・キッチンで生まれ、マンハッタンとフランスを行き来して育った。姉はフランスで女優業をしている。コロンビア大学からニューヨーク大学に編入した。幼少期からコマーシャルや短編映画に出演。中には人気TV番組『ロー&オーダー』も含まれる。2014年の映画『ステイ・コネクテッド〜つながりたい僕らの世界』で映画デビューし、『インターステラー』、『クーパー家の晩餐会』に出演。2017年、初主演した『君の名前で僕を呼んで』の演技が絶賛を浴び、アカデミー賞で主演男優賞にノミネート。その後、『レディ・バード』、『ビューティフル・ボーイ』、『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』、『DUNE/デューン 砂の惑星』、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』『ドント・ルック・アップ』『ボーンズ アンド オール』『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』など数多くの映画に出演。
6. ボブディランの功績
ボブ・ディランは60年間に渡ってシェイクスピアの喜劇から宗教、戦争、人種差別など幅広い内容を歌い上げるフォーク界の重鎮で、他のミュージシャンへも大きな影響を与えたミュージシャンです。グラミー賞は10回以上、アカデミー歌曲賞などの音楽賞の受賞歴は勿論ですが、文学の面で影響を与えた人に贈られるピュリツァー賞特別賞やフランスの最高勲章であるレジオン・ドヌール勲章、アメリカ国民芸術文化勲章、大統領自由勲章を受章しています。とりわけ、2016年にノーベル文学賞受賞、またすでに予定が入っているという理由で授与式に出席しなかった話は有名です。
ちなみにボブ・ディランの出生名はロバート・アレン・ジマーマン(Robert Allen Zimmerman)で1941年生まれ、今年84歳になります。

7. あとがき
『君の名前で僕を読んで』の演技を見てすっかりティモシー・シャラメファンになった私としては、この3月5日のアカデミー賞では主演男優賞を取ってもらいたいと思うのはやまやまです。
が、『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN 』の後に観た『教皇選挙/Conclave』(日本公開3月20日)の主役のレイフ・ファインズの演技が素晴らしかったので、ファインズが受賞かなと思ったりしています。
実際のところはどうなるのでしょうか。。。
『教皇選挙/Conclave』については別編で紹介する予定です。ご期待のほどを。
余談ですが、忙しいという理由でノーベル文学賞授賞式の出席を蹴ったボブ・ディランに代わってパティ・スミスが代理で出席し、「A Hard Rain’s A-Gonna Fall」を途中で感極まってむせび泣きながら歌いました。そしてそのパティ・スミスをアカデミックな観客は静かに見守るという、とても面白い模様が下の動画に収められています。
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