Kia ora
ニュージーランドと聞いて、美しい自然と戯れる羊を思い浮かべる人は多いかと思います。
が、実は、そのニュージーランドで羊の数が激減していることはご存じですか?
もしかしたら近い将来、ニュージーランドは羊の国と呼べなくなってしれないほどです。
この編ではそんなニュージーランドの羊にまつわるあれこれを紹介していきます。
目次
1. はじめに
上の動画は、ニュージーランドのファームの羊の群れの囲い込みが上空から撮影されたものです。
羊の群れの流動的な動きを見ていると、何だか催眠術に架けられたような気分になりませんでしたか?
ニュージーランドには現在2,500万頭の羊がいると言われています。人口は500万人強ですので、割合にすると人ひとりに対して5頭の羊がいることになります。
羊の保有数を他国と比べると、中国やオーストラリアが断然多いのですが、人口比になるとニュージーランドがダントツ世界一位です。
ですが、近年ニュージーランドの羊の数は年間に50,000 頭減少しており、今後も更に減ることが予測されています。
どうしてそんな状況になっているのか、ニュージーランドの歴史を踏まえながら探ってみました。
2. 羊をめぐるNZの歴史
そもそもどうして羊が沢山住んでいるの?との疑問にお答えするためにも、ニュージーランドの歴史をさかのぼって紹介していきます。
2.1. 1773年 NZに羊初登場!
ニュージーランドに初めて羊が現れたのは、1773年です。大英帝国の探検家キャプテン・クックが、2頭の羊を連れてきました。
キャプテン・クックは1769年、ヨーロッパ人として史上初めてニュージーランドの陸地に足を踏み入れ、イギリスの歴史に偉大な功績を残しています。ニュージーランドの豊富な自然資源を目の当たりしたクックは、二回目の1773年、三回目の1777年の航海で、動植物学者と共に実験的に野菜の種を植えたり、羊などの動物を放っています。
キャプテン・クックに連れてこられた2頭の羊はメリノ種の雄と雌でした。
が、その数日後には「TUTU(トゥトゥ)」と呼ばれる毒草を食べて二頭とも死んでしまうという残念な結果になってしまいました。
2.2. 1840年~シープファーミング始まる
キャプテン・クックが連れてきた羊が死んでしまった為、シープファーミングは無理だと思われてました。 が、1840年代に隣の国のオーストラリアでシープファーミングが成功したことを受けて、再度ニュージーランドでも試みがなされました。
初めに北島のワイララパ地方にオーストラリアから羊が連れて来られたのを皮切りに、ホークス・ベイでもファーミングが始まり、1850年に入るとメリノの放牧に適してるオッタゴやカンタベリーなどの南島の南部に一挙に広がりました。
1850年には羊の繊維のウールはニュージーランドの主要輸出商品となり、羊はイギリス人入植者にとって富みの象徴となりました。
また、大工、設備管理者、家事手伝いなどの数々の直接ファーミングとは関係ない仕事も生み出し、この時期は羊とともにイギリスやスコットランドからの入植者の数も急増しました。
1858年 羊5万/人口12万/比率1:24 1867年 羊840万/人口26万/比率32:1 |
2.3. 1880年~ 羊肉の輸出が始まる
1880年代にはウールだけでなく、冷凍した肉もイギリスへ輸出されシープファーミングはますます盛んになりました。
1896年 羊1,900万/人口74万/比率25:1 1913年 羊2,400万/人口113万/比率22:1 |
ほとんどの牧草地でシープファーミングが営まれ、その半数のファームで2,500頭以上もの羊が飼われていました。
1982年 羊7,000万/人口340万/比率20:1 |
2.4. 1980年~化学繊維に圧倒される
1982年にピークを迎えたシープファーミングでしたが、その後ポリエステルなど化学繊維が市場に出回ると、ウールの需要が急減、政府の助成金も止まり多くのシープファームが廃業に追いやられました。
2007年 羊3,900万/人口400万/比率10:1 2023年 羊2,500万/人口500万/比率5:1 |
3. 現在のシープファーミングの現状
3.1. 牧場敷地の森林化
上述のように、1980年代後半からウールの需要が減りシープファーミングから離れる農家が相次いでいることに加えて、2010年に入るとファーム敷地自体が減ってきています。
環境問題への取り組みとしてファームの森林化が進んでおり、過去10年の間にファーム面積はおよそ12%、羊の数は22%の6,800万頭, 牛の数は192,000頭減っています。
逆に森林は11%増え、松や外来種の樹木が植樹されています。
出典元
https://www.rnz.co.nz/news/country/515877/new-zea
3.2. ウール産業の深刻な人手不足
ウール産業界では季節労働者として働くウールの毛刈りや選別をする技術を持つ人が不足しています。現在ウールの値段が低く、羊の毛刈りをする人件費がウールの値段よりも高い状況ですが、ここ数年のオーガニック製品の人気が高まっていることから、ウールの需要も上がるのではないかと期待されています。
例えば家屋の壁や天井には原油を原料とする化学物質が使われていますが、最近自然傾向で木材やウールに置き換える傾向が出てきています。
そして、ニュージーランド政府も学校や公共施設には化学繊維ではなくウールを推奨しています。が、人手不足で次の世代の人材の育成がままらないまま、もしウールブームが復活してもニュージーランドは果たして対応できるのか懸念されています。
4. 羊の種類
一口に羊と言っても、その数何と3,000余りの品種が存在します。
その内ニュージーランドではおよそ30品種が飼われています。
ウール用、肉食用と用途に合わせた品種が飼われていますが、その中でももっとも広く飼われているのはロムニー種です。全体の66%を占め、カーペットの繊維に用いられています。次はメリノ種でこちらは言わずと知れた衣類などに使われています。
5. あとがき
ニュージーランドの近代史は羊によって変遷されたと言っていいほど、羊の影響力は大きなものがあります。
もしシープファーミングが成功しなかったら、現代社会の様相も大きく変わっていたことでしょう。
羊の数は激減していても、それでも一人に対して羊の数5頭は世界一高い割合です。二位はお隣の国のオーストラリアで一人あたり3頭の割合です。
ですがこのまま羊の数が減り続ければ、羊王国の栄冠はオーストラリアに渡ってしまうことでしょう。
最後に、子羊肉ラムについて特集を組んでいます。ラム肉は健康に良いと言われています。
是非こちらも併せてお読みください。
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