5月22日に発表されたニュージーランドのBUDET ( 国家予算)の第二弾です。
第一弾では永住者の老後に生活に大きく関わる「 Kiwi Saver ( キウイ・セーバー) 」の変更を取り上げて紹介しました。
今回は、ダイジェスト版として他の項目を紹介していきます。
老若男女に関わらず、ニュージーランドで生活していく上でこのBUDET ( 国家予算)は知っておくべきだと言っても良いでしょう。是非最後までご覧ください。
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1. はじめに
Kia ora
ニコラ・ウィリス財務大臣は、発表前から2025年度BUDET ( 国家予算)は決して甘い蜜が吸えるものではない公言していました。そして、実際蓋を開けてみてもその通りの内容でした。
国家予算編成にあたり、制度の改正や、政府の資金提供対象セクターへのアプローチ変更によって、政府がどれだけの資金を節約できるかということに焦点が当てられていました。
そしてその目玉政策は、賃金平等制度の改正、キウイ・セーバー変更、企業の減税、そして若者の失業手当制度やベストスタートなどの福祉制度の改訂が挙げられています。
一方で今回の国家予算に関して、クリストファー・ラクソン首相は度々「自分のことは自分で面倒を見る」発言しており、具体的にどういうことなのか見ていきましょう。

2. 賃金平等法改正
2025年 BUDGET ( 国家予算 )の発表に先駆けて土壇場で変更され大きく物議を醸したのが、賃金平等改正法です。
高校教師など女性が多い職種の賃金を男性が多い職種と同等にする請求が困難になり、現在請求されている33件の請求が停止となりました。これにより、今年の予算で削減された53億ドルの政府支出のほぼ半分に相当する27億ドルを節約しています。
この賃金平等法改正の詳細は ↓ をクリックしてご覧下さい。
3. キウイ・セーバー変更
老後の資金準備として個人が自由に積み立てを行う制度、キウイ・セーバーの積立内容が変更されています。年収18万ドル以上の人は、7月から政府積立金が一切無くなり、その代わり個人の最低積立額は来年から給与の3.5%、そして2028年4月には4%と、段階的に上がります。
詳しくは ↓ をクリックしてご覧下さい。
4. 若者の失業給付金の審査の厳格化
18歳と19歳の若者の求職者給付金と緊急給付金の受給資格が、両親の収入と比較検討されます。簡単に言うと、自立できない18歳と19歳の失業者は自動的に失業手当が受給されるのではなく、両親の収入次第ということになります。
両親の収入水準の金額は今のところ決まっていません。実施は2027年7月からの予定です。
ルイーズ・アップストン社会開発大臣は、「この変更により、就労、教育、訓練への参加を促す経済的インセンティブが強化される」と述べています。
5. ベストスタート児童手当制度
生後 3 年間にわたって家族に手当てが支給されるベストスタート児童手当制度も、2年目と3年目と同様に初年度から完全に所得審査制となります。
年収7万9000ドルの世帯から給付額が減額され始め、9万7000ドルを超えると給付が完全に打ち切られます。
対象は、来年4月1日の後に生まれた子どもの世帯です。
ベストスタート児童手当制度の改定で削減された金額は、主に保健、教育、法と秩序、防衛への予算増額した67億ドルと相殺される形になります。
二コラ・ウィリス財務大臣は、
「最も支援を必要としている世帯に資金が確実に行き渡るようにするため」だと述べています。

6. 投資促進
2025年度の国家予算の目玉政策として、「投資促進」と呼ばれる新たな税制優遇措置が挙げられます。この制度により、企業は通常の減価償却に加えて、新規資産の取得費用の20%を課税所得から即時控除できます。つまり、設備を購入する企業の税負担が軽減されるということです。
政府は、これにより企業投資が促進され、今後20年間でGDPが1%、資本ストックが1.6%、賃金が1.5%増加するなど、長期的な効果が期待されると見込んでいます。また、これらの効果の少なくとも半分は、今後5年間で得られると見込まれています。

7. 学習支援プログラム
2025年度予算では、教育関係に向こう4年間で約25億ドルが割り当てられています。
内約3億8,000万ドルは、特別な支援を必要とする生徒や高度で複雑なニーズを持つ生徒のための追加学習支援および早期介入プログラムに充てられます。、
また、学校やクラが、社会的、情緒的、神経学的に多様なニーズを持つ生徒に特化した言語聴覚療法士、教育心理学者、教員補助員などの専門家にアクセスできるよう支援するための資金も確保されています。
その一方で、全国で109人いる識字/読字障害や学習障害を持つ児童を専門に教える教師 Resource Teachers of Literacy を解雇し、3,900万ドルを削減しています。
また、「Kāhui Ako (カフイ・アコ:生徒の潜在能力を最大に発揮できるように教育とトレーニングを同時に提供するコミュニティベースの教育システム」が廃止され、4年間で3億7,500万ドルの資金が学習支援基金に移管します。
8. その他
🔷 家族手当
working for family と呼ばれる(家族手当)受給者の審査資格の所得の基準額と減額率が引き上げられます。これにより対象が育児中の低所得・中所得層に絞られ、年収が10万ドル以下の14万2000世帯は2週間あたり平均14ドルの追加支援を受けられるようになります。
🔷医療分野
医療関係では主に次の対象を主体に、前年度より4.77%増の310億ドルがあてがわれています。
- プライマリケア(患者の病気や怪我の最初の診察、治療を行う医療)と時間外緊急ケア、
保健インフラ - 喘息、糖尿病、高血圧などの処方箋が3か月から12ヶ月分に延長
- ネルソン病院の大規模な改修やウェリントン病院の救急部門の新設
🔷 スーパー・ゴールドカード
65歳以上が持つスーパー・ゴールドカードによる割引の度合いが若干拡大され、最大6万6000人が恩恵を受けます。
また、税金還付制度の所得基準が31,510ドルから45,000ドルとなり、より多くのスーパー・ゴールドカードを保持する世帯が税金還付の最大額を受けられるようになります。還付額も790ドルから805ドルに引き上げられます。
🔷 法と秩序維持
受刑者数は2026年半ばまでに約1万1,000人に達すると予測されており、予算案では「人口増加やその他の量的圧力」への対応として、4年間で約4億ドルが計上されています。
- 警察の最前線のサービス維持
- 行き詰まった裁判所の運営の効率化
🔷 特定産業支援
上記以外の項目以外にも、特定の産業を対象に予算が取られています。その中でももっとも特徴がある産業を上げます。
- 私立学校
- 高等教育
- ガス田開発
- 地元発信のジャーナリズム
- 再犯者向けの軍隊式アカデミー(ブートキャンプ)
- 高齢者向け居住型ケアへのアクセス拡大と病院外でのより長期ケア
- 社会住宅の増設
- フードバンクへの資金提供をさらに1年間延長

(出典)
https://www.rnz.co.nz/news/political/561810/budget-2025-at-a-glance-the-big-changes-winners-and-losers
https://www.nzherald.co.nz/nz/budget-2025-the-10-things-you-need-to-know-from-pay-equity-savings-to-subsidising-private-schools/4EAGLSKGMZC7FGY2SUJSX4HQUA/#google_vignette
9. あとがき
これまでニュージーランドの BUDGET ( 国家予算)の主な項目を紹介してきました。
確かにクリストファー・ラクソン首相が言うように「自分のことは自分で面倒を見る」感が出ていますが、そこまで悪くない印象があります。
皆さんはどう思われましたか?
ですが他の編で紹介したように表面上は美味しいように見えても、予算を確保するために姑息な手段で予算削減の対象となった人が存在することも事実です。この点を踏まえて、今回の国家予算についてもう一度考えていただければと思います。
Ngā mihi
wonderer