NZ【BUDGET2023】国家予算:負け組は子供のいない25歳以上

Kia ora

今年も5月に発表されたニュージーランドの【BUDGET】こと、2023年度の国家予算組み。

ずばり『NO FRILL( 飾りのない/実直な)』と表される今年の国家予算組みでは、大きく得をする勝ち組とそうでない負け組の明暗がはっきり分かれていると言います。

その勝ち組、そして負け組がどのような人を指すのかを焦点に当てながら、2023年の【BUDGET】について詳しく解説していきます。

これからニュージーランドに渡航予定の方は必見です。

   はじめに

生活補助のための一時金として300ドルを受給し、去年の国家予算組み【BUDGET2022】を私のようにありがたく思った人は多いことでしょう。
今年2023の予算組には一時金支給は予算に組み込まれておらず残念ですが、その代わりケースバイケースの細かく対象を絞った援助金が組まれており、そのケースに該当すれば得するようです。

これから、そのケースバイケースの項目を紹介していきますが、そもそも【BUDGET】 国家予算とは何ぞという方は、去年の予算組についてのブログで詳しく書いていますので、まずこちらからご覧ください。

  【BUDGET 2023】 キー・ポイントと詳細

    キー・ポイント

今年2023年のBUDGETにも沢山の項目が多岐に渡って含まれています。
その中でも、キー・ポイントとなる項目を挙げてみました。

  • 週20時間の無料保育を2歳児に拡大
  • 医薬品の処方箋料金の無料化
  • 信託税率を 33% から 39%に引き上げ
  • 13歳以下の公共交通機関料金の無料化。25歳以下や生活保護受給者は半額
  • 新たに6億NZドルを災害復旧に特化したインフラストラクチャーに追加投資
  • 物価高の緩和

    詳細

それでは上記のBUDGET2023 のキー・ポイントを詳しく見てみましょう。

◎ 2歳児の保育料週20時間無料化
現在は 3~5歳児を対象とする週20時間の保育料無料が2歳児にも適用されます。現在の預り保育料が高いため仕事に就けない家庭を支援するもので、週に最高133.30NZドル節約することができます。来年2024年3月から実施予定で、4年間で10億2千万NZドルの費用が見込まれています。

◎ 処方箋料金の無料化 
今年7月から実施され、年間に3百万人、65歳以上では770,000 人が恩恵に当たると言われています。また、人々が早く薬を入手することで、医療機関の負荷の緩和が期待されています。費用は4年間で6億1千8百万NZドルが見込まれています。


◎ 信託税を39%に引き上げ
個人最高税率の引き上げに併せて、2024年から信託税が現状の33%から39%に上昇します。
これにより、向こう3年間で11億2000万NZドルの増収が見込まれています。

13歳以下の公共交通機関料金の無料化。25歳以下や生活保護受給者は半額
現在施行されている政府によるガソリン代の補助が6月に終わる予定で、その代わりに若年層や生活保護受給者を援助されるものです。政府負担額は年間 8000万NZドル、4年間で3億2700NZドルになります。

新たに60億NZドルを災害復旧に特化したインフラストラクチャーに追加投資
100億7000万NZドルをかけたインフラストラクチャー計画に、さらに60億NZ ドルが災害復旧用として注ぎ込まれます。その理由としてグラント・ロバートソン財務大臣は、「2月のサイクロン・ガブリエルによりインフラストラクチャーに重大な欠陥が明らかになった。通信、電気、交通など生活に欠かせない手段が長期に渡って遮断されているのは許しがたい。」と会見で述べています。

◎ 物価高の緩和
インフレーションは6月から下がり初め、来年にかけて3%まで下がると政府は予測
しています。
また、国庫の純負債額については、2024年にピークを迎えGDP(国内総生産) の22%になると見込んでいます。現在の順負債額は、去年より10%上昇し12兆2250億NZドルです。財務省大臣はこの順負債額はGDP(国内総生産)の30%を限界値としています。
その一方で、財務省は住宅値は現在よりさらに4.6 % 割り込み、ピーク時に比べると21.3% 下落すると予測修正しています。
また失業率は5.3% の間に留まると予測されています。

   背景

【BUDGET2023】 政府予算が組まれた理由について、Chris Hipkins ( クリス・ヒプキンズ) 首相は記者会見の席でで次のように述べました。

総理大臣に就任した時に、ニュージーランドの国民が直面している生活基盤に関わる問題に取り組む公約をした。今は家庭にとってもっとも困難な時であり、物価高によるコスト圧力は国全体で感じられている

ちなみにこの記者会見では「cost pressures/コスト圧力」という単語が52回も使われたと各メディアが報じています。去年は26回だったそうです。

一方で野党からは、今年10月に予定されている選挙戦に備えて国民の投票を買うための予算組であると批判を浴びています。

尚、「No Frill (  実質主義/飾りのない )」と呼ばれるBUDGET 2023には、48億NZドルが追加されており、むこう4年間には新たに105億NZドルの税金を注がれます。
この金額は来年2024年に見込まれている3940億NZドルの経済効果の32.5 %にあたり、 翌年の2025年には更なる経済効果が見込まれています。 

   2023年BUDGET 他の項目

【BUDGET2023】に組まれている他の項目を紹介します。

  生活費の援助

  • 100,000 戸を対象に暖房機器や断熱材、7500 戸にエア・コン、そして 500万個のLED電球の設置 ー 4億2600万NZドル
  • 継続して特定の学校に給食を無料提供。子供二人がいる家庭で1週間60NZドルの削減 – 3億2300万NZドル
  • 養育費補助の申請方法をオンライン化するなど簡素化を図り、受給者を増加するー3500万NZドル
  • 有給で育児休暇中間も政府はキウイ・セイバー(年金)の年金積立を行う ー 1900万NZドル

  住宅建設

  • 住宅建設の資材費用補填 ー 36億NZドル
  • 2025年までに 3,000戸の公共住宅を増築ー 31億NZドル

  地球温暖化対策

  • 地球温暖化対策費用の36億NZドルの内19億NZドルを排気ガスの減少と、応用対策に特化する
  • 鉄道 整備ー 3 億7千万NZドル
  • 環境問題を考慮したグリーン投資ー 3億NZドル
  • 将来の温暖化に備えたインフラストラクチャーー1億6700万NZドル
  •  EV(電気自動車) の充電スタンドを増加 ー 1億2000万NZドル
  • 各市役所の洪水対策補助 ー 1億NZドル
  • 遠隔地の再生可能エネルギー ー 5000万NZドル
  • 綿密な海岸線の地図を作成、温暖化や災害によるダメージを受けやすい場所を明確化 ー 3900万NZドル
  • 各市役所の洪水対策補助 ー 1億NZドル

  医療機関と障害者支援

  •  医療関係者の給与引き上げに加えて、193人の医師と500名の看護師の増員 ー 10億NZドル
  • 1億1800 万NZ ドは病院の患者の応対の改善 ー 1億1800 万NZ ドル
  • 財政問題対策と改革 ー 向こう2年間で26億NZ
  • 身体障がい者介護 ー 8億6400万ドル
  • 学校の自動ドアやエレベーター、トイレなど障害者用の設備投資 ー 向こう2年間で1億4700万ドル
  • 障害者の最低賃金保障 ー 2700万NZドル

  教育

  • 保育士の業界離れに歯止めをかける為の給与改善 ー 3億2200万NZドル
  • 学校とクラスルームの新設 ー4億5500万NZドル
  • 幼児教育のオペレーション ー  2億6000万、学校の経費 ー 2億3400万ドル、 大学や専門学校の教育や職業研修 ー 5億2100万NZドル
  • クライストチャーチの33の学校の復興プログラム ー1億9900万NZドル
  • マオリ語が媒体のインフラストラクチャー化。目標は2040年までにマオリ族の生徒の30%がマオリ語をベースとした教育を受ける ー 1億3400万NZドル
  • 遠隔地にある175の小規模の学校の設備改善 ー 6億3000万NZドル
  • 研修費と海外への誘致活動、それから1700人の新しい教師の雇用 ー  2360万NZドル
  • 5年間かけて各学校の地域のマオリ部族が主導する地域教育を発展 ー 9900万NZドル

 

  科学と技術

  • 政府の目標 GDP (国民総生産)の2%の支出に向けての研究と改善
  • 「サイエンス・シティ」首都ウェリントンに科学技術研究所3か所を設置。健康、海洋、気候、危険物、高性能製造技術、バイオ・テクノロジー、未来エネルギー の研究投資 ー 4億5100万NZドル
  • 去年の4億円の価値があり急成長しているビデオ・ゲーム市場に1億600万NZドルを投入し、代わりに政府は製作者から20%のリベートを受ける

  経済とビジネス

  • 財務省は不景気は今年中に終焉すると予測。が黒字収益に転換するのは、支出が削減できる2025年から26年である
  • 5年間に86億NZドルを年金システム意に投入

  マオリとパシフィック

  • マオリ族 コミュニティー全体 ー 8億2500万NZドル
    長期者用の家屋の供給と修繕費用 ー 2億NZドル
    Whānau Ora(家族)サービス ー 1億6500万NZドル
    650人の妊婦を3年間サポート ー 6400万NZドル
    Te Matatini ( マオリ歌と舞踊の全国大会)ー 3400万NZドル
    を Matariki ( マオリ新年) ー 1800 万NZドル
  • パシフィックのコミュニティーと福祉 ー 1400万NZ ドル
    パシフィック言語施策 ー 1300万NZドル、雇用促進 ー 1300万NZドル

   あとがき

もうお分かりかと思いますが、ニュージーランドの国家予算BUDGET2023 で得するのは、何と言っても2歳児を持つ親です。他に面白いところでは、テレビ・ゲーム製作に携わる人でしょう。

逆に、割に合わないと感じる所謂負け組は、不動産を持つ人やそれから信託委託者、そして子供がいない25歳以上になります。

これからニュージーランドに単身で渡航する予定の25歳以上の方には、残念なニュースとなってしまいましたが、悪しからず。

Ngā mihi
wonderer

(参照)
https://i.stuff.co.nz/national/politics/300882021/budget-2023-cheaper-childcare-free-prescriptions-and-a-trust-tax-hike
https://www.rnz.co.nz/news/political/490161/budget-2023-at-a-glance-what-you-need-to-know https://i.stuff.co.nz/national/politics/132072494/budget-2023-the-big-winners-and-losers

ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。