メタンフェタミン/覚醒剤消費量が急増するニュージーランド、果たして路上薬物検査の効果は?

kia ora

ニュージーランドではメタンフェタミンと呼ばれる覚醒剤の消費量が急増し、これといった対応策がないまま深刻な状態に陥っています。

この編では、メタンフェタミンが急増している状況や背景などを詳しく紹介します。

メタンフェタミン(methamphetamine)は通称メスと呼ばれる覚醒剤で、脳と体の機能を活性化させ、活力、多弁、性的な興奮、多幸感をもたらします。その効果は強力で最大12時間眠気を催さずに覚醒状態を維持し、継続的な活動を可能にします。
その一方で大量に使用したり他の薬物と併用したりすると、体、特に心臓に大きな負担をかける可能性があります。
また、依存性が高いことも大きな特徴です。

メタンフェタミンは、「クラック」「クリスタル」「P」の名でも呼ばれ、ニュージーランドではもっとも人気のある薬物です。

錠剤、粉末、または「アイス」と呼ばれる大きな結晶の形などの形状があり、「クリスタル・メス」と呼ばれるアイスは、特に若い成人や、夜のクラブやパーティーに集まる人々の間でよく使用されています。

▼ 排水検査の数値


ニュージーランドでは薬物の使用量を図る手段として、排水検査が用いられています。

その2024年後半期に行われた排水検査で、
メタンフェタミンの排出量が過去最高を記録しています。

2024年6月の排水検査では、一週当たり15kgを超えるメタンフェタミンの排出量が検出されましたが、翌月には
ほぼ倍増の一週当たり29.2kgに達し、10月には一週当たり39.2kgという新たな記録を作りました。

この値は、コロナウイルス対策によるロックダウン中の2021年9月にオークランドで記録した20.6kgのほぼ2倍に相当します。

▼ 患者数

排水検査の結果を受けて政府の指示で提出されたニュージーランド保健省の公式データによると、2024年6月30日までの1年間で、公立の病院でメタンフェタミンの使用を示唆する診断が出された患者数は3,095件に上りました。これは、2015年6月30日までの1年間の757件から4倍の増加です。

この患者数については、人々がより安心して助けを求めるようになったこと、また医師によるメタンフェタミン関連の報告が改善してきていることもあり、確固たる結論を導き出すことはできません。

ですが、救急外来部門だけでなく、地域社会や地域団体で活動するメンタルヘルス従事者からも、メタンフェタミンの使用増加は、精神病や重度の精神的苦痛を抱えた人々の症状に影響しているという報告書も出ているのが現状です。

▼ その他の特徴

その他の特徴として、

  • 既に依存症を抱えている人々の使用量の増加
  • 娯楽用の薬物としてメタンフェタミンを軽はずみに手に取る若者の数が確実に増加
  • ノースランド地方で顕著

が挙げられます。

それでは何故ニュージーランドでメタンフェタミンの使用が急増しているのでしょうか?

▼ 値段の下落と多大な供給量

メタファタミンは海外で膨大な量が生産され世の中に溢れています。そしてその生産される量は増えるばかりで、ニュージーランドにも大量に流入してきています。
その結果ニュージーランドのメタンフェタミンなどの薬物市場は飽和状態となり、価格が下がっているため購入される量が激増しています。

ニュージーランド薬物動向調査によると、メタンフェタミン1グラムあたりの平均価格は、2017/18年度の563ドルから2024年には360ドルに、メタンフェタミン1ポイント(0.1グラム)あたりの平均価格は、101ドルから78ドルに下落と市場最低価格を記録しています。

そうは言っても、ニュージーランドでメタファタミンの価格が下がったとはいえ、他の国と比べると依然として高い値段で取引されています。
ですので市場規模は小さくても儲かる市場とみなされ、メキシコのカルテルや東南アジアの組織犯罪グループによりニュージーランドの犯罪組織を通じてメタンフェタミンがニュージーランドの市場に入って来ています。
それが供給量が増加し今のような状況を作っていると専門家は指摘しています。

実際に、ニュージーランド税関と警察が押収するメタンフェタミンの量は、それまで500kg未満だったのが、過去3年間は年間1500kg以上まで伸びています。また毎年記録を塗り替えているそうです。

現時点でニュージーランドで押収されたメタンフェタミン最高量は、2023年にカナダから出荷されたメープルシロップのボトルに隠されていた713kgです。

そして、受け取り人であったオーストラリア在住のニュージーランド人が薬物法違反で刑事責任を問われています。その男性は自身のビジネスで成功しているにも関わらず60万NZドルを報酬のために、ニュージーランド渡ってメタンフェタミンを受け取り、その後国内のバイヤーに売るつもりだったそうです。
また犯罪組織の中で資金の管理と、資金投下の方法を他の人に指導する役目も果たしていたと言います。

▼ 予防対策の欠如

ドラッグの供給量が増加し中毒者は増える一方ですが、メタンフェタミン中毒者の支援に国がほとんど投資していないことも理由の一つです。
専門家は政府がファンディングしてメタンフェタミンについての研究成果を上げれば、国内でさらに多くの対策を講じることができると分析しています。
特に違法薬物使用者の約半数は注意欠如・多動症(ADHD)を患っており、治療すれば薬物使用を予防できる可能性があると言われています。

このようなメタンフェタミン消費の増加に対し、ようやく政府は重い腰をあげつつあります。
その手始めとして、このほど『路上薬物検査』法案が国会で可決され ました。

これにより、飲酒運転の取り締まりと同じように、警察に無作為の路上唾液検査を行う権限が与えられます。

飲酒運転の取り締まりと同じように、警察により
路上検査で陽性反応を示しすると、その唾液サンプルが二次検査に回されます。二次検査で対象となる薬物が検出されたり、最近使用した兆候が見られた場合、ドライバーには罰金と減点が科せられます。
2回繰り返すと、12時間の運転禁止処分を受けることになります。

実施は今年12月からの予定です。

(出典)
https://www.nzherald.co.nz/nz/nz-meth-use-hits-record-high-as-prices-drop-wastewater-testing-reveals-the-front-page/KFPS3AAPNNG3ZP2QBRVM4PNN7I
https://www.newstalkzb.co.nz/news/national/four-fold-increase-over-a-decade-in-hospital-discharges-with-diagnosis-indicating-meth-use

この編では背景などを紹介しましたが、敢えて実態までは紹介していません。
メタンフェタミンを使用している人の実態はあまりにも醜いものがあります。そして皆さんも想像つくようにメタンフェタミン使用者による犯罪も増えています。

日本と違って、ニュージーランドではメタンフェタミンはとても身近に存在してるので、
路上検査だけでは到底防止できるものではないでしょう。
政府による早急の対応が必要です。
時を同じくしてもうすぐ政府による2025年度のバジェット/国家予算が発表されます。
この中に果たして薬物対策研究費が組み込まれているのでしょうか。。。
バジェット/国家予算が発表され次第また紹介したいと思います。

Ngā mihi
wonderer

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。